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番外編4話 暑い時期には甘酒を

お久しぶりです。ノゾミです。今年はいつもより暑く、どことなく身体が重く感じています。


ここサルサ村があるメルテナ王国は一年を通して寒暖の差が小さくとても住みやすいところです。転生前に居た日本で言うと年中春から初夏と言ったところかな。


ところが今年は盛夏って感じだろうか…… とてつもなく暑い。村の長老ボルトンさんでもこんな暑さは経験した事が無いと言っていた。


村の中を歩いていてもみんなの動きが悪いレベルでなく顔色さえ悪い。しっかり水分を取って適度に休まないと熱中症の危険がありそうだ。

唯一の救いはすでに麦茶が普及していたことだ。村長に見つかった後、増産体制が敷かれ大麦畑の拡張もやらされたという悪夢に襲われたが、あの時はこんな暑さになるとは夢にも思ってなかったので不満も有ったが、今を思うと善かったのか知れない。なんたって麦茶にはミネラルも豊富で暑いときには持って来いのお茶だからだ。


だからと言って村長に先見の明が有ったかと問われたらキッパリ否定しておこう。

何故なら、村長は金の匂いしか興味が無いからだ。と俺は思っている。


そんな事より、いくら麦茶と言ってもそれで健康を維持できるわけでは無い。何かいい方法を考えないと…… あぁ~しかし暑い。今夜もざるうどんだな。


なかなかいい案が浮かばないまま村を歩いていた時だ。気が付いたら酒蔵の前に来ていた。

そして思い付いた。『甘酒』だ。確か麹で作る甘酒にはビタミンやアミノ酸などが豊富で飲む点滴と言われ、よく母さんが作っていたのを思い出した。これなら暑さバテにも効果あるんじゃないだろうか???


思い立ったが吉日。即行動。俺は酒蔵に居るサム君とニト君にお願いをして麹を貰って帰宅した。


麹だけも良いけど、今回は母さんが作っていた作り方でご飯を使った方法にしてみる。

細かいところまでは思い出せないから試行錯誤だろうが、大事なのは温度。確か50度から60度を維持することだったかな…… でもこれは温泉を使えば良いだろう。


まずは米を炊くところからだ。後から発酵しやすいようにと水を多めにしてお粥にしてみた。

粗熱を取り、50度位まで冷ましたら麹と混ぜ合わせる。後は発酵温度を保つため露店風呂に引いている温泉で湯煎にかけて7~8時間だったかな?? うろ覚えだから自信は無いけどね。

とにかくここで大事なのは60度以上になると麹菌が死滅するからそこまで温度を上げないこと。有難いことに源泉の温度は50度弱。鍋の中の発酵温度も考えたら丁度いい熱さかもしれない。


待つこと7時間。味見をしてみると仄かな麹の香りと甘みの強い美味しい甘酒が出来ていた。

しかし、このままでは甘すぎてと言うか、味が濃すぎて飲み難い。そこで水で薄めてみた。ついでに塩分も同時に補給できないかと思い少量の塩を入れてみたら味が引き締まり、甘みも引き立っていた。


「よし、これで行こう」


さっそく出来上がった全部の甘酒を水で割って塩で味を調えると村の人たちに届けるために集会場にやって来た。


「皆さん、これはこの暑さを乗り切るのに持って来いの飲み物です。ぜひ飲んでみてください」

「なんじゃこの濁ったものは……」

「これは甘酒と言うもので、甘くて美味しいですよ。それに冷たく冷やしてありますからね」


これだけ暑いと冷たい方が良いかと思い、氷で冷やしながら持ってきたのだ。

初めは変な濁り水と敬遠していた人たちも一口飲んだらその甘さと冷たさに感激していた。


「これは美味い。冷えてて暑さも忘れそうだ」

「もう一杯もらえんか」

「良いですよ。でも一人二杯までね」


ワイワイとみんなで盛り上がっていたら村長がやってきた。


「ノゾミ、今回も売れるものですか?? って、何ですかこれは……」

「甘酒です。美味しいですよ」

「名前ではありません。こんな見た目では売れないでは無いですか!」

「……」

「売れそうなのを作ってください。この村の特産品になる物をです」


これも売れるとは思うけど、黙っておこう……



そして数日後、毎日配った甲斐もあり村の人達が心なしか元気そうに見えたのは俺の独り善がりかも知れない。


ちなみに甘酒は村長の手により暑さ対策の飲み物として国中に広めら、麹が原料という事も有りククク村でも盛んに作られるようになった。


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