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第十五話 尾行されていたから逃げました

マルマン商会を出てから更に色々な店を回ってみた。ボルトンさんやミランダ一家とレノン一家にお土産を買うためだ。都会だけあってサルサ村に居ては一生手に入らないようなものばかりだ。

子供たちには菓子の方が喜ぶだろうけど、大人は酒か? でも女性は何が良いんだろう……


あれやこれやと見て回るうちにどうやら裏路地に入ったらしく、どこに居るのか分からなくなった。

道に迷ったのが良かったのか悪かったのか…… リルが突然変な事を言ってきた。

『ノゾミ殿、さっきからお主を尾けてる気配があるぞ』

「そうなの?」

『あぁ。店には入って来ないが出てくると付いてきているな』

俺は索敵魔法で確認してみた。リルが言う通り少し離れてはいるが、敵意ある気配を感じ取った。透視魔法で相手の顔も確認した。20代半ばの小柄な少年だ。顔つきは可愛い顔をしているが、敵意の気配は隠していなかった。


「相手は一人だけだね。このまま知らぬ振りしてどこかで撒こう」

『了解いたした』


適当に歩いていると、一軒のめし屋を見つけた。昼ご飯をまだ食べていなかったので、この店に入ることにし、店主お勧めの料理を頼んで味わう。お勧めだけ有ってかなり美味い。リルも分も嫌がらずに作ってくれた。見張りの少年は店の中までは入ってこなかった。

「リル。裏口から出してもらって少年を撒くぞ」

店主に不審者に付けられている事を話し、裏口から出させてもらった。


店をでた瞬間にリルには隠ぺい魔法を掛け、自分には変装魔法を掛けた。もしかして相手が索敵魔法を使っているかも知れないので念の入れ妨害魔法をも掛けておいた。


「リル。相手はたぶんここにも来るだろうから、逆に後を付けてどこに行くか調べてくれ。俺は東門で待っている」

『了解いたした。ノゾミ殿も気を付けられよ』

「リルこそ、危険だと思ったら直ぐに帰ってこいよ」


俺はリルを残し、索敵を掛けながら東門に向かった。





追跡相手を見失うとは…… 俺としたことが……

暫らく近くを探したが見つからなかった。しょうがない。一旦戻って報告だ。

店に戻ると、捲かれたことを会頭に報告した。

「相手が上手だったか……。しかしフェンリルを連れた男だ。目立つからすぐに見つかるだろう」




ここはさっき来た店ではないか。リルは少年の行き先を突き止めていた。これ以上の深追いは危険だ。それより早くノゾミ殿の元に戻ろうと東門に急いだ。




リルが戻ってきた。すぐに隠ぺい魔法を解くのは目立つから危険だと思い、そのままで居る。

とにかくこの街に居るのはヤバイ。尾行をかけて来た相手は察しは付くが、意図が掴めてない。

長居は無用と俺自身にも隠ぺい魔法を掛けるとリルに乗ってドメールの街を出た。もちろんリルに乗るからには結界魔法を忘れてはいけない。


ドメールの街からかなり離れた場所で休憩を入れた。索敵魔法でも危険な反応は無かったので、隠ぺい魔法も解除した。


「少年の行き先はマルマン商会だったろう」

『ノゾミ殿は分かっておったのか』

「あぁ~ あの街で俺が関わったのはあそこだけだからな……ただ、目的が分からない」

『持ち込んだ鉄と銅ではないのか』


王室に出入りしているという事で信用したのが間違いだったか……王都では気を付けよう。


ふたたびリルに乗り王都が見えてきた辺りで「家に居るときよりももっと小さくなることは出来るのか」とリルに聞いたら『出来るぞ』という事なので、マルマン商会の目を眩ますためにも王都ではもう少し小さくなってもらう事にして、俺は変装をすることを決めた。





マルマン商会の会頭室では……

「どれだけ探しても居ないだと! どういうことだ!!」

「分かりません。しかし、どこの門からも出た形跡が残っていませんので、まだこの街に居るかと思われます」

「探せ。絶対に探せ! あいつは宝の山を持っている。必ず見つけ出せ!」




マルマン商会がドメール中を必死に探している頃、俺たちは王都の街門近くに来ていた。索敵魔法を掛けて敵意を感じる気配を調べてみたが無かった。だけど念には念をってことでリルにはシェパード位の大きさになってもらい、俺は変装魔法を掛けたまま王都の街門を潜った。



ここが王都か…… ドメールの街とは比較にならないほど賑やかだ。馬車や荷馬車がひっきりなしに目の前を過ぎて行く。行きかう人の服もみんな垢抜けていて俺が着ている服が田舎者を象徴しているようにさえ感じた。事実、田舎者だ。こんなきれいな服は手に入らない。


ここでも門番さんに宿を聞こうかと思ったけど、何処から情報が洩れるか分からないので、自分で探すことにした。街の人に王都にもマルマン商会が有るのか聞いてみたけど、誰も知る人が居なかった。王室の御用を受けているのに王都に店が無いのは不思議な気がした。憲兵の人に聞いても「そんな店は聞いた事が無い」と言う。マルマン商会への不信感がますます深まっていった。



警戒はそのまま残し、街を歩いていたら一軒の宿を見つけた。金額は少々張ったが、とにかく休める場所が欲しかったのだ。フロントで手続きをしていた時にリルが近くにいた犬に近寄って行った。


『この匂いはポーチン様ですか』

『……お前はリルフォングか!』

『やはりポーチン様でしたか。お懐かしいです』


どうやら旧友に会ったらしい。


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