第7話 令嬢たちは見た~ピアローゼの場合~
私はドワノコフ公爵の娘『ピアローゼ』と申します。
同じ公爵令嬢で同い年のフレイスリア様の誕生パーティに出席することになりました。
フレイスリア様のお家はリーシュベルト家です。
脳筋などと揶揄されてはおりますが、国防などで常に前線に立ち続け軍事面において多大な貢献をしており、国にとって欠かすことのできない公爵家です。
フレイスリア様自身も女性の身でありながら、領内の魔獣討伐に参加されているとか。
私などとは天と地ほどにも差があります。
私はフレイスリア様とストロノーグ家の令嬢フレデリカ様と同い年ということもあり、時々、三人でお茶会をする機会があるのですが、ストロノーグ家も軍事において重要なポストに就いていることもあって、私だけ別世界の人間のような疎外感を覚えていました。
そんなこともあって、このパーティに出席するに対して気後れしていました……いえ、実際、今も気が気でありません。
早く終わらないかな、と思っていましたが、そんな気持ちはフレイスリア様の可憐なお姿を目にした時に吹き飛んでしまいました。
彼女をもっと見ていたい……お話してみたい……
そんな気持ちに駆られながら自分の番が来るのを今か今かと待っていました。
そして、ついに待ち侘びた瞬間が――彼女に挨拶する場が自分に回ってきました。
――『ごきげんよう、フレイスリア様。本日はお招き頂きありがとうございます』
――『ごきげんよう、ピアローゼ様。こちらこそお越しくださり、ありがとうございます』
彼女は私の挨拶に可憐な笑顔と愛らしい声で返してくれます。
ああ……まだ、もう少し彼女と言葉を交わしたい……と、そう思っていた時でした。
――『ここか?脳筋のパーティ会場は』
突如として来訪したレーヴェリアン殿下によって、私の願いは砕かれてしまいました。
その後は、殿下がフレイスリア様に無体を働いたあの衝撃的な場面の印象しか残っておりません。
ああ……フレイスリア様ともっとお話したかったなぁ……
家に帰った後は、そんな悲しいような寂しいような気持ちでいっぱいになりました。