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第38話 通り名

運命の巡り合わせは確かに存在する。

二度と会う事は出来ない母親に、

会うことができているのだから……





「…………母上」





そう呟いた声は消え入りそうな声だった。

そのため母上には聞こえなかったのかもしれない。




「お、おい何を泣いてるんだ……」




初対面の子供に泣かれて、母上は混乱している……

母上はルミナス宮廷魔術師のコートを着用しており、

俺と同じ銀髪、赤目だ。




「あねごが暴力振るったから、怖かったんだよな!

 全部あねごのせいだ!」




「そ、そんなわけないだろう!

 おい、そうだよな?」




二人が動揺している姿を見ていると、

何故だか可笑しくなってきた。




「あはははは」




気づいたら笑ってしまう。

でも、笑いながら涙が止まらない……




「うわー、あねごが脅したからだよ!」



「脅してない!

 わ、私は口が悪いだけだ!

 す、すまなかったな……」




このやり取りを続けているが、

このままずっと続いてくれても構わない。

そんな風に思ってしまう。

それくらいに俺は母上に出会えて幸せを感じていた。




「お、おい……

 ちょっと注目を浴びて来ているから、

 場所を変えよう!」




どうやら、母上は、その美貌と規格外の強さから、

世界規模で名が轟いているらしい……

つまりは超有名人。




「お、脅した後は誘拐ですか?あねご……」



「もう一回げんこつ喰らうか?」



「うそです!

 ささ、クリス!早く行こう!」




さっきのげんこつを喰らうのは勘弁願いたい。

そう言わんばかりに、ユーリは急かしてくる。

とりあえず、一休みできる場所に俺達は向かった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




そそくさと近場にあった喫茶店に入ると同時に、

席はご自由にと通された。



「あの、悪かったな……

 怖がらせて」



席に着くと母上は、バツが悪そうに話しかける。

沈黙に耐えきれなかったのだ。



「俺も昔を思い出してしまったので」



「あねごのせいでトラウマ思い出したの?」



「う、うるさい、少し黙ってろ」



少し注目されてるのを気にしてか、

母上は小さい声で注意している。



「お前、名前は?」



その回答に一瞬迷ってしまった。

伝えてしまって大丈夫なのか。

今生まれている俺に問題はないのか不安になる。




「クリスだよな!」




考える余裕もなくユーリが答えてしまった。




「え?」




母上は突然だが、自分の息子と同じ名前に気づき、

とても驚き目を見開いている。




「本当か!お前の名前、

 私の息子と同じじゃないか!」



息子と同じ名前どころか、

貴方の息子本人だよ……



「それにしても、ありがとうな!

 餓死寸前のユーリを救ってくれて……」



「数日間食べてなかったんですか?」



「いや、しっかり朝食は済ませているはずだ」



母上は、そう言いながら呆れた顔でユーリを見た。

いつものやり取りのようだ……



「確かあの時間って、朝食の時間から

 まだそんなに経っていないような……」



「こいつは体質でな、

 めちゃくちゃ大食いなんだよ」



「うわー凄いな」



小さな身体のどこに、食べ物が入っているのだろうと不思議に思う。



「あ!クリス!今失礼なこと考えた!」



「そんなことないよ!

 大食いって凄いなって、尊敬したんだよ」



「お~流石クリス!

 私!凄い!凄い!凄い!」



「お前、こういう子の相手慣れてるのな……」



それは間違いなくアリスのせいだな。

毎回こんなやり取りしていたら、切り返しが条件反射みたいに出来るようになってしまった。



「妹いるので……」



「おお!

 お前もそうなのか!それは奇遇!」



正体に気づいても良いと思うが、

母上は全く気づかない。



それもそうか。

いきなり大きな身体の子供が現れて、

貴方の子供です、なんて言ったら神経疑われるよな。




「ところでお前は何しに

 ミゲルまで来たんだ?」



「尋ねる人がいまして……

 場所は知ってるんですけどね」



「ちなみにどこなんだ?その場所は」



「うーん、エルフの里の近くです」



エルフの里と聞いて、

ビクっとユーリの身体が反応した気がした……



「おお!私たちと同じ方面じゃないか!」



「そうなんですか?」



「ああ!途中まで良かったら、一緒に行くか?」



本当はもう少し一緒にいたかった。

すぐに母上と別れるのは寂しかったから、

その提案は心から嬉しい。



「あの、是非お願いします!」



「やったー!クリスも一緒だ!」



「まあ、賑やかになって楽しそうだな」



そんな訳で俺は賢者に会いに行く道中、

母上、ユーリに同行する事になった。




「それじゃあ、明日……」



「おい、誰か!頼む、助けてくれ!」




母上が話すのを遮るように、

喫茶店に入り込んだ人物がいる。




「モンスターの変異種がまた現れやがった!

 頼む、俺の子供を助けてくれ!!」




子供の命が危ない状況の中、

母上は誰よりも早く外に飛び出した。




「母上!」




条件反射で母上と呼んででしまったが、

聞こえる間も無く外に出てしまう。




「クリス!行こう!」




外に出ると、奇妙なモンスターを目にした。

頭はゴブリンだが熊のような身体をしている。

間近に倒れる子供を、今にも食べようとしていた。



そしてその瞬間、誰よりも早く、

誰よりも強く駆け抜けた人物がいる……



目にも止まらぬ速さで動き、

母上は、瞬く間にモンスターの死角に移動した。

そして過去の歴史上一人しか習得したことが無い、

固有魔法、光魔法を発動する。

光の剣を複数呼び出し飛ばしていき、

その一撃必殺の刃は、モンスターを貫いた。



ユーリの隣で俺はその光景を目にする。

父上が言っていた、宮廷魔術師 序列一位、

歴代最強の魔術師クレア・レガード。

その実力を目の当たりにしている……




そして、そこに居合わせた、

通りすがりの者が俺に声をかける……





「お前さん、クレアが戦うのを初めて見たのか?」





「はい、凄まじい強さですね」






「そりゃあ、当たり前よ!

 目にも止まらぬ速さで動くスキル【神速】

 【光魔法】から繰り出す最大100の光の剣」








「そして、そんなクレアを、

 人々はこう呼んでいる……」








「閃光のクレア」


◆◆作者からのお願いです◆◆

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

読者様の期待に応えるよう、全力で頑張ります!



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