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第十三話 王都に向けて

納屋に置いてあるワインの発酵具合を確認する。皮の色より少し薄い色が果汁に移り、香りもアルコールを含んだワインの香りを醸し出してきていた。実は、この山葡萄の皮に含まれている酵素が糖分を分解し、アルコールに変化させていく。思いのほか糖分が多かったのか、変化率が高いようにも感じた。これから濾しの作業に入る。純粋にワインだけを取り出す。


樽を開け、布袋に移しゆっくりと絞っていく。全部が搾れたら熟成ようの樽に詰め熟成させていく。

だいたい3か月~半年だ。それまでゆっくり待つことにする。


ワイン作りも一段落着いた事で、ドメールと王都に行く準備をする。予定としては一月。王都までの往復で10日。場合によってはメルーサの街にも行きたい。


「じゃ~リル。行ってくるから留守番を頼んだぞ」

『??何を言っているのだ。吾輩もついて行くぞ。ノゾミ殿一人では危険だっからな』

「そうなの?」

『吾輩に乗って移動すればあっという間じゃ』


ミランダ一家とレノン一家にも留守中の畑の管理をお願いして、ボルトンさんの家に寄った。


「これから行ってきますので留守中よろしくお願いします」

「気を付けて行けよ」

「リルが付いてきてくれるから大丈夫ですよ」

「ちょい待て。リルは従魔登録してないだろ。それだと街には入れんぞ」

「そうなの??」

「……村役場で従魔登録してから行け」

「わかりました。ありがとうございます」


従魔登録か……リルにこのことを話すと二つ返事で『よし、登録しに行くぞ』

そんな簡単に決めて良いのかと思ったけど、あえて言わないことにした。

役場で登録を済ますと、リルに乗ってドメールの街を目指した。



「リル~~ リル~~ もっとゆっくりお願い……」

『これでもゆっくり走っておるぞ』


森と違いさえぎる物が無いせいか風を強く感じ息苦しい。街を出てまだ1時間も経ってないと思うけど、休憩をすることにした。


『ノゾミ殿。魔物が居るようだ。ここで待っていろ』と言うと、リルは魔物の気配がある方に走っていった。武器を持っていない俺は念のために防御結界を張ってリルが戻るのを待った。

しばらく待つと獲物を引き摺って戻ってきた。

「お前……それ……」

『サンドワームだ』

「サンドワームって……一人でやったのか?」

『当然だ。こんなやつチョロイもんだ』

「そうか…… スゴイな」


サンドワームを空間にしまうと先を進むことにした。『おい。今は苦しくないのか』とリルに聞かれたが苦しくは無かった。『さっきより早いぞ』と言われても苦しくなかった。

よくよく考えたら結界を解いてないことに気が付いた。


「そう言えば、防御結界を掛けたままだ」

『ではそのまま掛けたままでいろ。もっとスピードを上げるぞ』


防御結界のおかげで風の影響を受けず快適に進むことが出来た。

リルのスピードはかなり速く、日が暮れる少し前にはドメールの街門に着いた。

検問も順番を待っていると、役人にリルの事を聞かれた。

「これは俺の従魔です。登録もしてあります」

「そうか。人に危害を加えないように注意しろ」

「わかりました」

こんなやり取りをしている内に順番が来た。ギルドカードを見せボルトンさんから借りた通行税を払って街に入ることが出来た。


宿を取りたいが金が無いので、まずは冒険者ギルドに行くことにした。場所は門番さんに聞いたので直ぐに見つけることが出来た。


中に入り、受付で買取りをお願いした。さっきリルが狩ってきサンドワームだ。

「買取ですね。ここに出してもらえますか」

「サンドワームだけど、ここに出しても大丈夫ですか?」

「……ちょっと待ってください」というと受付の人が奥に消えて行った。

しばらく待つと、老年の紳士を連れてきた。

「当ギルド長のドメルク・ノノンです。サンドワームの買取りとか。こちらへ付いてきてください」

案内されたのは倉庫だった。


「こちらに出してもらえますか」

俺は空間からサンドワームを出すと言われた場所に置いた。

「ほぉ~ 空間収納ですか」

「はい。とても役に立っています」

「で、確かにこれはサンドワームだな。お主が狩ったのか」

「いえ、俺の従魔です」

「そのフェンリルか……なら可能だな」

『ノゾミ殿。サンドワームの肉は美味いからな。出来たらそれは残して置いてくれ』


ドメルクさんはかなり細かく検分している。

「ほぼ一撃……傷がクビの部分しか無い。よし高値で買取ろう」

「あの、肉はこちらに引き取らせてくれませんか」

「構わんぞ。皮だけでも上物だ。解体代はオマケしてやる」

「ありがとうございます。あとですね、今日の宿代も無いので少しだけ前払いは出来ませんか?」

ドメルクさんに笑われながらも前金として1万ギルを渡してくれた。残りは明日までに査定額を出すと言う事でギルドを後にした。


思わぬ大金が入り驚いたが、早々に宿探しだ。さっきギルドで紹介して貰えば良かったと後悔しながら数件を回り、やっとリルも泊まれる宿を見つけることが出来た。


宿に入り、空間から料理を取り出す。料理と言っても手の込んだ物は無い。自分用に蕎麦とおにぎり。それに野菜の煮物だ。リルには魔物のステーキを3枚出してやった。



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