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助けてください

流血注意


今度からR15になるかもしれません


いや……グロくはないので安心してください

 空気を引き裂く音がした。

 続いてなんとも言えない重い音がする。例えるなら、そう。肉に何かが突き刺さったような音。

 ディミータは、突き飛ばされた衝撃で地面に転がる。

 反射的についた手が擦れて痛かったがそんなこと全然気にならなかった。


「ルギオス!!」


 振り返る前にルギオスがディミータの上に覆いかぶさる。


「だい…………じょう……ぶ。うご……く……な」


 首を無理やり動かしてルギオスを見る。

 ルギオスの顔は苦痛で歪められている。額に大粒の汗が浮かんでいる。はぁ……はぁ……と肩で息をしている。


「ルギオス!! 何が起こったんだ!?」


 ガサガサっと近くの草むらや木が揺れる。

 ディミータは確信した。

 これは、自分を狙った暗殺だと。

 そして、ルギオスをそれに巻き込んでしまったのだと。

 ドサッとルギオスの体から力が抜ける。下にいたディミータは、なるべく動かさないように体勢を変える。


「ルギオス…………? ルギオス!?」


 背中に手を回しゆっくり起き上がる。ヌルッとして生暖かい液体が手に着いた。


(まさか…………)


 顔から血の気が消える。

 震える手でルギオスの頭を膝に乗せて必死に呼びかける。

 背中に突き刺さった矢と真っ青な顔のルギオス。


(まさか……毒針!?)


 嫌な悪寒が背筋を走る。

 身体の奥底からふつふつと感情が湧き出てくる。


 底のない穴のような

 暗い海の底のような

 全てを吸い込むブラックホールのような


 指すように冷たいのに燃えるように熱いその感情の渦にディミータの意識は吸い込まれた。


 シュッ。

 先程の空気を引き裂く音がした。

 しかし、その小さな音はゴゴゴっという地響きによってかき消された。

 矢が空中で折れる。


「出てこい…………」


 まるで地獄から聞こえてくるような声。


「出てこい」


 ルギオスをそっと地面に置く。とても丁寧な動き。

 ゆらりと立ち上がり目を閉じて耳に意識を向ける。

 遠くで聞こてる鳥の声。木の葉が揺れる音。そして、()()()()()()


 暗く冷たい殺気が森を包み込む。

 鳥の群れが危険を感じ一斉に飛び立つ。

 その瞬間、ディミータの体はドス黒いオーラに包まれる。

 かっと目を見開いた。

 髪の隙間から異形の眼がギラりと不気味な光を放つ。

 手をゆっくりと胸の高さに持ち上げる。


「捕らえよ!!」


 直後、森から音が消える。

 小さな振動が森を揺らす。揺れはあっというまに大きくなり、ディミータを中心に地面がぐわっと盛り上がる。


 ディミータの周りの草木が守るように一気に成長する。

 伸びた植物は、触手のように動き刺客たちを襲う。

 まず、足に絡みつき逃げれないように逆さ吊りにする。次に、手の自由を奪う。その間に武器となるものを回収する。最後に口へ入り込み舌を噛みきれないように猿ぐつわをした。

 その意思を持った植物たちは、逃げる隙を与えず刺客たちを捕らえる。

 植物たちは、すーっとディミータの前にその三人を出す。逆さ吊りのままで。

 ガシャンっと刺客が持っていた武器を無造作に地面へ落とす。ロープに剣、その中にルギオスを射ったであろう弓と矢もあった。


「これ、有難く貰っておくよ」


 ディミータは、冷たい目で武器を押収する。


「いい子だね。君たちは。悪いけどしばらくそのままで居てくれないな」


 ぽんぽんっと近くの太い茎を撫でて話しかける。


「ルギオス…………」


 ルギオスの体は地面から飛び出てきた木の根の下にあった。

 矢じりが左脇から出ている。


(貫通…………している…………)


 冷たい汗が身体中から吹き出る。

 緊急用のブザーは運悪く置いてきてしまった。


 今、頼れるのは己自身。


 苦しそうな息遣いがディミータをさらに焦りを与える。

 頭の中でガンガン音が響く。


(ゴルミスの枝がある……これで毒は大丈夫だ。あとは、この矢を抜かなきゃ)


 ふっとディミータから焦りが消えた。

 まるで、他人が自分の体を使って考えているような感覚になる。


(枝を煮るためには、道具が必要だな……。たしか、行く前にルギオスが鍋を持たされたって言ってたから大丈夫か)


 ディミータは背中から出ている矢を折った。


「うっ!!」


 苦しそうな短いうめき声がルギオスの口からこぼれる。

 ディミータは構わずテキパキと応急処置を行う。


 ディミータのすぐ近くの草が揺れて獣が現れた。

 暗かったせいで近距離なのにも関わらず姿がはっきり見えなかった。

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