第十八話 王宮に呼ばれました
王都で色々な店を回った。時々よろず屋の人たちとも一緒に行動したりもした。念願のサルサ村のみんなにもお土産を買う事も出来た。
プラムさんから「私が戻るまで王都からでないように」と言われていたことも有り、予定よりも大幅に滞在している。いつになったら戻って来るのだろう……。
あれから10日はゆうに過ぎた頃、プラムさんが戻ってきた。しかもとんでもないお土産を持って。
「ノゾミさん。明日ですが私と一緒に王宮に行ってもらえませんか」
「お城にですか……」
「はい。国王陛下よりお連れして来いとのお言葉ですので」
「国王陛下の命では断れないですよね……リルも同席させて良いですかね」
「そのように根回しをしておこう」
それから事の顛末をプラムさんから聞いて、俺が付けられていたのは鉱物を奪うつもりだったことを知った、都会は恐いところであると思い知らされたことをいうとよろず屋の面々に笑われてしまった。
「たまたま悪い商人に引っ掛かったんだよ」
「お蔭で、不正が正された。ありがとう」
ケンモくんとプラムさんに気を使わせてしまった……。
翌日、俺とリルはプラムさんと一緒に王宮に来ていた。外から見ても中に入ってからもその造りや装飾は、それはそれは見事で庶民の俺にはその素晴らしさをどう表現して良いのか……言葉すら出てこなかった。いや知らなかった。とにかくすべてに圧倒され心臓が激しく動いていたのを感じていた。
謁見の間には重臣たちが両脇に並んでいて、そこに通された俺も陛下が来るのを待っていた。
「国王陛下のお出ましです」
プラムさんを真似て敬意の礼をとる。
「陛下。申し上げます。此度の功績者タカナシノゾミ殿をお連れ致しました」
「タカナシノゾミです。お目にかかれて光栄です。横に居るのはサルサの森の主でフェンリルのリルと言います。いまは私の従魔でもあります」
「此度の件。大義であった。面を上げるが良い」
「御意」
「此度はそなたの通報により王宮内に蔓延る不正を一掃することが出来た。その功績を称え褒美を取らせる。何か望みは無いか」
いきなり褒美だと言われてもどうしたもんか……
「金でも地位でも与えることができるが欲しい物はあるか」
「では、一つだけお願いが御座います」
「申してみよ」
俺はマルマン商会の件は解決しても違う奴が出てくることを危惧していた。一番大事なのはサルサ村や森を守ることにある。だから一つの提案をすることにした。
「恐れながら陛下にお願いが御座います。その前に、プラ……ハモン殿下を残されてお人払いをお願いできませんでしょうか」
「おい。平民の分際で場をわきまえろ!」
側近の方におこられてしまったが、陛下は俺の願いを叶えて、プラムさんを除くすべての人に退室を命ぜられた。俺は盗聴を防ぐために防音と隠ぺい魔法を展開させてもらった。
「これからお話しすることを聞かれた後、陛下のご判断を頂きたいと思います」とだけ前置きして
サルサ村が聖霊に愛されている地である事やこれからの開拓予定。森とその住人達との共存共栄が現住民に浸透している事。そして莫大な埋蔵量がある鉱脈もその森の長リルから譲り受けたことなどを話した。ただし、この鉱脈の場所を教えるのは森をそして森の住人達を守ってもらえる確約を条件とした。
鉱脈の証拠品としてこれまでに発掘精製した金とミスリル。オリハルコンの延べ板を出した。
「どうやら真の話のようだな」
「現在、この森には私が認めた者しか入れないように結界が張ってありますが、長く私一人で守り通せるものではありません。そこでお願いなのですが、サルサ村とサルサの森周辺を陛下直轄の管理地もしくはハモン殿下の管理下に置いては頂けませんでしょうか」
「わかった。ハモン。引き受けてくれるか」
「かしこまりました」
「それと、鉱脈から出た鉱石の一部権利を私に頂きたく思います」
「鉱脈は元々其方の物だ。それを違えれば横に控えておる森の長殿が黙ってはいまいて」
「ありがとうございます。では、私にとって余剰分はすべて殿下を通して陛下に納めさせていただきます」
「気遣いに感謝する」
話が纏まり、退室していた重臣たちが再び揃ったところで、陛下から勅令が下された。
「本日を以て、現在開拓のサルサ村及びサルサの森。及びその周辺は余の私有地とし、重点保護区とする。またハモン第二王子を管理者とし全権を委ねるものとする。早々に手続きをせよ」
陛下の命を聞いた何人かの重臣たちが部屋を出て行った。
「では、改めて余から褒美を取らせる。タカナシノゾミ、そちにサルサの森に関する一切の権利を生涯に渡り与えるものとする」
「ありがとうございます」
「サルサの森は余の私有地になった。これからは政治はおろか、何人の横やりも入らん、森を守るがよいぞ」
「感謝いたします」
「では、陛下。これにてノゾミ殿共々下がらせて頂きます」
「ハモン。ノゾミ殿の力になってやれ。下がってよいぞ」
「確かに承りました。では失礼を致します」
やっと城からでると緊張感が解放されたことも有り一気に疲れを感じた。