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第三十九話 まだ隠し玉が有るでしょう!

しょう油の試食は好評だった。逆に、今まで黙っていたことを怒られてしまった。


「しょう油と言うんですか? 魚醤より食べやすいです」「臭くないわよね。美味しいわ」とゼノール夫妻が言えば、フロンさんや奥さんのリーナさんも絶賛してくれた。


作り方を聞かれたので説明して居たら、サム君とニト君が「お酒作りに似ているんですね」「僕たちにも作らせてもらえませんか」と言い出した。


村長も「またまた特産品が増えましたな」と大喜びをしている……って、毎回だけど何で居るの? 役場の仕事が有るでしょうが……


ミランダさんとメリーゼさんには「これは色々な料理にも使えますよね」「どんなのがありますか?」と詰め寄られて、葉野菜のお浸しと昆布出汁を使った澄まし汁を作って出した。


ちなみに昆布は定置網に引っ掛かって来たものを乾燥させておいたものだよ。


「茹でた野菜に掛けただけなのに美味しいわ」

「スープもこれまた絶品。いつものスープとは全く違う」

「香りもいいし、具材が少ないからお腹にも重くないです」


こんなに簡単に受け入れられるとは思っていなかったので、逆に俺が驚いたけど日本人の心の味を分かって貰えたことは嬉しかった。


「ではしょう油用に小麦を割り振るぞ」とボルトンさんが仕切りだし、みんなが賛成していた。


ボルトンさんから大豆の在庫と作付け状況を聞かれ、素直に教えたらあと5町歩を開墾し、大豆を作るように厳命された……。その横でサム君とニト君が「麹~~麹~~」と言いながらはしゃいでる

どんだけ麹好きなんだよ……と心の中で突っ込んだ。


ボルトンさんに味噌の話もすると、ミランダさんが「なに?まだ隠し玉持ってんの!」と責め寄られ「詳しい話を聞かせない」となんだか取り調べを受けている気分になった。


メルーサの街や王都ではミーソの名で出回っているが、流通量が少ないので説明だけでは分かり難いだろうと思い、家の冷蔵庫にある味噌を持って来て野菜に付けて試食してもらった。


「匂いはしょう油に似てるわね」

「ちょっと匂いが気になるわね」

「味は少し辛いけど野菜の味が引き立つわ」


女性陣の忌憚のない感想が炸裂したけど、スコットさんが「王都で売れているなら作ってみる価値はあるんじゃないですか?」と切り出したのを切っ掛けに喧々諤々と意見交換されて最終的に村長の「試作を作りましょう……」って、まだ居たのか。役場の仕事はどうした??と再度心の中で突っ込んで、みんなも同意したことで試作に入ることになった。


「ところで、他にこれから考えていることは無いの?」とミランダさんに聞かれ、「そうよ。原料になるのを作らないといけないから事前に教えて欲しいわよね」とメリーゼさん。「また麹のをお願いします」とサム君とニト君の迫力に味醂かな……って何も考えずに呟いていた。


「やっぱり有るんじゃないの」と呆れられながらも、どんなものかを聞かれ、もち米で作ったお酒とだけ答えたが、今度はレノンさんからもち米とは何か?と聞かれ、しどろもどろの説明となりボルトンさんの助け舟?「それも作ろう」の一言でもち米用の田んぼも開墾することになった。


酒から始まった特産品造りはすべて麹で作る物でサム君とニト君は大喜びをしていた。

子供なのにホント……麹しか頭に無いのかと少し不安を感じてしまった。



最終的には、今ある大豆でしょう油を作り、本格的な仕込みが出来るようになってから味噌・味醂と確実に販売ルートに乗せてから次を作って行くことで話を纏め、しょう油の試食会は終わりを告げた。


結局、当初5町の大豆畑を増やす話が、味噌も作ることから15町に増え味醂を見据えてもち米用の田んぼも10町を追加で開墾することになり、何時まで経っても開拓者から卒業できそうにないことを改めて痛感していた。



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