第三十三話 マルサ村で水路を作る
森の聖霊リビと水の精霊リハンの協力をえて、川の水量が増え、水位も上がった。
これで水車も回るし、揚水も出来るようになった。
揚水用の水車を作ると言うことは水車小屋も作ると言う事で、そこに繋がる道も居る。
結局、水路だけでなく、道路整備も必要でその分の畑の面積が減るから同程度の畑を新規開墾しないと村にとっては減収になってしまう。やっぱり水路だけとは行かないようだ。
水車は極力人里に近いところに設け、道路の距離を短くする。水路は畑を三等分にしてその境に作り、余分な水は川に戻すようにイメージを組み立てた。新規で開拓する畑は森に近いところに設ける。
リビから森がサルサの森に繋がっていると聞いたので、森の整備を兼ねて木を間引き、腐葉土を採取した。この時に出る石は当然、水路や道路の整備に使う。
揚水水車と水車小屋にはかなりの木が必要になるので、なるべく俺が管理している森に近いところから伐採してきた。正直、森を抜けた方がサルサ村にも近いように感じた。
ついでに、せっかく手入れをしたのだからと不審者の侵入防止結界の範囲も広げておいた。
伐採を終えて今日はそのまま家に帰り、伐採してきた木を風魔法と火魔法を使い乾燥させ、空間にしまった。
翌日マルサ村に戻ると、村長が心配して待ってくれていた。
「ノゾミさん。無事でしたか。昨日お帰りになられなかったから心配していたんですよ」
そうだ。昨日はここに戻らないことを伝えて無かったことを思い出し、俺は素直に謝った。
水車小屋の予定地に来た俺は土手から川の水面までの高さと、水深を計り水車の大きさを決め、それに合わせて創造魔法で木を加工していく。今回は見晴らし台も設けるけど、全体像として過去に作っているし、現物も見ているからイメージは直ぐに出来て加工にはそれほど時間は掛からなかった。水車小屋もサルサ村のをイメージして作ってみたから轢き臼と杵つき臼の2種を切り替えて使えるようにした。
道路は村長と相談して水車小屋から役場までと集積所までを繋ぐことになった。
今回は畑の新規開墾も面積が少なかったので、出た石が殆ど無いに等しかったから森の整備で出た石を使い何とか補うことができたけど、水路の整備で使える石が無い。さて、どうしよう……
暫らく考え込んでいるとリルが声を掛けて来た『ノゾミ殿。我が石を取れるところに案内しよう』
そう言えばリルはこの森の主だったんだ。時期森の主候補のレッドに任せきりだったので忘れていたよ。
リルに乗せられて連れて来られたのは落石でも有ったのか、大きな石がゴロゴロした場所だった。
ひたすら空間に石を放り込むと再びマルサ村に戻り、採って来た石を砕きながら水路の整備を進めて行った。
作業をしながら思った事は、今回はリルが治めている森が有ったから良かったけど、遠くの知らない町や村に行って、材料の調達が出来ない時はどうしたらいいのか、ラベルさんと相談する必要があるな……。
マルサ村で作業を始めて一週間。水路の整備も完成して通水試験を残すところになった。
水車小屋の見晴らし台から、水路に不具合が無いか確認して見る。流れが滞ったり溢れたりしたところを見つけては修正して、余分な水がちゃんと川に戻った事を確認が出来たところですべての工程が終了した。
「村長さん。これで依頼された内容はすべて終わりました」
「ありがとうございます。道路や水路で減った分の畑も補完までして貰えるなんて思いもしませんでした」
「いえいえ、作付面積が減ったらその分減収になりますから。勝手にしたまでで……」
「ホントに助かりました。そうだ。これを受け取ってください。国から言われている分だけで恐縮ですが……」
村長が渡してきた袋の中には金貨20枚が入っていた。
「これは?」
「今回の報酬です。ノゾミ殿に直接渡すようにとのお達しでして……」
「……初めて聞きました」
「公共の事業ですからね、無報酬ではさせられませんよ」
そう言われてありがたく報酬を頂くことにした。
村を離れる時、村長に自然に生きる精霊様達へ感謝を込めてお供えをすることをお願いしておいた。これだけは忘れるわけにはいかないからな。
サルサ村に戻るとラベルさんが居たので報酬の話を聞いた。ラベルさん曰く。整備した村が豊作になれば税収も上がる、税収が上がれば国が潤うということで、この開墾事業で国が儲けるより、しっかり報酬を出して国中を回って貰う方が利益も大きいと判断したらしい。だから村からの報酬は直接俺に渡すことになっていると聞かされた。
あと、整備に必要な材料に関しても聞いたら、王宮宛てに請求書を回せば良いとの事。
出来るだけ地元の業者を使ってほしいと逆に頼まれた。
「そうそう。10日程休んだら今度は北にあるボンボ村に行って来て下さい。依頼された内容は特産品の開発だそうです。主となる産物はジャガイモだそうで、何か考えて置いてくださいね」
こうして次の村へ出向くのだった。




