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第十七話 マルマン商会捕物帳

私はプラム。このメルテナ王国の第二王子だが今は冒険者兼、メルーサの街のよろず屋で働いている。

本来ならこの話でなく、「ダンジョンで売店を開いています」のキャラだが、特別コラボで出演中だ。


ノゾミさんの話に出てきたマルマン商会。ドメールの街にあると言っていた。しかし、王宮出入りの話は聞いた事が無かった。その前にその店の存在自体を知らなかった。用度部署で確認を取ると出入りの実績も鑑札の発行もしていなかった。それなのに出入りの鑑札を持っていたという。これは何かあると考え、ドメールの街に飛んだ。


街の中でもかなり中心部の好立地に問題のマルマン商会はあった。役人を引き連れて乗り込むも肝心の鑑札が見つからなければ意味が無くなる。そこで、客を装って単身乗り込む事にした。


店に入ると買取り受付と書かれたカウンターがあり、声を掛けてみた。

「買取りをお願いしたいのですが」

「どのような物でしょうか?」

「珍しい鉱石が有るのですが、価値が分かる方をお願いします」


出てきたのは、どこか胡散臭い雰囲気を纏った男だった。その男はアラート・マルマンと名乗った。

この店の会頭の名と同じだ。間違いないだろう。


「鉱石をお持ちとか。拝見してもよろしいでしょうか」

おれは昔ダンジョンで手に入れたオリハルコンを少量だけ出した。

「これは貴重な……どれほどお持ちですかな」

「どれだけ出すかは金額次第だな」

「ここではなんですので、こちらへ」


案内されたのは応接室だった。店主は計器を持って来て純度を計りだした。


「95%かなりの純度ですね。これだと一キロ35000ギルと言ったところでしょうか」

「少し安い気もするがどうかな?」

「当店は信用を大事にしていますので、相場からかけ離れた金額は出しませんよ」

そういうと、王宮御用の鑑札とか言うのを見せてきた。

「王宮にも出入りをしていますからご安心頂けるかと思いますよ」

俺が確認したいものを簡単に出してきてくれた。こうやって信用させているのだろうか……


「すごいですね。初めて見ました。良ければ持たせてもらっても良いですか」

そういうと「どうぞ」と見せてくれた。これは本物。裏を見て登録店名と番号を確認し記憶する。

ここで2キロのオリハルコンを売って店を出た。急ぎ城に戻ると御用鑑札の照合をさせた結果、別の店が登録されており、偽造で有ることが判明した。しかし、鑑札自体は本物でどうやって入手したのか疑問が浮かんだ。


さらに調査を進めると、正規の登録店とマルマン商会の間に繋がりは無かったが、取引金額だけがこの一年だけで5倍にも膨らんでいた。要は王宮内で不正取引が行われているということだ。

そして帳簿や在庫を確認して分かった事が、有力貴族とマルマン商会の癒着だった。


流れはこうだ。マルマン商会が王宮御用の鑑札で取引相手に信用させ買取りをし、それを王宮に正規の登録店から買取った事にして、その後マルマン商会に払い下げしていることを伝票上だけでしている事が分かった。すなわち有力貴族の横領横流し。その金額は1億ギルに上っていた。

さらにマルマン商会は上物を売りに来た客の後を付けて、窃盗行為もしていたことが分かった。


この事実を陛下に言上し、極秘裏に確認作業が行われ、裏付けが取れた。いよいよ摘発だ。

有力貴族は近衛兵が、マルマン商会は憲兵が時刻を合わせて同時に摘発に掛かる。


私は地元の憲兵を連れてマルマン商会に来ていた。突入の少し前に1人店に入り、店主の存在を確認

前回案内された応接室にいた。


「憲兵隊だ!全員そこから動くな!!」


時間になり一斉に憲兵が雪崩れ込んで、応接室にも隊長がやってきた。


「いったい何なのですか……」

「国王陛下の命令で、貴店の御用鑑札不正所持と窃盗品の不正販売で家宅捜査を執行する」

「御用鑑札の不正所持とは何のことか……」

「店主。私が証人だ。先日見せて貰ったからな」


私は鑑札がしまってある辺りを指さした。


「殿下、有りました」

「殿下……?」

「このお方は、メルテナ王国第二王子、ハモン殿下である」

「今頃、店主が懇意にされている貴族にも近衛が行っている。大人しくすることだ」

「…………」


押収した鑑札や書類と貴族と交わした覚書などの証拠をもとに詳しく精査をし、陛下から下された裁定は、貴族の家督は降爵の上嫡男に。領地も僻地への領地替えとなったが、家族や使用人はお咎めなしとする事を条件に、自死酒の飲用を提示された。貴族はこの恩情に感謝しこれを受け入れた。


マルマン商会は会頭はじめ協力者全員が鉱山で終身の強制労働が課せられた。もちろん資産はすべて没収された。


こうしてノゾミ殿の尾行から始まったマルマン商会の鑑札偽造事件は貴族の横領と言うオマケを付けたが、無事に解決をすることが出来た。後日、事件の通報者としてノゾミ殿には陛下から感謝の表彰をされ、それなりの賞金が下賜される予定になっている。


俺は10日ぶりに城から出ると、よろず屋の面々とノゾミ殿がいるはずの宿へと戻っていった。


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