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14 私設軍隊

 超小型の発信器や小型の遠隔爆弾、高性能ドローンに画像処理技術。

 軍の特殊部隊で使う様な装備でも、実戦配備には量産が必要になり、少なからず企業が関わる。


 その企業では、プレゼンテーションに使ったプロトタイプ、発注数より作りすぎた物、新型ができた故に不良在庫となってしまった物などは、処分の名目で解体に回される。


 そして、金や家族を使った脅しを使えば、その一部を横流しさせるのも不可能ではない。

 解体処分部所からコンテナ単位で搬出されるゴミの底の方に、どの様な物が入っているかは、ゴミを入れた本人と外部の産業廃棄物処理業者しか知らないのだから。


「軍では型落ちだが、一般には十分すぎる装備だろ?」

「ちゃんと、仕様書も有るな?よし、約束の値で買い取ろうじゃないか!」


 廃棄物のコンテナから取り出した武器や装備を前に商談をしている男達が居た。


「本当に国内(アメリカ)では使わないんだろうな?」

「勿論だ。中の表示も削り、外観も変えて使うから、出どころがバレる心配もないらしいぞ」

「なら良いが・・・じゃあ、コレが次に廃棄される予定のリストだ」

「ああ。じっくり精査させてもらうよ」


 横流しのメリットは、報酬の金額面だけではない。

 廃棄物を分解する手間が掛からないので、総合的な業務が早く進む。

 産業廃棄物処理業者も、それは同様だ。


「発注品が、ワゴン車で運べるサイズだから助かるよ、本当に」


 これが、ミサイルや特殊車両を運ばなくてはならないのであれば、こうはいかない。


 軍御抱えの産業廃棄物処理業者から出てきた彼は、地元のマフィアで働く武器商人くずれだ。

 マフィアの指示で、外貨獲得の為に国内では使えない物を、海外に輸出している。


 持ち帰った武器や装備に、アメリカでは一般人でも買える弾薬を加えて、各々をビニールで防水処置をする。

 それを緩衝材と共に木箱へと詰めていく。


「リストをメールで送っといて、漁港に持って行くのは明日で良いか・・・・」


 今回荷物を運ぶのは、遠洋漁業の漁師だ。

 漁場で相手国の漁師と、海上授受するのだ。


 他に、軍の補給部隊に紛れ込ませる場合や、個人のクルーザーで相手国の近くまで行く者に持たせる場合もある。


 最終的な取り引き相手は、日本のマフィアだ。

 運び屋の身元は、調べ尽くしてあるので、一部でも紛失した場合は、本人を含む家族の殆どが、海に沈んでもらう事になる。

 運び屋も、荷物が非合法な物だとは知っているが、中身や行き先を知らぬ者ばかりだ。

 世の中には、知らないで済めば知らないでおいた方が良い事も多い。


 量も回数も多くはないが、それでも手間を掛けるほど、この取引は利益率が高い。


 依頼者(クライアント)からは、私設軍隊を作る規模の装備と量だと聞いているので、商品の選定も分かりやすい。


「日本は平和ボケした国だと聞いていたが、そうでもない様だな」


 転売はしているかも知れないが、日本で大規模なテロが起きたと言うニュースは聞こえてこない。

 当然、本業の武器商人からも買っているだろうが、このルートよりも割り高になるだろう。


「さてさて、次の目玉商品は何かな?」


 男は、廃棄物業者から受け取った、次回の廃棄予定製品のリストに目を通すのだった。






 日本では、牙釖組と紅蓮会の若手を中心に訓練が行われていた。

 高速道路での爆弾ラジコンカー操作、廃ビルを買い取って行われた侵入訓練、長距離狙撃や潜伏訓練など、まさに特殊部隊を作る勢いだ。


「こう言っちゃあナンですが、俺達って何処(どこ)に向かってるんでしょうねぇ?」

「ああ。極道って、意地と腕っぷしで成り上がっていくもんだと思っていたが、なんだか伝説のスナイバー(ゴルゴ)になっていく気分だよなぁ」

「こらっ、ソコッ。無駄口を叩くな!」

「鬼教官まで居るぜ!」


 先発的に訓練を受けた者が指導員として、増員された者達をしごいていた。


 (かた)や、若手でない者達。つまりは年配者達はと言うと、訓練に駆り出された分の穴埋めとして、縄張り(シマ)の地回りに駆り出されていた。


「どうしたんだぁ牙釖はぁ?一気に老けちまったみたいだなぁ?若手に逃げられちまったか?」

「弱小組のガキが生意気言ってると、埋めちまうぞ!」


 若手が居ないのを、新たなる変化の前触れと気付かない者達との衝突が絶えなかった。


「若手を引き抜かれたせいで、事務所もガラガラだぜ」

「ボヤくなよヤスさん。若の結婚を期に、牙釖も大きく強くなるんだ。二ヶ月位の辛抱らしいぜ」

「だがよぅ、先発隊が半年鍛えた以上の事を、二ヶ月で仕込めるもんかねぇ?」

「その為に、紅蓮会から多額の金が流れてるって話だ」


 装備は勿論、訓練する場所の確保など、結婚前とは比べものにならない金額による環境整備が成されていた。


「まぁ、若い時に出入りしていた店に顔を出せるのも、悪くはないがな」

「そうだな。色々と様変わりしたのにも驚いたが」


 『温故知新』、『古きを訪ねて新しきを知る』ではないが、組の上層部が離れて久しい現場の変化を知るのにも、良い機会になっている様である。


 実際にも新規の訓練は予定通りにはいかず、二ヶ月で戻ってきたのは一部でしかなかった。

 その後も少しずつ戻ってきたが、全員が戻ったのは八ヶ月後だった様だ。


「なんか、以前と代わり映えしない気がするんだが?」

「いや、そう演じているだけさ。よく見ると狡猾になって、スキがなくなっている」

「そう言えば、怒られる若手が減った様な・・・」


 普段のチャラケた感じは変わりないが、周囲を良く観察して先回りしている様にも見える。


「これで、海外からの勢力にも対抗できるんだろうな?」

「知らないのか?武器庫にもなっている、紅蓮会のコンテナ船を。装備は軍隊並みだぜ」


 そもそも30代での晩婚も増えている昨今で、21歳になったばかりの昴と、まだ19歳の紗香を結婚させたのは海外からのマフィア流入に対抗する為だった。

 在日外国人をコネクションにした情報収集と、日本では用意できない様な武装による制圧で、西日本を中心に、幾つもの組が潰され、海外のマフィアに占領されていっている現状だ。

 海外の組織は、民族性と利潤重視で、仁義も任侠もあったものではなかったのだ。


「関東のマフィアは、順次に潰して行くが、他の地域にも盃を交わして、武器と指導員を送り込まないと、数で負ける将来しか見えて来ないからな」


 関東だけを死守していても、他の地域が全て敵対勢力になってしまっては、防ぎきれるものではない。

 海外マフィアの流入した地域の組と盃を交わして、武器の販売と戦闘レクチャーの教官派遣をしている。

 また、盃を交わした者への支援用に、武装した組員を送り込む大形ヘリコプターも準備した。


 武器や装備を販売したお陰で海外マフィアから縄張りを手にした組からは、紅蓮会に相応の上納金をあげさせてもいる。

 但し、日本の組同士での争いは、海外マフィアが居なくなるまでは厳禁とさせている。



 だが、どんなに巧く隠蔽しても、警察が全く気が付かないなんて事は無いのだった。


この作品は、5日、10日、15日、20日、25日、30日(または月初)の00時に次回発表となります。

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