第六話 森は宝庫。移植して果実園を作りました
リルに森の話を聞きました。広大な森の中にたくさん草花や実を付ける木が動物達の食糧になり、繁殖し過ぎた動物たちが他の動物の食糧となる。この星でも自然の摂理である食物連鎖が有った。
森の中には鉱山や不思議な洞窟も有るが、今まで人間が来たことは無かったらしい。森を抜けると海があり、波に打ち上げられた魚を食べる動物もいるとか。話を聞いて動物達が食べている草や木の実が気になり、実際に見たくなった。リルに言うと案内してくれると言う事で、森に入ることにした。
「森の聖霊様。これから森に入らせて頂きますのでよろしくお願いします」といつものようにお供えをした。これまたいつものようにお供えは消えた。
いよいよ出発と言う時に、リルは移動が速いから背に乗れと煩かったが、何が生えているのかゆっくり確認したいからと歩いて進んだ。
森を歩いていくと色々な動物たちが近寄って来てリルと話をしていた。さすが森の主である。
『リルさま。この人間さんが泉を直してくれた人なの?』
『そうだ。お前たちもお礼を言うと良い』
『泉を直してくれてありがとう。お礼にこれをあげる』と言って金色が混じった白い石をくれた。
「ありがとう」お礼を言うとさっそく鑑定をしてみた。[金とミスリルの鉱石]
はぁ? 金とミスリルの鉱石?? ミスリルは聞いた事が無いが、金は当然知っている。
『ノゾミ殿。ミスリルはかなり貴重な石だと人間たちが話していたのを聞いた事がある』とリルが教えてくれた。『それが取れる場所は元々ノゾミ殿に教えてやるつもりでいた場所だ。我等には必要がない物。ノゾミ殿が好きにすると良い』と簡単に言ってくれるが俺にはとんでもない話だな。
さらに森を進んでいくと、何処からか甘酸っぱい匂いが漂ってきた。
「リル。この匂いは何の匂いか判るか?」
フンフンと匂いを確認していたリルが『これはヤマモモの匂いだ』と教えてくれた。
「すまんが、そこに連れて行ってくれないか」と頼んでみた。
歩くこと5分。『ここだ』そこには一見100本は群生しているヤマモモの木があった。鑑定をしながら良く見ると実は付けていないが、レモンの木と桃の木。あと、山葡萄の木もあった。
「なぁ。この果物の木を根っこから少しも持ち帰っても良いか?」
『大丈夫だ。半分くらい持って行っても困らないぞ』
「いや、全部は要らないから……」
『それで、これをどうする気だ?』
「果実園を作るんだ。実を使っていろいろできるからな」
『実がなる木なら他にもあるぞ。行きたければ案内しよう』
それは次回に連れて行ってもらう事にして、間引きをするようにそれぞれ20本ほどを土魔法と空間魔法を使い抜いて持ち帰ることにした。
更に進むと足元に白い可憐な花が咲いているのを見つけた。初めて見る花だけど何か気になり鑑定をしてみた。[蕎麦の花。実は食用]おぉ~~~お持ち帰り決定! これを畑で栽培だ。これで蕎麦が食えるぞ~~。1人テンションが上がっていた。
蕎麦の花も苗ごと空間魔法で収納して、今日は家に戻ることにした。
「リル。ありがとう。すごく嬉しい物が見つかった。感謝するよ」
『そうか。喜んでくれたら我も嬉しいぞ』
「じゃ~今日は戻ろうか」
『では我の背に乗るが良い』
歩くからと断っても、どうしてもオレを乗せたくてしょうがないらしく根負けをしたオレはリルの背に乗った。リルはオレを乗せたことがよほど嬉しかったのか、かなりのスピードで森を駆け抜け、家に着いた時には立つことすらままならい程グッタリとしてしまった。
気分も落ち着き、畑に蕎麦を植えた。いきなりの植え替えで苗に負担が掛からないように、土魔法を使い、自生していた場所の土質と同じにしてみた。あとは枯れない事を願うばかりだ。
次は果物の木を植える。場所は橋を渡った川の畔に植えて行く。特に山葡萄はかなりの量を収穫したいので、光魔法を使い成長促進が出来ないかと試してみたら成功。接ぎ木で200本に増やした。
収穫が出来るようになったらこれでワインを作るつもりだ。また一つ楽しみが広がった。
植込みの作業を終え、見渡してみたら、一丁前に果実園ぽくなっていた。また森で見つけたらここに移植して行こう。そのうち市場に卸せるようになれば良いかな。
今日も一日の終わりは温泉だ。最近は俺が入っていても森の住人達が入ってくるようになった。
自然の中で自分だけの力で生きて行くことがこんなに楽しかったとはこの年になるまで気が付かなった。ここでの生活はまだ始まったばかりで、あれこれとイメージも膨らんでいく。だけどその前に
「あぁ~~ ビールが飲みたい」