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第四十四話 ボンボ村ふたたび

今日はボンボ村の近くで開発している漁港の整備に来ていた。船と網は用意してあるので、今は氷室と専用の保冷荷車を作っている。思いもよらぬところでリケアさんが氷結魔法を使えることが分かり、魚の出荷用に氷を大量に作ってもらうつもりだ。


氷室も専用の保冷荷車も造りは同じ。据え置くか荷台に乗せるかの違いだ。ただ、二重壁にして、間に籾殻を入れ保冷度を高める。あとは魚と氷を入れる木箱を作れば一先ず完成となる。


出来上がった保冷車を引いてリケアさんの所に行き、荷車一杯に氷を詰めてもらう。初めは嫌がったが、村の振興の為と説得して氷を作ってもらった。当然だけど代価は払った。


再び漁港に戻り氷室に氷を移す。運んでいる間ほとんど氷は解けていなかったので、氷室でも大丈夫とは思うが、確認するに越した事は無いと言う事で、一週間後に氷室の様子を見に来たが、氷は全く解けてはいなかった。


後は休憩用に小屋が必要かな?


村長とラベルさんに漁港を整備した話をして、ボンボ村に引き渡す了解を得た。もちろん断られたらサルサ村で操業することにしたけど、産業に困っているボンボ村が断るとは考えるだけ無駄な事だと思ってはいる。


久し振りにボンボ村のササリン村長と向き合い、ジャガイモクッキーとフライ菓子に人気が出て、ビースさんの所も牛を増やしバターの増産に追われていることを聞いた。


ササリン村長の話ばかり聞いていると肝心な話が出来なくなるので、無理やり話を終わらせ漁港の話を進めることにした。


「ご存知の通り、森は私が管理していますが、その森をボンボ村から約一時間程抜けた場所に漁港を作りましたが、良ければボンボ村で運営しませんか。王都まで鮮魚を運べるように専用の荷車も用意してありますが、どうですか?」


この提案に「ぜひお受けします」と即答で、今すぐ現地に視察に行きましょうと村長他、役場の職員数人で漁港を見に行くことになった。


「いつの間に森を抜ける様に道が整備されているのですか……」

「これは水車を作るための木をここから伐採して、そのまま道を整備しただけです」

「そうだったんですね。私は知りませんでした。それと道幅が有りますね」

「荷車が通れるようにしてあります」

「魔獣とか出ませんか……」

「大丈夫です。しかし、森の住人達とは仲良くしてくださいね。これは絶対です」

と注意事項も含め説明しながら先に進んでいくと、木々の隙間から海が見えて来た。


新設した漁港で行われるのは地引網漁。網の仕掛け用にと漁船3隻を用意してある。あとは漁師小屋と氷室に保冷荷車を見たササリン村長は新しい産業が出来たと感動のあまりにマシンガントークが炸裂し、治まるのに誰一人止める者は居なかった。


役場の職員数人来ていたので、早速地引網を試すことにした。船で網を沖合に引いていく。本来なら一晩置いておくのだが、今日はデモンストレーションだから1時時間程置いて引き上げることにした。

普通に引くのは大変だろうと人力による巻上機も急遽作った。


今まで漁をしていなかったからか、一時間の待ちでもかなりの魚が獲れた。それを種類ごとに仕分けをしながら木箱に詰めて行き、氷で鮮度が落ちないように冷やしていった。


網の手入れもやり方を見せせたあと片付けをして、心の中で大漁旗を振りながら村にもどることになった。



役場に戻ってきてこれからの運用法と人集めの話をすることになった。


「これは夕方に仕掛けをして朝に引き上げるのが一番ですね。そのまま王都に売りにも行けます」

「村営にして村で人を雇うと言うのはどうでしょうか?」

「許可制にして個人に任せるのが良いかと思いますが……」


喧々諤々の話し合いで当初は村営で行う事になったようだ。漁法が単一で10人以上が協力しないと出来ないからだ。漁と販売を別に分けることで大幅な雇用を見いだせると意見も一致した。


これで俺の用事も終わり帰ろうと思ったところで、ササリン村長から菜種油の採取方法を後日教えて頂ける約束はどうなったのかと聞かれた。正直、忘れていた。菜種はすでに収穫済みで後はどうやって絞り出すのか……


時間も時間だからと翌日出直すと、そうそうに水車小屋にやって来た俺は創造魔法で新たに圧縮式絞り機を増設することにした。サルサ村のしょう油の絞り機と同じだから、作るのも容易い。臼で軽く砕いてからサラシに包んで圧縮を掛けて行けば油が搾りだされてくるからそれを瓶詰めすれば良いだけだ。絞った後のカスは肥料に使えるので畑に捲けば良い。これも無駄知らずだ。


これでジャガイモクッキー以外にもジャガフライなど活用を広げ、ゆくゆくは菜種油自体も売り出したいとササリン村長。



小さい村は特筆した産業を作るのは大変なことはサルサ村も同じだったから良く判る。

まだまだ、特別開墾事業部からの依頼も減ってはいない。一つ一つ確実にこなしていくことが国の為と言われているけど、こうやって現地の人に直接感謝されるとそれだけで嬉しくなる。


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