第四十三話 パンにはジャムが付きもんだ
パン生地にバターを練り込むようになってからダントツに味が良くなり、柔らかさも増した。
これをトーストにしてジャムを付けて食べたいと思う欲求が増していった。
今回の大規模な改修も含めた新開墾が終わり俺的にはゆっくり出来る時間だ。
思い立ったが吉日とばかりに、果実園にやって来た。ここでどれをジャムにするか選ぶためだ。
ちょうどリンゴが色付いていて、甘酸っぱい香りを漂わせて自己主張をしていた。
食べ頃のリンゴを5個ほどもいで家に帰る。早々にジャムを作ろう。
リンゴの皮を剥き、適当な大きさに切って鍋に入れ、蓋をして弱火に掛ける。
しばらくするとリンゴから水分が出て湯気が立ち上りだす。そこにハチミツと砂糖を入れて水分が無くなりそうなところでレモン汁を加え火からおろす。
保存用に熱湯消毒しておいた瓶に詰めたら出来上がりだ。完全に水分を飛ばしてしまうと、冷めた時に固くなり使い難くなるので要注意だ。
出来立てのジャムは程良い酸味と甘みで、これでアップルパイでも作ったら最高だろうなと思えてしまう。パイ生地が面倒だから作らないけどね。
だけど、リンゴジャムは会心の出来だった。
これに気を良くしてしまい、再び果実園にやってくると。イチジクの桃、キウイと目についた果物を適当に持ち帰り、それらすべてをジャムにした。
どれもこれも持ち味と香りが生きてて甲乙つけがたい出来になった。
パンにつけて食べてみると止まらなくなりそうだ。どこからか自画自賛だなって声が聞こえてきそうだが、美味しい物は美味しいのだ。正直、ジャム作りにはまりそうだ。
夕飯を食べている時にふと思った。今食べている野菜でジャムは作れないだろうか……?
人参、キュウリにナスやパプリカ。タマネギにトマトにサツマイモなど、いろいろ試してみても良いかも……
思い付きのまま、試作をしてみることに。初めはサツマイモ。これはスイートポテトの緩めって感じが有って、蒸かしたイモを裏ごしして、甘みを調整しながら砂糖を加えて行く。あとは、牛乳を使いのばしていき、加熱しながら材料を馴染ませレモン汁を加えたら出来上がり。
味は予想通り。サツマイモ自体が甘いので砂糖は入れなくても良かったかもと思いもしたが、出来栄えは良かった。
次にパプリカを試してみた。パプリカをみじん切りにして、オイルで軽く炒めたら少量の水と砂糖を加えて煮詰めて出来上がり。同じような工程で家にあった野菜で作ってみた。
以外に美味しかったのはナスだ。あと、色々な料理にも使えそうだった。特に玉ねぎはお勧め。
作りながら試食はしていた物の、実際にパンに付けて食べては居なかったことから、明日の朝は大試食大会にしようと楽しみにしていた。
翌朝、いよいよ野菜ジャムの大試食会だ。キッチンのテーブルに7種類の野菜ジャムを並べ色合いの赤や黄色にオレンジにと彩も華やか。
「のぞみさ~~ん。おはようございます」
あの声は……
「勝手に入らせてもらいますよ~~~」
この無遠慮……ミランダさんだ
「あら、綺麗な色の瓶が並んでいるけど、これは……ジャム?」
キッチンに顔を出したのはやっぱりミランダさんだった。
「そうだよ。野菜で作ったんだ」
「野菜で?」
言うが早いか、俺のパンを取り上げ食べ始めている。うん。やっぱり女性陣に押されている気がしていたのは間違いなかった……。
「これは何の野菜」と聞きながらも感想を口にしていくミランダさんに呆気にとられている俺。
そこに、ラベルさんと村長がやって来て。試食会?に参加。
「これも売れそうですなぁ~」と喜ぶ村長に、ラベルさんの「陛下も保護区で開発される新しい物に期待を寄せられていますからね」とプレッシャーをかけて来た。
俺が食べたかっただけなんだけど……と心の中で呟いておいた。
ミランダさんが「集会場では狭くなってきたので、作業棟を建てましょう」とラベルさんに提案していた。「それは良いですね。ノゾミ殿、よろしくお願いします」
ミランダさんは何しに来たのか要件を言わないまま、野菜ジャムの試食会?も終わり、帰って行った。
俺はと言うと。新たにジャム工房を立てるため、森で木を調達することになった……。