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第三十五話 サルサ村に帰ろうか

ボンボ村を離れる朝、ビースさんの家によってバターを分けてもらうと寄った。


「おぉ~ ノゾミか。大変なことになったぞ!」

「どうしたんです?」

「村長からバターの注文が大量に入ってよ、昨日作ったやつはみんな持ってかれちまった」

「えぇ~ そうなんですか! 俺も欲しかったのに…… 残念」

「だけどよう~ 一体なにがどうなってるんだ?」


ビースさんに俺が村から依頼された内容と、その中でバターを使ったお菓子を提案したことを話し、バターと卵はここで手に入ると教えておいた事も説明した。


「そうだったのか……まぁよ~ こいつ達の乳が無駄な物で無くこうして役に立ってくれることが俺は嬉しい。おまけに販路まで作ってくれたたんだ。お前には感謝するぞ。ありがとうな」

「いや、俺がバターを欲しかっただけだし、販路が出来たのはホントに偶然だから……」

「何かお礼をしたいけど、なにもやれる物が無くて申し訳ないけど、良ければニワトリを貰ってくれ」

と、ニワトリを番で2組も頂いた。上手く行けば産みたての卵が食べられそうだ。ありがとう。



お別れのあいさつにと役場に寄ったら、またまたササリン村長に抱き着かれ、今回のお礼と報酬だと言って金貨を渡された。村長の話がマシンガントークに発展する前にお暇をし、ボンボ村を後にした。



王都の街門で検問待ちをしていたら役人らしき2人がやって来て「タカナシノゾミ殿ですね。国王陛下がお待ちです。ご同行を願います」と訳も分からず王宮に連れて来られ、今まさに陛下の前に来ている。


「先日のククク村と言い、此度のボルボ村と言いご苦労であった」

「ありがとうございます」

「そちの働きで村が豊かになりそうだ。それに伴いそこで暮らす者が豊かになれば国も豊かになる。聞く処によると、この後も予定が組まれているとか。引き続きそちの力を貸してやって欲しい」

「はぁ……」

「浮かぬ返事じゃな。何かあったか?」

「いえ……」

「何かあるなら申してみよ。遠慮はいらん」

「はい。でしたら……」


俺に来る依頼の情報が中途半端すぎて、事前準備がまったく出来ない事や、今回はまだ近いから何とか出来たが、これからサルサ村から遠い場所だと即座に対応が出来ない事もあることなどを伝え、出来れば一度下見をした後に日程等を相談したいと希望をだした。


「分かった。担当部署に申し付けて置く。苦労を掛けるが国の発展のためじゃ。よろしく頼むぞ」

「出来る限りは……」


思いも依らぬ陛下との謁見も終わり、これでサルサ村に帰れると安心したのも束の間で、ダストエアー男爵と名乗る人が声を掛けて来た。


「貴殿がノゾミ殿か。私が治めている領地内にサルサ村とククク村も含まれておる。言わば私が領主だ。そなたの作った日本酒と乾燥うどんには私も感動を覚えた。陛下の保護区も我が領土に有った事は私にとっても誉でもある。そなたのこれまでの働きには感謝する。そしてその功績に報いたいと思っている。そなたも我が領民だ。なにか有った時には力になろう。どんな些細な事でも良い、助けが欲しい時は言いに来るが良い。話はそれだけだ」

「ありがとうございます。早速ですが、お願いしたいことがあります。聞いて頂けないでしょうか」


折角のお声掛かりだから俺は遠慮もせずに農耕用の牛と搾乳用の牛を買いたいから業者を紹介して欲しいとお願をしたら、10頭ずつ褒美として貰えることになった。なんと太っ腹な領主様だ。

断る理由も無いので喜んで受け取ることにした。これで少しは田畑の作業が楽になるし、バターも作れる。バンバンザイだね。


気分よく城を出ようとした時に、たまたま登城していたラベルさんに見つかり、特別開墾事業部とかいう部屋に連れて来られ、ここに寄せられた依頼の多さにウンザリしながらもこれからの予定を聞かされたのであった。出来たらもう少し間引いて欲しい。でないと俺の身体が持ちそうにないと不安を感じてしまった……。



なんだかんだと王宮でも有ったが、やっとサルサ村の自宅にたどり着いた時には体力も気力も疲れ果てて何かする気も無くなっていた。

そう、こういう時はやはり温泉にゆっくり入って英気を養うのが一番と露天風呂に来たら、まだ20代のゼノール夫妻が仲睦まじく入っていたので、思わず遠慮してしまった。ってか、あの雰囲気じゃとてもじゃないが「お邪魔しても良いですか」って入って行く勇気はとてもじゃないが俺には無い。


だけど、遠巻きにレッドや森の住人達も入ろうかどうしようか悩んで居るように見えたのは可笑しかった。


2人が上がったことを確認して、1人温泉に浸かっているとレッドや森の住人達も入って来た。

『ノゾミ殿。お帰りでしたか』レッドが話しかけてきた。

「また直ぐに呼び出されそうだけどね」

『たまには森にも来てくださいよ。森も子供たちも寂しがっていますから』

「分かったよ。明日にでも行くとしよう」

『みんな喜びます』


こんな他愛もない会話だけど、家に帰って来たと実感する。次は何処に行かされるのか……

それまではゆっくりしておこう。


あっ! ニワトリ小屋をつくらなきゃ。忘れてた~~!



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