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第二十二話 ラベルさんに森と海を案内する

歓迎会の翌日、ラベルさんを森と海を案内することにした。大まかでも村と森を知って欲しいからだ。


何時ものように聖霊様達にお供えをして、森に入る前にも森の聖霊様にお供えをする。お供えが消えるのを見守ってから森に入る。

「この石畳もノゾミ殿が整備されたのですか?」

「そうです。聖霊様のお手伝いも頂きながらですけどね」

「聖霊様が……。しかし荷車が通れる位の広さはありますよね」

森の中でも見る物すべてにラベルさんは驚いていた。

「森に入った時から感じたのですが、いやに綺麗ですよね。まるで手入れをしているかのようです」

「もちろんしています。と言いたいところですが、森の落ち葉や腐葉土と化した所を田畑の肥料に使ったことで、結果的に手入れをしたようになりました。それに、キノコとか薬草なども育ちが良くなるというオマケもつきました」

「なるほど。ノゾミ殿は森と共存共栄と言ってましたよね。こういう事ですか」

「それも一つです。ラベルさんは人間だけが特別とお思いですか?」

「はい。そう教えられ今日まで来ました」


俺は人間の都合で追いやられた動物は何処で生きて行けばいいのか? 資材として使える木になるまでに最低でも50年~60年掛かるのに、乱伐したらどうなるのか? を聞いてみたが答えは「考えてみた事も無かった」と言ったきり黙り込んでいだ。


動物たちも自分たちの居場所を守るために、食料を確保するために体を張って守るよ。俺たちと同じさ。力が強ければ何でも通せると思うのは人のエゴ。動物たちは弱いのを守りながらも天敵から身を守っている。食事だって子供から。決してお零れを食べさせている訳でない。自然の中で生きるって事は、それだけに生きる力と知恵を養わないと即死に繋がっていることも話してみた。


俺がココに来た初めの頃は食べ物が無くて、森の入り口辺りで食べ物を探そうとしたんだ。安全を祈願する気持ちもあってお供え物をしたんだ。手持ちのおやつ程度の物だったけどね。そしたら毎日何がしかの食べ物が見つかった。動物達も襲ってこなかった。リルに後から聞かされたんだけど、森の聖霊様から森の住人に認められていたと。だから俺が住人達に危害を加えなかったから住人達も俺を襲ってこなかったらしいんだ。結局、森の恵みを動物達と分け合っていたんだよね。


それに気が付いた時「あぁ~俺は自然に生かされているんだなって」実感したんだ。だから聖霊様や森の住人たちと共にお互いに存在を認め合って、共に生きていく事がココで生きていくために必要な事だって思えました。だから、村の人たちにも同じ思いで居て欲しいと願いお願いをしたんですよ。


でもね。先日王都に行った時も感じたんです。この村には無い色々な物がありました。立派な建物や便利な魔道具。それに美味しい食べ物。加工は確かに人がやっていますが、材料は自然の中で育まれた物を使っていますよね。山から切り出した石。森から採取した薬草。農業も家畜も自然の力を借りています。だから都会とか田舎とか関係なく、人は自然の中に有り、生かされているんだと。


この星、この宇宙の構成員の1人だと言う事。それは動物たちも同じなんです。そんなこと当たり前と思われるかも知れないけど、当たり前を当たり前で終わらすからしっぺ返しを食らうんです。当たり前のことを当たり前で居られることに感謝しないといけないと思っています。偉そうなことを言っていますが、サルサ村ではこれを大事にして行きたいんです。


すいません。熱く語りすぎました。でもこれが俺のを根底から支えてくれている大事な理念なんです。


ラベルさんは黙って聞いていてくれた。



森を抜けると海に出る。ここではサトウキビ畑と見せかけの塩田を案内した。なにせ魔法で抽出しているからね。でも人目を眩ますには大事な施設だ。


「凄いですね。塩も作っているんですね。このサトウキビと言うのは何ですか?」

「これの樹液から砂糖を作るんです」

「これから砂糖ですか……」


そうだった……この国では糖樹っていう木の樹液から砂糖を作るのだけど、採れる量が少ないので砂糖は貴重品になっていた。


「このサトウキビ一本から糖樹10本分の樹液と同じくらいの砂糖が作れるんです」

「こんなに細くて……?」


手近のサトウキビを切って「齧ってみてください」と差し出した。


「甘いですね。だけど、これで糖樹10本とは思えませんね」

「これを細かく砕いてから絞ると不思議なほど蜜が出てくるんです」


その後、定置網漁の漁場にも案内をした。

 

「ここは漁場。この網を引っ張ると魚が居ます。小さいのは逃がし、大きいのを食べます」

「ほんとうにこの森は豊かなんですね」

「そうです。だから未開の内に守れる環境が欲しかったんです。聖霊様が居るこの森を」

「わかりました。正直、私は監視役を命ぜられたとき面白くありませんでした。実績を作り地位を上げることが全てと思っていたからです。でも今の話でなぜ殿下が私をココに派遣したのか。少し見えてきました。私も監視役でなく、一村人として頑張ってみます」


そう話すラベルさんの雰囲気が心なしか優しくなった気がした。


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