~今日もメモリー改ざんが忙しいです~
掘削現場は10以上数があるため忍び込むのは簡単だ。
深夜になるとAIと機械だけが動いているため、AIのセンサーを避ければ事務所に入ることができる。
問題はその事務所で行動するとき。
音声IDと指紋IDによる二重ロック。まずはこれを突破しなければならない。
そのあとは監視カメラ。AIにより更に強化された顔認識システムが搭載されているため、バレる可能性が高い。
そこを無事に切り抜けても次は作業員たちのロッカールームにあるレーザーによる警報装置。
これは特殊なメガネをかけレーザーの位置を把握しながら触れないように移動しなければならない。
無事作業着を手に入れても戻るときに細心の注意を払わないと警報が鳴り本社にすぐに知らせが入りAIによる警備システムの強化、更に警備隊が近くの建物にいるため出動されるとすぐに捕まってしまう。
「とまぁこんな感じかな」
「いやいやいやいや!服盗むのだけでこんなに大変なのー?!」
「一見すると難しそうに聞こえるが、俺のハッキング技術を舐めるなよ。刻印を盗めたんだ、これくらい楽勝さ」
「それならいいけどさー」
「今何時だ?」
「昼過ぎたぐらいだね」
「はぁ、会社に行かないとまた親父から文句言われるな」
「じゃあ僕はここにいるねー」
「おう、すぐ仕事終わらせてまた戻る」
真治は廃屋の扉を開ける。
「いってらー」
「おう」
バイクのエンジンをかけ会社へと向かう。
会社に着くと警察がおり、騒々しい雰囲気に包まれていた。
「なんだなんだ、なにがあったんだ?」
会社に入ろうとすると警察が声をかけてきた。
「すみません、ここの会社の方ですか?」
「あ、はいそうです」
「なにか証明できるものはありますか?」
「これ」
真治は社員証を警察に見せる。
「失礼しました。中へどうぞ」
「何があったんすか?」
「メモリーが大量に盗まれたみたいなんです」
「メモリーが?」
「はい、しかも刻印まで盗まれた形跡があるそうで」
「え、刻印も?」
「誰が何のためにこんなことをしたのかは分かりませんが、悪用されれば国の名誉に関わりますので早急に犯人を捜しているところです」
「そうなんですね…お疲れ様です」
真治は会社の中に入っていく。
「いつにもまして人が多い、うるさいな」
エレベーターに乗り込み7階のボタンを押す。
チーン
3階で止まりドアが開く。
「あっ」
「あっ」
そこにはエリーナの姿があった。
「こんにちは猫田さん」
「どーも、エリーナさん」
「名前覚えてくれたんですね!」
「エリーナさんを見て忘れる人のほうが少ないと思いますよ」
「ふふふっ、そうかもしれないですね」
「それにしても随分厄介な事件が起きましたね」
「はい、うちの部署も大騒ぎですよ。早く犯人が見つかるといいですね」
「そうですね」
チーン
エレベータが6階で止まる。
「ではまた」
「はい、また」
扉が開きエリーナは歩いていった。
「普通にしてるけど内心は張り裂けそうなくらい辛いだろうに」
7階に着いた。
オフィスに向かうと道治が走って来た。
「聞いたか?」
「あー下で警察に説明されたよ」
「何か知ってるか?」
「知るわけないだろ、会社にいる時間短いんだから」
「AIのことは聞いたか?」
「AI?」
「聞いてないみたいだな。普通ならこんなことが起きる前にAIが警報を鳴らしたり、異常を感知して本社に通知がいくはずなんだが、今回AIが作動した形跡がないんだ」
「え、つまりAIが動いてなかったってこと?」
「もしくはAIを止める何かしらの技術を使ったか」
「AIってそんな簡単に止められないだろ」
「そうなんだよ、だから余計に捜査が難しくなっているようだ。これは大問題だ。国の名誉に関わるし、何よりも我々の信頼にも関係してくる。そこでお前の力を借りたい」
「俺の?」
「あーそうだ。この会社のシステムに入っていろいろと調べてほしいんだ」
「え、会社をハッキングしろってこと?」
「大声では言えないがそういうことだ。お前ならできるんじゃないか?」
「まぁできなくはないけど大丈夫なの?」
「責任は私が取るから安心しろ」
「…いいけど、それって今すぐ?」
「当たり前だろ!」
「明日じゃダメ?」
「ダメだ!」
「いやー実は今日はどうしても外せない用事が…」
「頼む。これは上司としてじゃなく父親としてのお願いだ。」
「…分かった、やってみる」
プルルルル、プルルルル、プルルルル
「もしもーし、猫ちゃんどうしたのー?」
「実はかくかくしかじかで時間がかかりそうなんだ」
「それは大変だねー。まぁ侵入するの夜中だしそれまでには戻れるっしょー」
「だといいんだが。とにかくそういうことだ」
「じゃあダラダラしながら待ってるから頑張ってねー」
ツーツーツーツーツー
「親父、時間無いからさっさとやるぞ」
「頼んだ」