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第31話 誘惑(1)

ダカールは王都にも近く大きな街だ。

交易盛んな商人の街で、防衛に力を入れているが

何故ルミナス側までオークが迫っているのか分からない。



「クリス君…。

 もしかするとかなり強い敵がいるかも」



「フィリアさん、すいません!

 覇王で全力を出したら5分が限界です」



フィリアはその言葉に驚愕していた。

現状のスキルは大きく魔力を消費する。

そのため占拠されているダカールに行っても、

俺は5分以上は戦えない……



一瞬驚いたような表情を見せたフィリアは、

宮廷魔術師での経験を生かし打開する方法を考える。

すると何やら作戦を閃いたようだ……



「クリス君のスキルは、休憩だっけ?

 陛下やキャロルから聞いてはいたのよ」



「そうですけど……」



「私が魔法を使うから、魔力を渡して!

 クリス君は魔力タンクのような戦法よ!」



その提案を聞き、一瞬マリアとの日々を思い出す。

別に破廉恥な事をする訳ではないが、

なぜか背徳感を感じていた……



「あの、やましい事は無いのですが、

 手を繋ぐのは大丈夫なのですか?」



「手?手なんて繋がなくても大丈夫よ!

 それに魔法打ち難いし」



「え?」




俺は魔力を送る別の手段に安堵していた……

マリアとの訓練を思い出し、

出来れば接触は避けたかったのだ。



「クリス君、ダカールが見えてきたわ」



ダカールの門が今にもオークの群れによって、

今壊されそうなところだ。

かなりの量のオークが群がっている……



「まだ街の中に入ってない!

 でも外で戦う者は、みんな……」



「あの数相手に冒険者や警備兵では、

 戦力不足だったようね」

 


街の中に逃げ込み何とか凌いでいるようだ。

救援を求めたいが街から外に出られない。



「じゃあ、クリス君やるわよ!」



「は、はい!」



そしてフィリアは宮廷魔術師のコートを脱ぎ、

シャツ一枚の姿になった。



「はい?」



「え?背中に手を置いて、

 魔力を送って貰うんだけど……」



「え、え、背中ですか?」



「クリス君、早く!」



や、ヤバい!

き、聞いてないぞ!

直接手を背中に触れないといけないなんて……



「早く!街に入っちゃうでしょ!」



「ご、ごめんなさい!」



慌てて俺はフィリアの背中に手を当てた。

背中に触れるとシャツ越しにだが、

肌の感触を感じてしまう……



「クリス君?クリス君?

 早く魔力送って」



「は、はい!」



何故か緊張してしまう……

年上の女性の背中を触る機会なんて無いからな。



「い、いきます」



「く、クリス君、もっと優しく……」



突然の魔力にフィリアは焦っている。

俺も平常心を意識したいが、そう上手くはいかない……



「クリス君………いくわよ」



「は、はい!」



「バブルショット!」



そのように伝えるとバブルショットを放つ。

背中越しに魔力が水魔法に変換されるのを感じ、

弾丸の水魔法はオークを撃墜した……



「す、凄い威力だ!

 フィリアさん、やりましたね!」



「はぁ、クリス君!

 次いくわよ」



「は、はい!」



そしてフィリアへと魔力を送り続け、

バブルショットで次々にオークは瞬殺される。

更に怒り出したオークが接近するが、

フィリアは、強化格闘術で始末した。

相変わらず近距離、中距離共に隙がない。



「あと何匹くらいですか?」



「残り10匹くらい……」



よ、ようやく終わる……

さっきから目の前のフィリアを意識しないように、

平常心を保つのに精一杯だったのだ……

色々な意味で警戒しなければ危ない。



そしてフィリアと共に、オークを殲滅していく。

俺は必死にマリアの顔を思い浮かべながら、

オークを全滅出来るまで、この瞬間を耐えたのだった……





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「まさかルミナスの宮廷魔術師様とは!

 ダカールも本当に運が良かった」



あれから俺達は街の人から盛大に迎えられている。

間に合わなければ大惨事だったのは間違いない。



「感謝の印として、

 今日お祭りを開催しますので是非!」



「いえ、俺達は急いでいるので……」



「ぜひ参加します!」



俺が断ろうとしたところを、

フィリアが、食い気味で参加を伝えた。

大丈夫なのかと心配になるが、

フィリアへ申し訳ない気持ちもあるため、

謝罪と慰労の意味も込めて従うことにした。





そして、数時間後……




「きゃははははははは」



「フィ、フィリアさん」



俺は数時間前に慰労と考えた自分を殴りたい。

フィリアは酒をこよなく愛する魔術師だったのだ…



「クリスく~ん……

 お姉さんとお話し、しましょうよ~」



「いや、もう未成年には遅い時間なんで、

 宿に戻りたいのですが……」



「ら~に言ってるのよ~」



目つきが完全に酔っらいの目だ。



や、ヤバい!野獣がここにいる。

誰か助けて……

街の人に視線を送るが、知らぬ存ぜぬで逃げていく。



そして深夜も深夜の時間になり、

ようやくフィリアも眠くなってきたようだ。

飲みながら酔い潰れてしまった……

背中にフィリアを乗せて宿屋まで運ぶ。



もう早く運んで今日は寝たい……

一刻も早く。



そしてフィリアの部屋まで着きベッドに運ぶと、

後ろから押し倒されベッドに倒れてしまった……



「ちょっと、フィリアさん!」



「クリス君……」



「何やってるんですか!」



「へへへへへ」



「退いてください、怒りますよ!」



俺は、何とか怒りに振り切らないと理性を保てない。

何せ背中には色々と当たっている……

しかし、俺が声を荒げると、

予想をしていない寂しげな声が聞こえてきた。



「お、怒らないでよ……

 私には、もう誰もいないのよ……」



「へ?」



「どうしてよ!

 どうして………」



「フィリアさん?」



「どうして居なくなっちゃったの?

 クレア様……」



母上の弟子であるフィリア。

俺を見ると思い出すのが嫌だから、

今まで会えなかったと言っていた……

今日も母上を思い出していたのだろうか。



「もう居なくならないで……

 ……死な……ないで」



悲痛すぎるその声は、一体母上に向けた言葉なのか。

それとも俺に対しての言葉なのだろうか……



水魔法と格闘術に優れた宮廷魔術師フィリア。

大切な人を失い、今も苦しんでいる。

心の傷が癒える日は来るのだろうか。

そして俺は、背後から捕まれたこの状況を、

どう切り抜ければ良いのか悩み続けていた……

◆◆作者からのお願いです◆◆

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

読者様の期待に応えるよう、全力で頑張ります!



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最新話を追いやすくなります。



皆様の応援が今後の執筆の励みになりますので、

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