第45話 成長
辺り一面に光が溢れていく……
この光と波動、まさにおとぎ話で聞かされた、
初代国王のスキル、覇王。
「クリス……お前、まさか」
クレア自身も宮廷魔術師の一人。
覇王を発現させるために、
王族が何を繰り返してきたか把握している。
ルミナスの中でも最重要スキル、
覇王を使用している人物が、今まさに目の前にいる。
クリスは、姿を変えている。
その容姿は気高くも美しい。
ユーリは気付けばクリスに見惚れていた。
そして愛してやまないクレアに、
どこか似ている気がしている。
全身に身体強化を施したクリスは、
全速力で駆けていき、
カートとメデューサの間に割り込む。
クリスの右手に光が集まり、
至近距離から覇王の一撃を放った。
強力な一撃がメデューサに直撃して、
その悲鳴が山道に響いていく。
「クリス、お前……」
「カートさん、回復します……」
カートの身体に手を当て回復魔法をかける。
回復魔法レベル2、アンチポイズン。
カートの身体から毒の症状が少しずつ消えていく……
「クリス、すまない」
「カートさん、
まだ戦いは終わっていないようです」
クリスは疑問に思いながら気配の方角を見ると、
そこからメデューサが歩いてきた。
「まさか、この波動は覇王かしら?
私も運が良すぎるわ〜
貴方を倒せば一気に四天王入りね」
「魔王軍なのか……」
「私は魔族の中でも最も四天王に近い存在。
私から貴方達こそ生きて帰れるかしら?」
まさか、ここで魔王軍と対峙するとは思いもしない。
しかし、指を咥えて見ているわけがない人物がいる。
「私を前に……
生きて帰った魔族もいないぞ」
クレアは神速スキルを発動させ、
メデューサを認識できる位置に移動した。
そして光の剣を上空へ呼び出していく。
「なに……」
逃れられない光の剣に、
メデューサは跡形もなく消滅する。
そのようにクレアは確信していた。
上空に作り出した光の剣が届く瞬間に、
メデューサは霧の姿に変わってしまう……
「消えただと?」
「ふふふ……自慢の攻撃も、
当たらなければ意味がないわ」
そしてクリスはここにきて、カートの治療を終える。
毒の効果も完全に消え去った。
「カートさん、ユーリが心配だ。
ユーリの傍で守ってあげてください」
そうクリスが告げると、
クレアとメデューサが交戦する方へと駆けていく……
「クレアさん!」
「ふふふ、遅いわ」
メデューサは姿を霧から実体化させ毒の雨を放った。
いくらクレアでも、至近距離から回避は出来ず、
その毒から膝をついてしまう。
「今度は、女の方が死にそうね……」
怪しい笑みを浮かべ舌舐めずりをする。
クリスは、クレアに回復魔法をかけ続けた。
必死に治療を行い毒を和らげていく。
「残念だけど……
もう回復させてあげないわ」
メデューサがクリスへ毒魔法を放とうとした瞬間、
メデューサの足元が凍りつく。
ユーリの氷魔法によるものだ。
ユーリは、家族を魔王軍に殺されたトラウマがあり、
魔族を前にすると震えて思うように動かなかった。
しかし、クレアを失ってしまう。
それだけは認めることができない。
その想いがユーリを突き動かしていた……
「何だと……」
そして次々に地面から氷柱が立ち、
メデューサへと向かっていく……
氷魔法レベル4、コキュートス。
「ユーリ……」
クレアはまさかユーリに救われるとは思わなかった。
しかし、今は勇敢にも魔族に立ち向かっている。
そのユーリの成長に心から感動していた……
そして、この瞬間をクリスは見逃さなかった……
回復魔法に、ありったけの魔力を注ぎ込む。
しかし、魔力を使い尽くしたクリスは、
子供の姿へ戻ってしまった……
「クリス!」
「大丈夫……」
そして、改めてクレアに回復魔法を使う為に、
クリスは休憩スキルを使用する……
スキルがレベルアップしました。
回復魔法Lv.2 →回復魔法Lv.3
力を得た瞬間に確信した。
レベルアップしたことで、
毒に対する回復の効果が上がっている。
そしてクレアに回復魔法をかけ続け、
ついにその猛毒は消え去った……
「クリス、お前」
「今は、まだ全てを話せないかもしれない」
「クリス?」
「でも、今、伝えたいことがある」
「え?」
「俺にとって貴方は、
かけがえのない大切な人……」
「…………」
「必ず、守ってみせる」
「クリス……」
そしてクリスは姿を変えて覇王を発動した。
メデューサを倒す為に立ち向かっていく……
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