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お付の付き合い

「それより、本当なんですか?」


 今度はフェデルタが質問する。


「何が?」


 デニーの茶色い瞳がフェデルタを捉える。


「ルギオス様の弟様……アスラン様が人間とのハーフだということです」


 あぁ……と息を吐きデニーは、ガシガシと赤毛を掻き回す。


「いや、俺もさっき初めて聞いた。そんな話一度だって聞いたことはない。ただ……」


 掻き回していた手を止める。


「なんで、クスリも飲まずに昼間、外を走り回れるか分かった」


 デニーの言うクスリと言うのは、吸血鬼が日光を浴びて灰にならないようにするモノのことだ。

 三歳のときから毎日欠かさず飲み続けて日光に耐性をつけるものだ。完全に耐性がつくのは、個人差があるが最低でも十年は飲まなくてはいけない。


「クスリとは、ダークマターと呼ばれてるもののことですか?」


 世界中のありとあらゆる苦いものを凝縮した味だと吸血鬼の一族は口を揃えて言う。


「そう、それだ。あんな不味いもの飲まなくてもいいなんて羨ましい……」


 デニーは、クスリの味を思い出し顔をしかめる。飲んでもいないのに口の中に独特の苦味が広がった。


(思い出しただけで昼飯が腹から出てきそう……)


 ゴクンッと口に溜まった唾を飲む。


「なるほど、なるほど。それで、アスラン様は夜はぐっすり眠ってくださると」


 ニコニコと笑いながらお菓子とお茶を載せたワゴンを押してくる男。

 濃い紫の髪を下の方で結んでいる。そんなに長くないのでしっぽのようにみえる。

 不健康な白い肌に、糸のような目と血のような赤い唇。黒い光沢のある燕尾服(えんびふく)を着ていてもかなり細いのが分かる。それに加え、高身長なため少し不気味にも感じる。

 しかし、まとったなんとも言えぬ人の良さがにじみ出たオーラが彼のトゲのある印象をぼかしている。


「フェデルタ様ですね。ディミータ王子の専属騎士の。お話は、ルギオス様から伺っております。

 はじめまして、ルギオス様とアスラン様の専属教育係のナサル・クルサリーです」

 礼儀正しくお辞儀をする。


「ナサルー! きょうのおやつはなにぃー?」


 ナサルの姿を見たアスランは、ポイッとクレヨンを放り投げヨチヨチとナサルと呼ばれた男に駆け寄る。


「マーマレードですよ。アスラン様。さあ、クレヨンを片付けて手を洗いましょうか」


 ポンポンっと優しく背中を叩いてアスランを片付けに向かわす。


「ぐっすり眠ると言うのは?」

 アスランが離れたところを見計らってフェデルタがナサルに尋ねる。


「吸血鬼は、本来、夜行性の種族です。そのため先程話に出ていたクスリでその本能を抑えているのです。ですが、幼少期は効果が出にくいため夜でも活発な子が多いのです」


 そういうナサルの目の下には、うっすらクマがある。


「ルギオス様は、夜、一度でも起きるとそこから寝付くまでかなりかかるので大変なんです。オマケに朝は何度起こしても起きてくれません」


 デニーは、そっと心の中でナサルに手を合わす。

 幼い頃、自分もそんな子供だったのでルギオスの気持ちがよくわかる。そして、大人になった今、それを起こすナサルの気持ちもよく分かるからだ。


「てーあらってきたよー!おやつー!!」


 褒めて! 褒めて! と手をかざしてずんずん歩いてくるアスラン。


「な! 俺の弟って可愛いだろ!?」


 弟の可愛さアピールをするルギオスとうんうんと上の空で返事をするディミータが後ろからついてくる。


「フェデルタ様。どうか、アスラン様のことは秘密にお願いしますね」


 コクっとフェデルタは顔を変えずに頷く。

 それを見てナサルは、ふっと肩の力を抜く。


「もちろん、デニー様も」

「分かってるって!」


 デニーは、拳を胸に当てて返事をする。ガチャっと金属が触れ合う音がした。


(うっかり酒の席で話そうだな…………)


 彼が酒好きなことを知っているナサルは、眉をひそめる。

 ナサルは、今後のデニーの行動にも気を配らなくてはと心のノートにメモした。

ナサル・クルサリー


レヴィンス家の教育係。毎日、ルギオスやアスランの世話に手を焼いている。

見かけによらず性格はいい方。


髪色:濃い紫

虹彩:不明(目が細いので見えない)

身長:184cm

服装:燕尾服


サンプルボイス

☆自己紹介

「ナサル・クルサリーと申します。王室の教育係をさせてもらってます。みなさん、これからよろしくお願いしますね」


☆フリー

「教育係は、いわゆる家庭教師のようなものです。それに加え、見た目のせいで性格がキツそうと言われますが、そんなことありません。私は、褒めて伸ばすタイプですので。あ、もちろん。悪いことをしたらちゃんと叱りますけどね」

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