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第32話 誘惑(2)

前世で彼女など出来たことは一度もない……

そして初めて想いを交わしたのはマリアだ。

この状況、どうして良いのか分からない。

生きてきた中でも最大の危機を迎えていた。

フィリアによりベッドに押し倒され、

その上から抱きしめられている。



「クリス君……

 私、寂しかったの……」



あの、退いてほしい……

いきなり真剣な空気になってしまって、

切り出すタイミングを逃してしまった。



「クリス君、成長するとクレア様に似てるから……」



「へ?」



獣王剣で姿を変えると母上に似てるのか……

俺は母上の顔は薄らとしか覚えていない。

そして酔いのせいなのか、

フィリアがキツく抱きしめてきた……



「クリス君……

 どこにも、行かないで……」



フィリアは悲痛な声で泣き始めた。

しかし、フィリアの身体の感触が全て伝わってしまい、それどころではない。



うわあああ

ヤバい……

このまま……では……



「大丈夫だから、どこにも行きませんから……

 と、とりあえず離れましょう!ねっ!」



「クリス君、良かった……」



大丈夫、どこにも行かない。

その言葉だけがフィリアに伝わり、

その後のフレーズは聞こえなくなってしまった。



「はぁ……クリス君……」




くそ……

どうにか退かせる手は無いのか……

すると、俺の頭にフレーズが一言浮かぶ。




「お、重いです。

 退いてください!」




「へ?酷いよ!

 クリス君、ぐす……」




俺は選択を誤ってしまったようだ…

再度フィリアは別の理由で泣き出してしまう。



あああああ!

もう埒が開かない。

正直に言おう。




「ど、退いてください!

 胸が当たってるんです……」




「へ?」





「…………」




 

「クリス君のえっち」




フィリアは、文句を言っているが、

最初から正直に言えば良かったと心から後悔をした。




そして宿屋の自分の部屋へと向かう。

今日は何も考えずにゆっくりと休むことにした……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「災難な1日だった…」



翌日になり疲労は休憩スキルのおかげで取れていた。

魔力も見事に全回復している。



そして久しぶりにスキルの確認をしようと思い、

鑑定の腕輪を使用した。




名前:クリス・レガード Lv.32

MP:1300

取得スキル:

休憩 Lv.2

獣王剣Lv.9

覇王Lv.1

強化格闘術Lv.3←new


取得魔法:火魔法Lv.2

    回復魔法Lv.2

    水魔法Lv.3←new



やっぱり取得していたのね……

色々あったが、覇王を使うのに消費が激しいから、

このタイミングでの戦力強化は正直助かる……



「あ!クリス君、おはよう」



「フィ、フィリアさん!」



急に声をかけられて動揺してしまう。

昨夜の事を少し思い出してしまった……



「どうかしたの?」



「へ?」



何かあったのかフィリアが尋ねてくるが、

まさかフィリア自身が原因とは全く思ってもいない。



「昨日の夜にあった事、覚えてないの?」



「え?何のこと?」



全く忘れているのかよ……

これから、お酒を飲ませ過ぎたら駄目だな。



「ま、ま、まさかクリス君に迷惑かけた?」



フィリアはかなり焦っている。

過去に飲んで同じような事があったのかもしれない。



「いえ、僕も悪いとは思ってますから」



「ご、ごめんなさい!」



「あの、それはもう良いのです!

 僕もスキルを覚えさせてもらったので、

 この話はこれで終わりにしましょう!」



「へ?スキル?」



そして俺は休憩スキルの特性を伝えた。

昨日の俺から魔力を送り休憩スキルを使った事で、

強化格闘術と水魔法を得た事を伝える。



「な、な、なんてズルいの!」



「まあ、そう思いますよね……」



フィリアの年単位の努力を一瞬にして、

コピーしてしまうのである。

嫉妬心も芽生えるだろう。



「でも、それなら好都合ね!

 私の戦闘スタイルで、訓練しましょう」



フィリアは、同じスタイルで訓練した方が、

見本として目指しやすいとアドバイスをくれた。



「フィリアさんと同じ戦い方なら、

 昨日のオーク退治みたいに戦えますね!」



今後の方針が決まったところで、

俺達は馬車で出発する……

ふと後ろの荷物を見ると、

住民からのお礼の品が溢れていた。



「フィリアさん、

 凄い荷物になっちゃいましたね」



「こ、こんなに貰えると思わなかったけどね」



「でもお酒の飲み過ぎは、駄目ですからね!」



「わ、分かってるわよ~」



そう言って、俺はフィリアをからかう。

気づいてみればルミナスを出発をする前よりも、

距離は近づいたのかもしれない。



「ねぇクリス君……

 貴方はクレア様の事は覚えてないの?」



「母上ですか?

 俺は薄らとしか覚えてないのですが、

 とても優しかった気がしますね……」



フィリアは馬車を運転しながら少し遠くを見つめる。

昔を思い出しているのだろうか……



「生前にね、私にこんな事を言ったわ……

 どうしても大切な人が出来たら、

 必ず貴方の力で守り抜きなさいってね」



「母上がそんな事を……」



「だから、私は貴方を守ってみせるわ!

 クリス君の師匠としてね……」



フィリアは過去に誓った母上との約束を思い出し、

絶対に俺を守ると宣言した。

その言葉を聞くと昨夜の事を思い出してしまう。

二度と自分の前からいなくならないでほしい。

それは悲痛にも感じる願いだった……



「フィリアさん……」



「まだまだ弟子には負けないわよ」



フィリアさんは今までで一番輝く笑顔を俺に向ける。

もしかすると、今見せた表情が、

本当の彼女の魅力なのかもしれない。



まだまだ旅は始まったばかり。

でも、俺の師匠から沢山の事を学べるはずだ。

そしてそれは将来、大切なものになるのだろう……

◆◆作者からのお願いです◆◆

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

読者様の期待に応えるよう、全力で頑張ります!



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最新話を追いやすくなります。



皆様の応援が今後の執筆の励みになりますので、

何卒宜しくお願い致しますm(_ _)m

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