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ミネルワ学園


幼稚園・小・中・高・大学・大学院が全て揃っている。

四月から三月を一学年としている。

中学からは、編入を認めている。


由緒正しき学校であり歴史はかなり古い。

補強工事などはされているが設立当初のままである。


入園条件(幼稚園)

・六月一日時点で満三歳の者

・王族、貴族または、一定の条件を満たした平民

「なんて、無礼な貴族なんだ!! 自国の王子を侮辱するなんて!!」


 ディミータの寮部屋で出されたお茶を飲みながらルギオスは怒りを口にする。


(なんで、僕より怒ってるんだろう)


 ディミータは、不思議そうにルギオスの顔を見つめる。


「別にいつもの事だよ。多分、あれは反対派の貴族の子どもさ」


 答えが出なかったので考えるのをやめて涼しい顔でお茶を飲む。


「あれが、大人だったら殺しにくるから大変だけどね」


と言ってクッキーを口の中に放り込む。


「殺し…………?」


ルギオスは、物騒な言葉に口ごもる。熱いお茶が急に冷たくなったような気がした。


「そう。殺し。いわゆる暗殺だよ」


 ディミータは、生まれて間もない頃に毒を盛られ三日三晩熱にうなされたことがある。

 二歳の頃には、誕生日プレゼントで送られてきたびっくり箱から凶器が飛び出てきた。


「つい最近だと学園主催の遠足で矢が飛んできたんだ。ま、フェデルタが矢を叩き落してくれたけどね」


 まるで、楽しかった思い出を語るようにニコニコと話す。

 目が糸のように細くなり、口が三日月のようになる。


「たいへん……だね」


 ルギオスから怒りが消えていく。代わりになんとも言えない感情が湧き出てくる。


「別に君が気を落とすことじゃないさ。僕は、安全な生活の代わりに裕福な生活を送れてるんだから」


 ディミータの目に父と母の姿が映る。


「今でも反対派がいるんだ。きっと、父上と母上の結婚の際にはもっと反対派が多かったと思う。それでも、意志を突き通した二人は本当……すごいよ」


 まだ、幼いディミータはその事を体で感じていた。


「僕は両親にとても感謝してるんだ。僕をこの世界に産んでくれてありがとうってね」


 考えてくれ。

 普通、五歳児がこんなことを言うだろうか?


「みんな、僕のこの耳と眼を見て忌み子だって騒ぐんだ。……ルギオスは、気持ち悪いと思わないの?」


 純粋に知りたいとディミータは思った。

 戦前まで他種族同士での結婚はタブーだっためディミータのことを耳にするだけで顔をしかめる大人も多い。


「いや、全然。…………ここだけの話なんだが、俺の弟もハーフなんだ」


 ギラっとルギオスの赤い瞳が光る。


「ハーフ? ということは、君もハーフなのかい?」


 二人は、身を乗り出して顔の距離を近づける。


「いいや。俺は、純血さ。弟とは腹違いの兄弟なんだ。父上は、正式に発表するつもりはないみたいだけど……」


 腹違いというのは、そんなに珍しくもない。

 しかし、ディミータ以外にハーフが、しかも王族でのハーフがいると言うのは初耳だった。


「なんのハーフか聞いてもいいかな?」


 自分以外にもハーフがいると知って金色の瞳がきらきらしている。


「人間さ。人間と吸血鬼のハーフ」


 いたずらっ子のようにルギオスは笑う。


「人間…………」


 この世界で唯一魔法ではなく科学を発展させた種族。力も弱く、魔力もほとんどない全てにおいてひ弱な種族。


 神話の時代では、吸血鬼は人間の生き血を吸っていたという。

 その間に生まれた子供……。


(僕以外にもいるんだ……会ってみたい)


