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ゴーイングマイウェイ  作者: 円寺える


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第45話

 女子二人の後ろを歩いただけで、どっと疲れた大河はカフェでため息を吐いた。

 期間限定の苺チョコミルクを飲み、真奈はふっと笑った。


「あら、幸せが逃げるわよ」

「うるせえ」


 メロンソーダをストローで飲みながら真奈にそっぽ向ける大河の横で、悠太は羽菜が楽しそうにしている姿を見て、今日来てよかったと思った。

 二時間ほど歩き回ったが結局買うものはなく、羽菜も真奈も手ぶらである。


「悠太くんと大河くんは行きたいところないの?」


 真奈と羽菜が二人を連れまわしていたため、今度は男子の意見も尊重しようと尋ねる。

 大河と目が合ったが、すぐに逸らされてしまう。

 未だに嫌われているのだろうか、と羽菜が不安になっていると「じゃあ後で本屋に寄っていいかな?」と言った。

 羽菜は、もちろんと了承した。


「本屋ね、わたしももう一冊参考書買おうかしら」

「そういえば、二人とも結構順位上げてたね」

「まあね、寝る間も惜しんで猛勉強したわよ」


 ご飯を食べるとき、寝るとき以外はすべて勉強に時間を割いた。その結果としては申し分ないと真奈は思っている。

 それもこれも、全部大河の視界に入るため。


 何を考えているか分からない顔でメロンソーダを飲む大河に、もっとこっちを見なさいよ、と念を送るが大河は当然気づかない。


「三年生まで上位をキープしたいね!来年は進路を考えないといけないから、私ももっと頑張らないと」

「はは、羽菜ちゃん三位だもんね」

「うん、選択肢が多くなるようにせめて二位になりたい」


 真奈は前ほど焦らなくなった。

 羽菜が上へ上へと行くにつれ、大河もそこに追いつこうとしていた。そんな大河に追いつけなくて焦って焦って、羽菜を一層嫌悪した事もあった。しかし、自分はもう以前の自分ではない。追いつくことが困難ではないことを知っている。


「もしかしてお前らもう高校とか考えてんのか」


 大河がなんとなく言った放った言葉に、真っ先に答えたのは羽菜だった。


「決めてはないけど、意識してるところはあるかなぁ。真奈ちゃんは?」

「わたしは、まだ、全然」

「僕もまだ全然かな」

「大河くんは?」

「…考え中」


 嘘である。真奈と悠太の答えは一つしかない。

 好きな人と同じ高校へ行く。

 この選択肢しか頭にない。


 あんたと同じ高校に行っていつかは彼女になってやるわ、と燃える真奈。

 羽菜ちゃんが入る高校は僕も入れるけど、なるべく偏差値の高いところがいいなー、女子が鬱陶しくないところ、と早くも女子高生を危険視する悠太。


 お互いばちっと目が合い、思っていることが筒抜けであることを悟って笑顔をつくる。


 真奈は少し、今回四人で遊びに来たのは間違いだったのではと、思った。

 理由は一つ、大河が羽菜を意識しているからだった。

 本人は無意識でやっているのかどうか分からないが、羽菜と目を合わそうとしていない。それは嫌いだからではなく、意識しているからだと真奈は確信していた。自分が気づいたのだから、当然悠太も気づいているだろう。であるのに、悠太は何も行動しないし発言しない。真奈も自分が何かを言ったり行動するつもりはない。ただ、あれだけ頑張って大河の視界に入れるようになったのに、結局は羽菜にとられる。それが気に食わない。


 勉強しか頑張っていないくせに、大河の意識をもっていく。未だ大河の中ではけじめがついていない。もしかしたらまだ好きなのかも。そんなことを思いながら今日羽菜と楽しむフリをした。


 自分の性格が悪いことは百も承知だ。こんな女を大河が好きになってくれるのか。そう悩んだこともあったが、愚鈍であるよりマシだと思った。羽菜を嫌うのも当然のことだし、正当化するつもりはない。努力せず真奈の好きな男の気を引き、汚れなく純粋。そんな女を嫌うのは自然な流れだ。

愚鈍で策を講じず、笑顔で大河の恋を応援する。そんな大馬鹿女にはなりたくないし、何もせず易々と敗北するよりは百倍マシだった。


 だから真奈は羽菜が嫌いでも友達を続ける。


「羽菜ちゃん、今度は二人で買い物に行こうね」


 こうやって笑顔で親友のフリができる。

 ただ好きな人に振り向いてほしい、その一心で。


「うん!!」

「お前ら何も買ってないだろ」


 呆れ顔をする大河にきゅんとする。

 顔が好きだし高くも低くもない背丈も好きだし、不器用なとこも実は結構優しいとこも、運動が得意なとこも陰で猛勉強しているとこも、柄シャツを着るとこもストレートに言うとこも、女子にいい顔をしないとこも全部全部大好き。羽菜に惚れてるとこ以外全部大好き。


 目の前に座ってメロンソーダを見つめている大河を眺め、絶対いつか彼女になって大河に愛されてやると意気込む真奈だった。




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