ちょっとした手助けを
…………。
…………う〜ん。
かれこれ三十分木と木を擦り合わしてるけど煙の一つたたやしない。
かわりばんこにやってるけどそろそろ限界に近いみたい。
仕方ないね……その懸命に努力する可愛い姿に免じて今回はちょっと助けてあげよう。
「なかなかっ……つかないね……」
平らな大きめの木を下にして細い枝を垂直に突き立ててグリグリ回して火をおこそうと頑張るルギオス。
汗が頬を伝い、呼吸が乱れている。オマケに肩と腰のあたりが痛くなってきている。
「もう……無理!!」
ルギオスは、なかなかつかない火に苛立ち手を高く振りかざす。
バシッと持っていた枝を木に叩きつける。
その瞬間。
ボッと音を立て赤い火が勢いよく着いた。
!?
パチッ……。大きく目を開いて瞬きをする。
パチッ……。もう一度。
二人ともその状況をよく見ようと瞳孔が開く。
二人はその現実を理解するのに時間がかかった。
あれだけ頑張った火おこしがルギオスの些細な行動で着いたので驚きと嬉しさと少しの幻滅が二人の心の中で渦をまく。
「…………ルギオス!! 火! 消える前に葉っぱを近くに置いて!!」
弾かれたように我を取り戻したディミータがルギオスに指示する。
「え、あ! うん! わかった!」
ぎこちなく返事をしてルギオスは、近くに置いてあった枝の葉を取り火の近くに置く。
葉に燃え移り、火は大きくなる。
「ディミ! お待たせ! あったまって!」
「ありがとう」
ディミータはお礼を言って火に近づく。
「ねえ、ルギオス。お昼ご飯にしようか」
そう言ってディミータは荷物の中から長細い緑のコクトレを取り出した。すべすべしていて手触りがとても気持ちいい。
「はい、これ食べたらテントをはろう。場所はもう少し川から離れたところにしよう」
「どうふぃへだ?」
コクトレにかぶりつきながらルギオスは聞き返す。
口の端から透明な果汁が流れ落ちる。
「川が氾濫したらテントごと持ってかれるかもしれないだろ? といってもこの天気だと大丈夫そうだけど念の為」
「なるふぉど」
ルギオスは美味しそうにコクトレを食べるのでディミータも我慢できずに一口食べてみる。
「いただきます」
かぶりついた途端に口の中にふわっと広がる甘い香り。シャリっとした歯ごたえの後に果汁とともに溢れ出す柔らかい甘み。
「美味しい……!」
初めて口にする生のフルーツ。ディミータの中でフルーツ革命がおこった。
「生でも美味しいんだね」
「ん? もしかしてディミ、フルーツ生で食べたことなかったの?」
「え、うん。そうだけど」
ルギオスは口に残っていたコクトレを飲み込んでからニヤッと笑う。
「ナサルたちには、秘密にしてるんだけど……よく、弟と厨房に忍び込んで貰うんだ」
と声をひそて唇に手を当てた。
「へ〜……兄弟がいるって羨ましいな……」
「ならいつでも部屋に来いよ! 二人で弟を可愛がろうぜ!」
ニカッと赤い目を細めて笑うルギオス。
微笑み返しながらディミータも残っていたコクトレを口に押し込む。
「さあ、寝床を作ろうか」