 お茶を片付け二人は、ルギオスの部屋に向かっていた。例の弟を見たいと頼んだところルギオスは、快く承諾してくれた。


「歳が近いからってことで同じ部屋になってるんだ」


 ルギオスの弟は、今年入園したばかりだそうだ。


「ただいま! お兄ちゃんが帰ってきたよ!」


 部屋に入るとルギオスは、満面の笑みを浮かべ床で絵を描いていた小さな男の子に飛びつく。

 ディミータたちより二回り小さい金髪の男の子。

 ルギオスの手が邪魔で絵が描けなくなる。


「じゃーまー!!」


 ハリのある高い声。

 青いクレヨンを持ったまま暴れたのでルギオスの頬に青い線がひかれる。


「ぐはっ!」


 わざとらしくルギオスが倒れる。


「ほら、アスラン……。スミレニー王国の第一王子 ディミータ様だよ。ご挨拶して」

「や!!」


 アスランと呼ばれた男の子は、ディミータに見向きもさず白い紙に絵をかいていく。


「コラ! アスラン!! じゃないとクレヨン取り上げるよ!」


 ヒョイっとクレヨンが入ったケースを取り上げる。


「や"あ"だァァァァァァァァァァァ!!」


 軽く怒られただけだが、アスランは顔を真っ赤にして大声を上げて泣き出す。


「別にいいよ、ルギオス。まだ、三歳なんだから」


 ディミータは、アスランの前にくるとしゃがんでじっくりと観察する。

 金髪に黄緑の瞳。ぷにぷにのほっぺと二の腕はほどよく赤くなっている。

 ルギオスとは、あまり似ていない。


「俺は、母上に似ているけどアスランは、父上に似てるんだ。だから、誰も気づかない」


 よしよしとアスランの頭を撫でながら説明する。


「アスラン? これは、何を描いていたんだ?」


 ぱっとアスランは、泣き止ま大きな声で

「およめさん!!」


と答えた。

 ディミータは、紙を手に取り絵を見る。

 黒いクレヨンでくちゃくちゃと髪の毛のようなものが描かれており、その下に同じくくちゃくちゃと薄橙で肌らしきものが描かれてる。そして、その中心にはこれでもかと大きく青いぐりぐりっと描かれた円が二つ。


「これが、君のお嫁さんか……可愛い人だね」


 笑顔が引きつらないよう気をつけながらディミータは、アスランに紙を返す。


「コイツ、まだ、三歳なのに女の人に興味あるのか……?」

「ただの子供の妄想だろ? そんなに気にするな」


 アスランは、二人の会話を聞いて不思議そうな目をする。


(いや、お前も子供だろ)


 気配を消して入口付近で自然体で立っていたデニーは、心の中でつっこむ。


(王族ってのは産まれたの頃から違うのかね)


 デニーの頭の中では、普通の五歳児が元気よく鬼ごっこをしている。

 その子たちは、無邪気に笑いあっている。


「お前はどう思う?」


 ふと、他の意見が聞きたくなったので隣にいたフェデルタに問いかける。

 しかし、なんの前触れもなくデニーが声をかけたので、フェデルタは自分に言われてるのだと自覚するのに時間がかかった。


「…………何がです?」


 デニーは、頭の中の子供たちをそっとかき消してから説明する。


「王族ってやっぱり、普通の子供とは違うなって思ってさ。全然、子供らしくない」


 フェデルタは、じっとディミータを見つめる。


「…………ディミータ様は、あの(よわい)で三度お命を狙われてます。私もできれば普通の子供のようにのびのびと育って欲しいのですが……」

「育つ前に死んじまうと」

 デニーはふぅーっと鼻から


息を吐き出す。


「お互い大変だな。ウチのところは、そういうことに関しては大丈夫そうだがな」


 じゃれ合う兄弟を見ながらフェデルタは願う


 どうかこの二人がディミータ様の心の支えとなりますように


 と。

ミネルワ学園 誰得情報


校則はそこまで厳しくない。

ただし、就寝時間が夜八時と決まっている。(高校生からはない)

外出許可は中学生から。

授業以外で格闘術・格闘魔法を使ってはならない。

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