~今日もメモリー改ざんが忙しいです~
天井からぶら下がっている機械が動き出す。
「よし、じゃあ転送するぞ」
「猫ちゃん、今回はどんなメモリー入れてくれたのー?」
機械から光が照射されネックレスが綺麗に光りだす。
「お前が卒業記念に買ってもらった格闘技用グローブに入ってたメモリーをそのまんま入れたよ」
「お!ていうことはこのネックレス更に価値が上がったってことかー?」
「さーな、それはメモリーを鑑定する機械が決めることだ」
「これで更に良い物と交換できたらもっと可愛いベイビーちゃんとあんなことやこんなことを…」
「おい、いい加減にしろよ」
「もう冗談だよー」
「お前のは冗談になってない」
「だよねー」
「そういえばきゅう、鉱石会社の件はどうなった?」
「あーそれなら大丈夫、明日社長さんがここに来るってよーん」
「そうか、ならいいんだが」
「今は掘削機械がぜーんぶやっちゃうから、鉱石のメモリーがぜーんぶ一緒になっちゃってるからねー」
「だから安定してるとも言えるんだがな」
「でもさー、作業員たちが機械じゃなく手で鉱石を掘ってるメモリーにするだけで価値が倍以上になるんだもんねー」
「おかげさまで俺の仕事は減らないし、コレクションも増えるし最高だ」
「でもメモリー改ざんなんてバレたら死刑だよー」
「だからこうやって隠れてやってるんだろうが」
「物だけはあるからどこにでも隠れられるからねー」
「その言い方ムカつくな、死ね」
「いや辛辣すぎでしょ猫ちゃーん、仕事持ってきてるのほとんど俺なんだよー?」
「じゃなかったらお前とはとっくにさよならしてるわ」
「ツンデレなんだから猫ちゃんはー」
「腹が減った、飯食いに行くぞ」
「あれ?会社には顔出さなくていいのー?」
「あとで親父に連絡いれる、そのあとでいい」
「まーさか父親がメモリーを管理してる会社にいるのにこーんなことしてるなんてねー」
「うるせぇとにかく飯食いに行くぞ」
「今日は肉がいいなー」
「お前はいつも肉だろうが」
「ハンバーガー食うぞー!!」
「ステーキとかじゃねえのかよ!はぁ、まいっか」
猫田真治の父、道治は物のメモリーを管理する会社に勤めている。
人間とAIが共同でメモリーの中に“刻印”を入れる仕事だ。
不正にメモリーを改ざんされないために国が決めた印をメモリーの中に入れる。
複雑なコードと形状をしているため真似をしたり同じものを作ることは不可能だ。
真治は父と同じこの会社に勤めている。
そして得意のパソコン技術を駆使し刻印のコードを盗み出すことに成功。
それを機にメモリー改ざんの仕事を思いつき今に至る。