第二十四話 今年も来ました稲の刈り入れが……
米を作るようになって4年目。黄金色した稲の穂が頭を垂れている。もう直ぐ刈り入れだ。年々増える収穫量に喜びは隠せない。しかし、ここで一つ問題が有る。今まで田植えから刈取り、乾燥まで魔法でやっていたけど、今回からは住民全員で作業をして貰う事になっている。しかも俺が居なくなった時のことを考えると、ちゃんとしたやり方を覚えて欲しい気持ちもある。やっぱ手作業かな……。
集会場にみんなを集めて、刈り取りの説明会を行った。みんな初めての経験だから真剣に聞いている。
刈取りを始める前に稲架作りだ。刈った稲を束ね、これに掛けて干すためだ。その後、本格的に刈り取りをして行く。多分、一日では終わらないので一町だけみんなで刈り取りをして残りは魔法で刈り、束ねて干していくのは人力でやることにした。
役割としては男組で稲刈り。女組で運搬・稲架掛け。子供たちにも運搬をお願いした。あとは全員で稲架掛けだ。
説明も終わったところで稲架作り。リルに教えて貰った竹の群生地から切り出して置いた竹を紐で縛り組み立てていく。正直、ネットで仕入れた知識だから上手く出来ているかは定かではない。
いよいよ今日は稲刈りだ。ミスリルの鉱石から魔法で作った鎌を男組に配って、作業の見本を見せる。
稲の下から10センチほどの所で切り取り、両手で一掴み位を藁で縛る。それを稲架に掛けて行く。
では、作業開始!
畑仕事には慣れてるみんなも田んぼ仕事は初めての経験。戸惑いながらも刈っていく。
俺は1人、魔法で稲を刈って行きながら稲を束ねていく。向うは人が多いからと、メリゼさんが俺の後に着いて稲架掛けをしてくれた。
昼になり、去年の米で作ったおにぎりを皆で食べた。
「これが今刈っている米ですか」
「ほんのり甘くておいしい」
「初めて食べますが、癖になりますね」
「新米の炊きたてはもっと美味しいですよ。その時はまたパーティーをしましょう」
昼休憩も終え、再び作業に入る。結局、慣れない作業に苦戦しつつも夕方前には刈り取りの作業も終わったようだ。
俺は残りをすべて魔法で行い、稲架掛けだけは手作業でやった。あとは二週間ほど干したら出来上がりだ。っていってもまだ脱穀作業が有るけどね……。
「いやぁ~ 一日でこんなに腰に負担がくるんですね」
「明日は筋肉痛になりそうだ」
うん。おれも初めての時は翌日動けなかったよ。風魔法が使える様になって楽になったけどね。
さて、脱穀はどうしようか……。これも魔法で処理をしてたからネットで調べた。
脱穀機か……。ネットの写真で見つけた千歯抜き(せんばこき)を真似て魔法で作る。ほんと創造魔法さまさまである。これが使えなかったらここで生きていけなかったろう。後必要なのは……
そろそろ稲も乾いた頃。天気も快晴、脱穀日より。田んぼに三畳程のゴザを引いて脱穀機を置いた。
歯の隙間に稲を掛け、穂を落としていく。それが終わったら籾の選別だ。これもネットを参考に唐箕を作ってみた。これは風で藁くずと不良米・良い米とを選別してくれる優れものだ。
昔の人は大変な作業を幾度となく繰り返して米作りをしていたんだなと改めて感じる。そりゃお婆ちゃんが「米は大事に食え」って言うはずだ。自分でやって初めて分かったよ。
みんなが作業をお願いして、俺は新米を持って水車小屋にやって来た。ここで精米をするためだ。
作業が終わるころまでに美味しい新米でここまでの苦労をねぎらい、収穫の喜びを分かち合おうという思いで一杯だった。




