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第二十七話 隣村から相談を受けました

サルサ村産の日本酒を売り出してから酒精の強さと味に、ジワジワとその話題が広がって行った。

村内で唯一の販売店には近隣の村や町から客が押し寄せていて、店主はもっと高く売ろうと言うが、それでは広く庶民に広がらないからと初めに決めた販売価格を維持してもらっているが、行商の商人も売れ行きが良いからと何度も買い付けに来ていた事で在庫も薄くなってきていた。


村長から増産が出来ないのかと言われたが、コメの在庫を見ても初回の半量程しか出来ない。

みんなと相談した結果、自己消費分を少し回してなんとか2000本分を作ることになった。


前回は俺が中心になって作ったが、以外にもレノンさん家の長男サム君とフロンさん家の長男ニト君が杜氏の片鱗を見せていたので「子供に任せて大丈夫か?」という心配の声もあったが、素質を伸ばすことは早い方が良いと説得をして二人に任せてみることになった。


俺が主導した前回はちょくちょく時戻りの魔法を使っていたが、二人に任せてからはソレをほとんど使っていない。どちらかというと人手が揃うまで時止まりを使っている。さすがに重労働は子供だけでは無理だからね。


出来上がった酒は味も香りも前回を超越していた。試飲した大人たちもビックリして、レノンさんやフロンさんなんかは自分の子供だけあって喜びもひとしおだったらしく目に涙を滲ませていたよ。

やはりサム君とニト君には杜氏の素質が有ったようだ。次回も二人に任せて、さらに自信を付けてもらうことにしよう。



サルサ村では日本酒特需の賑わいが落ち着いた頃、新しく仲間に加わったゼノールさんからある提案があった。

「この国は年間通して気温も平均しているし、特に米の栽培時期に拘りがないのなら、種もみも有るのだから使っていなかった田んぼで今から米を作ってはどうか」と言った。たしかにまだ40町の田んぼは使ってないから土も栄養豊富だ。みんなもこの提案に同意したことも有り、早々に米作りに入った。



そんなある日、村長から呼び出しがあり、村役場の村長室にやって来た。

そこで初めて紹介されたのが隣村の村長さんだった。


「はじめまして。ククク村の村長でクダン・カーベルと申します」

「タカナシノゾミです。よろしくお願いします」

「実は、ノゾミ殿にはクダンの力になってやって欲しくて来てもらったんよ」

「クダン村長のお力に…ですか……? 私にできる事ですか」

「私に。でなく、ノゾミ殿しか出来ない事だ」


ククク村の村長さんの話では、サルサ村と同じように開拓を進めているが、思うようには進まず、村民の頑張りに応えたくても難しい状況で、既に離村していく家も出て来ているそうで、何としても生活を安定させて、村からの流出を防ぐため俺に協力をして欲しいと言う事だった。


「それで、俺は何をすればいいのでしょうか?」

「我が村でもこちらで作っている日本酒を作らせてください。貴重な新産業で独占したいかもしれませんが、そこを何とかお願いします」

「わかりました。良いですよ」

「良いんですか? そんな簡単におっしゃって……」


どうせサルサ村だけでは賄いきれないから作ってくれる所が増えれば供給が増える分、値段も下がる。下がれば庶民が買いやすくなる。良い事ずくめだからな。俺は早々にククク村を視察に行った。


ククク村の広大な平野に海が面していたことから、サトウキビの栽培と塩田の開拓で塩作りを提案した。砂糖も塩も近くで作れたら安く手に入ることが出来るからね。


まだ未開懇の地に着くと早々に聖霊様にお供えをして開懇のお許しを願ったところお供えが消えた。

ここにも聖霊様が居るんだと思ったら声が聞こえて来た。


『お供えを頂きありがとうございます。おいらはこの地の精霊でドンって言うんだ。よろしくね』

「俺はノゾミ。丁寧な挨拶を頂きありがとうございます」

『えぇ~あなたがノゾミ。カウス様からお話は聞いています。いつもお供えをくれるって』

「カウスを知ってるの?」

『はい。カウス様はおいらより位が高い聖霊様なんだよ』

「そうなんだね。これからここに田んぼと畑を作りたいんだけど、良いかな?」

『おいらにもお菓子とかくれるなら協力するよ』

「わかりました。これからよろしくお願いします」


精霊さまに挨拶すると持って来たお菓子を追加で供えた。


「い…今のは何ですか。供えたものが消えたんですが……」


そばに居た村長が消えたお供えを見て驚いていたから、精霊様の事を教えてあげた。


「この大地にも精霊様がいて守ってくれているようなので、毎回作業の前にお供えをして協力をお願いすると良いですよ。サルサ村でもやっていて、収穫量が上がっています」

「そうなんですか。これからククク村でも奨励していきます」


それから村をもう一度案内してもらい、川の位置も確認してその日は家に帰った。


翌日もククク村の村長室に来た。俺が纏めた開拓の条件と開拓案を説明するためだ。


俺が提示した提案と条件は田んぼ100町分、畑も100町分の開墾と酒蔵の建築とそれに付帯する道具の提供。それと米作りと酒造りの技術指導。また、見返りには国からの課税が始まるまでの10年間、この報酬として収益の2割をサルサ村に納める事とし、サトウキビ畑と塩田の整備は無報酬で引き受けることで合意した。



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