番外編 3話 麦茶が飲みたくて
今日もサルサ村で畑仕事に精を出していた時の事だ。急に冷たい麦茶が飲みたくなった。
日本の夏には定番のお茶だが、こちらに来てから正直忘れていたのだ。
ではなぜ思い出したのか? それは単純だ。今日は何時もより暑さを感じ喉が渇いたからだ。
あまりに単純すぎて自分で笑ってしまったほどだ。
思い立ったが吉日とばかりに乳牛の餌用に作っていた大麦を保管棟から持って来てたら、竈で乾煎りをして行く。焦げないように火は弱めでジックリ炒っていると香ばしい香りが漂ってくる。
更に炒っていると熱で膨張した大麦が膨らんでは弾けて少し焦げたような匂いがしてきた処で炒り作業を終える。後は粗熱を取ったら麦茶の出来上がりだ。
説明では簡単だが、ここまで炒るのにかなり時間が掛かった事は付け加えておきたい。
粗熱を取っている間に大きなヤカンにお湯を沸かし、沸いたところに出来立ての麦茶を入れ約5分ほど煮出し、表にある水船の最下層でヤカンごと冷やせば出来上がりだ。もちろん熱い麦茶も美味しいけど、やはり暑い日は冷たい麦茶だ。
水船で小一時間冷やしたところで、飲んでみた。
「美味い!」
香ばしい香りが鼻を抜け、麦の味を存分に楽しめる味が喉を潤してくれる。
正直、畑作業と麦茶作りから時間も経っているから身体が欲している感じは過ぎたけど、久しぶりに飲んだ麦茶は格別の物があった。
冷やした麦茶を瓶に移し、再び水船に。ヤカンに残った出し殻は畑に埋めた。
翌日、昨日と同様に暑い日となり、畑作業もキツイ日になった。
一仕事終えたところで休憩をとる。水分補給はもちろん麦茶だ。だけど、昨日作っただけ有って香りが抜けて少し苦みが口に残った。やっぱり朝沸かしてその日の内に飲み切るのが最良だなと感じた。
それから数日して今日も朝から麦茶を沸かしていた時だった。
「おっ! 良い匂いがするな」
やって来たのはボルトンさんだった。最近は娘一家が中心に田畑の仕事をしていてボルトンさん自体は時間を持て余しているらしい。羨ましい話だ。次の依頼で村を離れるときに一緒に行かないか誘ってみようかな……
「いま麦茶を沸かしているところなんだ」
「麦茶? なんだそりゃ」
「俺の故郷の飲み物さ」
「あとでわしにも飲ませてくれ」
「いいけど、今日はどうしたの?」
「暇すぎてお前の所に来たら時間が潰せるかと思ってな」
「じゃ~これから畑の水やりをするから手伝って貰えるか?」
「おう。いいとも」
2人で作業をしたせいかいつもより早く終える事が出来た。
一息つけるために家に戻り、ボルトンさんに麦茶をだした。
「おぉ~これは冷たくても美味いな。香ばしい香りに後味がスッキリしている。今日みたいな暑い日にはもってこいだ」
「だろう。だけど村長には内緒な。知られたら何でも売り出そうとするからな」
「そうね。おかげで村の収入が増えいてるから色々な事業が出来てうれしいわ。で、何が内緒なのかしら??」
声がした方をみると村長がにこやかな笑みを浮かべて立っていた。