第二十話 第二王子の側近が村民になりました
サルサ村に帰った翌日。久しぶりに聖霊様達に朝のお供えをした。
『ノゾミお帰り~』
『ノゾミが居なくて寂しかったよ~』
『ノゾミ。また遊べるね』
聖霊様の嬉しそうな声が聞こえて来た。
「はい。ただいまです。こちらこそまたお願いしますね」
お供えが無くなったのを確認してから昨日移住してきた三家族の家を建てようと準備を始めた。
全田畑をみんな一緒に作業をすることになったので、ミランダさんとレノンさんの家や納屋と厩舎も移動させて、5軒の家を開墾地の中心近くに集め、その横に共同の納屋と厩舎を配置することにした。
木を創造魔法でそれぞれの用途に合わせて製材したら。あとは現地に持って行って組み立てるだけだ。すでに2軒作っているのでイメージは出来ている。
魔法で製材をしていたら森からレッドがやって来てリルと話をしていた。来たついでで申し訳ないけど、リルにもスライムのラムちゃんを紹介することにした。
「レッド、ただいま。リルと話しているところで悪いけど、新しい仲間を紹介してもいいかな」
『ノゾミ殿、お帰りなさい。新しい仲間ですか?』
「スライムのラムちゃんです。まだ生まれて半年のスライムだから迷惑を掛ける事も有るけど、仲良くしてやってほしいな」
『はじめまして。スライム族の長の末っ子でラムちゃんです。よろしくです』
『俺はレッド。狼族だ。次期森の主の候補だ。ようこそサルサの森に。歓迎するぞ』
「森の住人達にも伝えておいてね」
『承知しました』
製材も終わりいよいよ組み立て作業だ。これもイメージ通りに進んでお昼過ぎには3軒とも出来上がった。それとみんなが集まって話が出来る場所が欲しかったら納屋を兼ねた集会所も作ってみた。
作業が一段落したころに村長が一人の青年を連れて来た。
「私は第二王子側近でフルール・ラベルと言います。殿下よりこの地に滞在して警護の傍らノゾミさんの指示の元、お手伝いをするように言いつかり、こちらに参らせて頂きました。宜しくお願い致します」
「えっ、滞在ってここに住むって事ですか?」
「はい。その通りです。こちらに殿下からお預かりしたノゾミ様宛ての親書がございます」
そこには私自身が出向くことが出来ないので、一番信頼をしている側近を俺の補佐として派遣するので護衛と開拓の手伝いをさせて欲しいと書かれてあった。
「しかし道の整備と言い、水路の整備と言い凄いですね。ここまで出来ている開墾地は初めて見ました」
「全部ノゾミが一人で作ったものだ」
ボルトンさんがそう言うとにラベルさんがさらに驚いていた。
「ノゾミの家の横に有る物を見たら更に驚くぞ」
「えっ、何があるんですか?」
「見てからのお楽しみだな」
「はぁ……」
「ところで、住む処はどうざれますか?」
「申し訳ないが、しばらくノゾミ殿の所に泊めてはくれないだろうか……」
やっぱそうなるよね…… また一軒作るか……
気持ちを切り替えて、作ったばかりの集会場にみんなを集めて、恒例?の聖霊様のお供えと森へ入る時のお供え。森の住人達との共存共栄で魔獣以外は狩ってはいけないと、露天風呂の話も忘れずに説明をした。3家族はどうやら昨夜の内にミランダさんやレノンさんから聞いていたらしく、すでに今朝お供えしたのが消えてビックリしたと言っていた。
ラベルさんからは陛下の私有地。特に特別保護区で働く者は陛下の特別使用人と位置づけられ、本来なら年俸が支給されるのだが、この地で収穫された農産物全量をそのまま報酬とすることで、実質免税地となり、保護区以外は従来通りの課税率となったことが報告されたことで、分配をどうするのかをみんなで決めないといけなくなった。
あと、サルサの森は陛下より全権をノゾミ殿に一任されていることもラベルさんから伝えられた。
一通りの事務連絡が終わった事で解散を掛けたが、なぜかラベルさんの他にも全員が俺の家について来ていた。
「……水車で水を汲み上げているなんて画期的すぎです。こちらの建物は何ですか」
「こちらは製粉所です。穀物の脱穀と製粉を水車の力でする処です」
「これも水車でですか……」
「ほら。さらに驚いたろ」
ラベルさんの表情を見てボルトンさんが何気に楽しそうだった。
せっかく全員が来ているから、「森の住人達と仲良く入ってね」と露天風呂の場所も教えて置いた。
もう見る物全部が驚きなのか、ラベルさんはあちらこちらと見て回っていて、特に果実園は好きな果物でも在ったのだろうか? この実を食べても良いかと聞いて来たので、良いよと言うと捥ぎたては美味いと言いながら齧り付いていた。それを見ていた子供たちも好きな果物を捥いで食べていたね。
それが凄く微笑ましくて、俺もなんか嬉しい気持ちになっちゃった。だからこういう時ってやっぱりバーベキューパーティだよね。ちょうど仕込んでいたワインも熟成されて飲み始めても良いころに来ているから丁度いい。女性陣には食材の準備を頼んで、男性陣には竈と火の準備をお願いして、俺はワインの準備をするために倉庫へと向かったのであった。