牙
流血注意
「あがっ!!」
首元が緩い服はルギオスにとっては好都合。抱き寄せると同時に素早く肩まで脱がした。
無様な声を上げてディミータは体を大きく反らす。反射的にルギオスの腕を解こうともがくが、ルギオスの腕はビクともしない。
蝋のように白い肌に突き立てられた小さな刃は、深く突き刺さった。
(ルギオスが僕を噛んだ?)
それ以外にこの状況を説明できるものはない。
グっとルギオスが歯に力を込める。
「ぃぎ!!」
痛さに耐えられずルギオスの背中を掻きむしる。その手にヌルッとした血がついたので慌ててその手を止める。
しかし、痛みは治まらないのでかわりにギュッとルギオスの服を握る。
「やめて…………ル……ギ……オス」
痛みで涙が込み上げてくる。
視界も脳みそもすべてぐちゃぐちゃになってゆく。
ジュルと音を立てて傷口から出た血をルギオスがすする。声にならない声がディミータの口から漏れる。
(なんで…………? 痛いのに……痛いのに……)
傷口からジンジンと熱いものが体を巡る。手足がしびれて抵抗する力もなり、ルギオスの方へ体が自然に倒れる。
はぁ……はぁ……と息をするのがやっとだった。口の端から垂れるヨダレなど気にする余裕などディミータに残されていなかった。
と同時に植物たちが元の姿に戻る。ドロっと砂のお城が崩れ落ちた。十二時を回って魔法がとけたシンデレラのように全てが元通りになる。
葉に隠れていた金の三日月が二人を照らす。
ルギオスの口元から垂れる血がディミータの服を赤く染める。
(なに? これ…………)
痛さのせいか、それとも涙のせいかディミータの意識がだんだんぼやけてゆく。それに比例するように呼吸が荒くなっていく。
顔が……体全体が異様に暑い。いや、熱い。
バクっ……バクっ……と心臓が動く音が聞こえる。
ディミータの耳元では、ルギオスが血をすすってる音が聞こえる。
濡れた舌が首元を味わうように傷口を撫でる。
ビクっ!
ディミータの体が小刻みに震えだす。
ルギオスはかまわず舐める。血は絶えず溢れ続けて、ルギオスの口の中へ消えていく。
不覚にもディミータはそれを気持ち悪いとは思わなかった。むしろ心地よいものだと思ってしまった。
血を吸われるたびに意識が暗闇に落ちる。
ルギオス
上手く回らぬ舌でそう呼びかけた。
希望があればこういうの増やしてあげないことも無い(謎の上から目線)
いや、でもね。
できるだけたくさんの人に見てもらいたいからそういうのは避けたい。
けど、世の中綺麗事だけじゃないからね。
グロシーンとか出てくる可能性が高くなりそう。
そういう時は、前書きで注意するから!!