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第九話 ミランダ一家とレノン一家の事情

私はミランダ。夫のランダムと息子のレイクに娘のマリリンと隣国で暮らしていたの。

だけど、帝国と戦争になり住んで居た村が戦場になった事で、10年前から開拓者としてこの地に移住していた父を頼って従兄のレノン一家と逃げてきたの。でも、父がこの村で開拓者としての成功を収めているかどうかは来てみないとわからなかったけど、あのまま居たら戦火の巻き添えになっていたのは間違いなかったと思っている。


国境は亡命を希望する人たちで溢れていたけど、父の元に行くと言ってサルサ村の住所を告げると簡単とは言わないけど、入国検査に時間は掛からなかったわ。父がメルテナ国に居てくれたことで助けられたことに心底感謝したの。だって命の危険が去ったのよ。これからも家族みんなで暮らせて行ける喜びは経験した者しか解らないけど、この安堵感は簡単に表現できないわね。


無事に父の元に着いたのは良かったけれど、やはりそのまま世話になるには狭い家だった。だけど、父の提案はあっさりしていたわ。「よし、わしが畑を借りてやろう。付いて来い」そういうと家を出て行った。私の家族とレノンの家族は慌てて付いて行ったわ。

途中、一面の草原がいきなり広大な畑と水を張った畑が広がって来たの。初めて見る畑に驚いていたら「田んぼだ」と父が教えてくれたわ。その田んぼの横には水路と道が整備されていて驚きを隠せないままこれを整備した人の家についたの。

「みんな。挨拶をかねて顔合わせだ」と言う父が紹介をしてくれたのがノゾミさんだった。


父は簡単に私たちを紹介すると「畑をかしてやってくれ」と遠慮もなにもない感じでいうと、ノゾミさんも二つ返事で了承してくれたの。これには私もレノンも気が抜けたわ。

だけど、条件があると言われた時は何を言われるかと緊張が戻って来たけど、言われたのは自然の神を敬い、自然との共存共栄だった。田んぼのお手伝いも有ったけど、ノゾミさんから提示された内容に比べたら恩返しにもならなかった。だって、畑3町に家、納屋、厩舎付きで税は別として収穫量の1割だもん。父いわく、開墾の手間を考えればタダ同然と言われたわ。私も同じ思いだったわ。


その後、温泉の話とか森の話を聞いている内に、本当に共存共栄を大事にしていることが分かったわ。

だって、自然の神様にお供えすると、それが消えるのよ。初めての時は腰を抜かしそうだったもん。

ノゾミさんに聞いたら「この土地一帯に居る聖霊様がそれを食べるからお供え物が消えるんだ」って、さも当たり前のように言われたら、そうなんだと言うしか無いかんじだったわよ。


父にこのことを話すと知らなかったみたいで、その日から真似をしたらやはり消えたと言っていた。

その後、収穫量が増えたって喜んでいたわ。「こりゃノゾミに感謝だな」って。


不安を抱えてこの村に来たけど、夫も子供たちも元気で楽しそうに畑仕事をしてくれている。

ほんと、ノゾミさんには感謝しかないわ。



俺はレノン。村が戦場になりミランダに誘われて叔父さんを頼りに妻と3人の子供を連れてやって来た。因みに家族は妻のサリーと長男のサム。次男のサトリに愛娘のキミーと5人家族だ。


子供のころから叔父さんには甥っ子と言うよりは実の子のように可愛がってもらってて、ミランダも実の兄のように慕ってくれていた。だから移住の話を聞いた時には驚いたけど、家族の命より大事なものは無いと2つ返事で乗った。まさかこれが人生の転機になるとは夢にも思わなかった。


叔父さんに連れられて紹介されたのがノゾミさんだった。

その人は広大な土地を開拓し、水路や道路の整備には驚かされた。なにせ仕上がりレベルが高いのだ。特に水路の水汲みに使っている水車は初めて見る物だった。これで川が干上がらない限り干ばつの心配がない。


ノゾミさんと初めて会った日に、温泉を自由に使っても良いと言われ、長旅の疲れと汚れを落としたくて早々に入らせてもらっていたら、森から動物たちが入ってきた。俺たちに警戒をするでもなく、自然に。そう言えば、自然と共存共栄をお願いされていたことを思い出した。まさに言葉通りの共存がここに有った。


翌日、森に入ろうと思い、森の神様にお供え物をしたら消えた。驚いてノゾミさんに聞いたら「この森の聖霊様がそれを食べるからお供え物が消えるんだ」と教えてくれた。これが共栄なんだ。


森に入ると、道が整備されていて迷う事は無かった。感心しながら歩いていると、「こっちにキノコが在るよ」と教えて貰っているような気分になった。もしかしたら聖霊様が教えてくれてるんだろうか? その場所に行くと沢山のキノコが生えていた。もしかして、お供えのお礼に教えてくれた? 思わず「ありがとう聖霊様」と言っていた。これからもお供えをしてから森に入ろうと誓った瞬間だ。


生きてく為に自然を破壊してでも富を得ようとすることが一概に間違いだとは言わないけど、自然との共存共栄。俺自身も自然の中の一員であることを思い出させてくれた出来事だった。




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