第1話 クリス・レガード
「ぐぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
この世のものとは思えない断末魔の叫び声が、
王都の路地裏に響き渡る。
俺は可愛い女の子を守る為に、
目の前の男の股間を、剣で突き刺した。
そしてその行動に一瞬の迷いもなく、
全く後悔もしていない……
何故こんなことになっているのかと言うと、
それは3時間前に遡る……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
温かな風がカーテンを揺らし、
小鳥たちの歌が朝を告げる。
その歌声が心地よくてゆっくりと目を開けた。
「クリス様、おはようございます」
「……リーナか」
俺を呼ぶ声が聞こえる。
年上で落ち着いた優しい女性の声。
黒髪短髪のメイド、リーナだ。
歳は20代前半で物静かな雰囲気を醸し出している
「アリス様を呼びますか?」
「いや、まだ呼ばないでくれ……
少し頭痛がするんだ」
声を発した瞬間、前世の記憶と融合した感覚がある。
どうやら、俺は異世界に転生したようだ。
更に、頭の痛みが徐々に引くと共に記憶が蘇る。
転生前はITプログラマーという仕事をしていた。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、徐々に痛みは引いてきたよ」
俺はゆっくりと立ち上がり、全身鏡を見る。
するとあまりに美しい自分に驚いてしまった。
「き、綺麗だ」
自分の顔なのに、綺麗と咄嗟に言ってしまった。
長すぎない銀髪に赤目の容姿で、
全く男とは思えない美しい顔をしている。
「ふふふ、クリス様はいつも綺麗ですよ」
リーナが俺の反応を見て揶揄いながら笑う。
俺も自分で言っていて恥ずかしくなってきた。
「クリス様、着換えをお手伝いしますね」
リーナに手伝ってもらいながら寝巻から着替える。
頭の痛みも無くなると、記憶の混乱も落ち着いた。
俺の名前はクリス・レガード。
今年で12歳になる。
レガード家は伝説の剣士が起こした貴族だ。
平民だがドラゴンを退治し剣聖の称号を授勲された。
そんなレガード家は剣が全ての男爵家で、
産まれた頃より剣に生き剣に死ぬ。
そして当主である父上のゲイルから、
俺は過酷な訓練を受けてきた。
「クリス様、今日はどちらに行かれる予定ですか?」
父上との訓練で丁度、剣が折れてしまった。
だから今日は、それを新調しに行こうと思っていた。
目指すは王都の武器屋だ。
「王都まで剣を買いに行ってくるよ」
「気を付けてくださいね」
リーナに優しく見送られ屋敷を出て、
王都の武器屋へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここはルミナス王国の王都だ。
ルミナスには騎士学園と魔法学園が存在しており、
どちらかに入学できれば将来は安泰と言われている。
当然俺は騎士学園に所属している。
そしてこの道は学園への通学路だ。
お世話になっている武器屋で剣を買い終わり、
いつもの慣れ親しんだ道を通って帰宅している。
普段は街の掲示板には目もくれずに家路に就くが、
今日は自然と目に留まった。
もしかしたら、写真の女性の美しさに見惚れたのかもしれない。
『聖女マリア・ルミナス様がご活躍』
この世界はスキルが全ての世界だ。
12歳の儀式でスキルが出なければ、
無能力者として蔑まれる。
マリア・ルミナスは、王国第二王女。
そして回復魔法レベル5で国内最高の使い手だ。
掲示板にはマリア様の活躍が写真付きで紹介されている。
「まるでアイドルだな……」
ファンクラブまで創設されていると聞く。
誰もが知っているルミナスの有名人。
高レベルのスキルを持って生まれると、
それはそれで生き辛そうだなと思う。
帰り道を歩いていると、いつもなら見かけない風景が目に留まった。
ローブを着た子供が路地裏に走って行ったのだ。
フードを深く被っていて顔はよく見えない。
更にその子供を怪しい男達が追いかけている。
俺はなぜ助けようと思ったのか分からない。
気づいたらその子を追いかけていた……
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