アーケアの村
「… 九十八 九十九 百!」
村の広場で一人素振りをする少年がいた。彼はただひたすらに毎日権を振り続けた。毎日百回の素振り、これだけは雨の日も欠かさずに続けてきた習慣である。
「お、シクロじゃないか。修行の帰りかい?」
「うん!おじさんは?」
「畑で野菜を収穫してきたところだよ。そうだ、今日はたくさん取れたから少し持ってくといい。」
「いつもありがと!」
このアーケアの村は全ての村民を合わせても十九人しかいない。だから村人同士の仲はいいし、みんな助け合って生きている。
「おかえり、シクロ。ご飯できてるわよ。」
「ただいま。マイトおじさんが野菜くれたよ。」
「あら、ありがたいわぁ。」
「じゃあ、俺汗かいたから着替えてくるね。すぐ戻ってくるから待ってて!」
そうして俺は着替えをし、駆け足でリビングへと降りて行った。いつもは母さんと二人で晩御飯を食べているのだが今日は違った。母さんと誰かの話し声が聞こえる。
「なんで父さんがいるの!?」
「そりゃお前の誕生日が明日だからだよ。明日は成人の儀でいないだろ?だから今日祝おうぜ。」
そうなのだ。うちの村では十五歳の誕生日に成人の儀を行う。実はアーケアの村には結構な歴史があって、神話の時代から祀られている石碑があるという洞窟に祈りをささげるというのを太古から続けてきたらしい。この洞窟というのがまた遠くて朝早くに出なければならないのだ。
「あぁ、そういえばお前に土産があるんだ。誕生日のプレゼントだ。」
そういって父さんは布に包まれた長いものを取り出した。
「王都で打ってもらった剣だ。ソルライト鉱石を入れてもらったから軽くて丈夫だぞ」
「まじで?!ありがとうっ!明日はこの剣持ってくよ。」
「おう。がんばれよ。じゃあ飯食うか!」
ー食後ー
自室にて
(成人の儀には危険が伴う。でも俺は今まで欠かさず鍛錬を積んできた。必ず成功させる。)
そんな思いを胸にシクロは眠りについた。そう、明日どんなことが起こるかも知らずに...