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第十話 蕎麦パーティーを開きました

今年も蕎麦の収穫期がやって来ました。小さい実なので収穫後の選別が面倒だけど、新そば粉で打つ蕎麦は香りも味も絶品だ。ミランダさん一家とレノンさん一家にも手伝って貰えたお蔭で作業も早く終わった。早々に水車小屋で製粉すると小屋一杯に蕎麦の香りが広がった。


自分で蕎麦打ちをするようになって5年。腕前もかなり上達し、いまでは蕎麦粉10割で打ってもプツプツ切れにくい麺を打つことが出来る。つなぎ無しの蕎麦は絶品だ。


今日は収穫を祝ってみんなで蕎麦パーティーを開くことにした。

ボルトンさん以外はたぶん初めて食べるはずだ。その時どんな顔をするか今から楽しみだ。ボルトンさんも初めての時、恐々食べていたのを思い出すだけで今でも顔が緩んでくる。


薬味に大根おろしと晒しネギ、川に生えていたワサビも用意した。つゆはインターネットで買えることを知ってから、調味料と昆布に鰹節を買い込んで自分の好みの味を作っている。

皆が集まるまであと1時間と迫って来たところで蕎麦を打ち始める。その時、庭に魔法で作ったカマドで大量の湯を沸かす。


粉を大鉢に入れたら水差し、まんべんなく水が行き渡るように混ぜる水回し。ここで水の量が足りないと思ったら少し足す。一発で決めれたら文句なしだけど、俺にはまだ無理だ。そこから捏ねに入る。

耳たぶの硬さ?弾力?が出るまで良く捏ねる。それから円錐形を作るように捏ねて行く。俗にいう菊練りだ。ここまで出来たら乾燥させないように10分~15分位生地を休ませるけど、俺は次の蕎麦を捏ね始める。


わらわらとみんなが集まって来た。ここからは子供たちに見せるためのショーだ。

竈の横に作ったテーブルの上で延ばしと切りだ。大きな塊が見る見るうちに薄く延ばされていくところを見て子供たちは大はしゃぎだ。レノンさんの長男サム君と次男のサトリ君が「僕もやってみたい」というからやらせてあげた。力が足りなくてなかなか延びてくれないのはお約束? それをレノンさんと奥さんのサリーさんが笑いながら見ていた。俺は後ろから補助してやりながら延ばしを終えた。畳んで切りに入った時にもやりたいと言われたが、さすがに包丁は危ないので見るだけにと思っていたら、ミランダさんの長男レイク君が「僕は包丁使えるよ」と言うから切らせてあげた。太さにムラは有るけど、初めての蕎麦切りにしては上手く切れていた。


短時間でゆで上げ冷水で〆たら出来上がり。そうそうにテーブルに運んで食べ始める。

「みんなが収穫を手伝ってくれたら蕎麦の実から作ったものだよ。美味しいからいっぱい食べてね」

と言うが早いかボルトンさんが食べていた。

「うめぇ~ ほらお前らも早く食え」

「おいしい~」

「うん、おいしい~」

子供たちにはすこぶる好評だ。

「あの小さな茶色の実がこれなんですか…… 初めて食べました」

「確かに美味いな。香りが良い」

大人たちも気に入って貰えたようだ。

「ノゾミさん。今度私にも教えてください」とミランダさんが言うと、サリーさんも「私も教わりたいわ」と言ってきたことで蕎麦打ち教室をすることになった。


みんなでワイワイと騒いでいたら、リルが『そろそろ吾輩にも食わせてくれ』と言ってきた。

うん。忘れていた。ゴメン。リルにはつゆを掛けて出してやった。

『うん。いつ食っても美味いな。ノゾミ殿。すまんが……』と森の方を見る。そこには次期森の主候補のレッドをはじめ森の住人達が集まっていた。


俺はみんなを呼んでそばを振る舞いながら聞いてみた。

「どうしてもっと早く来なかったの?」そう何時もは直ぐに来ることが多いからだ。

『人がたくさんいて、自分たちが行くと無くなってしまうからな』ってレオ達は遠慮してたようだ。

「いつでも歓迎してるだろ。遠慮なんか要らないからね。でもその気持ちありがとな」

『ノゾミ殿いつもすまんな』とリルも言って来た。やっぱり森の主だけあるな。


そこそこお腹が一杯で満足したのか、何時しか子供たちと住人の子供たちが遊んでいた。


テーブルの上にミランダとサリーが作って来てくれた料理があり、その中に気になる料理を見つけた。

食べてみたらコンニャクの味噌煮だった。

「これに使ってあるのって味噌か?」

教えてくれたのはサリーだ。

「名前は似てるけどミーソンって言うのよ」

「どこで手に入るんだ?」

「メルーサの街で人気が出てね、行商の人が時折持って来てくれるのよ」

「そうか……」

「これがどうかしたの?」

「いや、懐かしい味だと思っただけだ。ありがとう」


メルーサの街か……もしかしたら日本人がそこに居るのかもしれんな。機会があれば行ってみるのも悪くないか…… でも、会えたとしてもどうなるんだ?なんて複雑な思いも湧いてきた。

だけど、この国では味噌が受け入れらてると思っても良い。米も麦も大豆も有る。味噌を作ってみても悪くないな。そう思いながらもう一切れ、コンニャクの味噌煮を食べた。


うん。美味い。味噌汁も食いたくなった……


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか平和な話で見ていてほっこり します。こう言う話は好きなので ゆっくり楽しめます。
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