面倒なやから
パンパンの二の腕に丸い顔。
その後ろに控えてる小柄な四人の少年。
ディミータは心底めんどくさそうな顔で見る。
「なぜだい? これは、僕のじゃなくて僕らの食料なんだけど」
「いいからよこせよ」
リーダーぽい五人の中で一番肥えている少年がもう一度言う。
諦める気がなさそうなのでディミータは、黙って川の方へ向かう。
こういうやからは無視をするのに限る。
「おい!! 逃げる気か!!」
先程の少年がたぷたぷの頬を揺らしながら叫ぶ。
ルギオスは、どうしていいのか分からずその少年とディミータを交互に見る。
「ルギオス、早く行こうよ」
涼しい顔でディミータがいうのでルギオスも川の方へ歩き出す。
「まてよ!!」
予想外の行動に少年たちは、ルギオスを追いかけリュックを掴んで引っ張った。
「うわっ!!」
ドスッと尻もちをつく。打ちどころが悪かったのかお尻がじんじん痛む。
「その荷物よこせ!!」
取り巻きの少年がルギオスが持っていたテントが入っている袋を取り上げる。
「か、返せ!!」
ルギオスは反射的に叫ぶ。
その声に反応してゆっくりディミータが振り返る。
「ほら!! そっちの荷物もよこせ!!」
リーダーの太った少年が勝ち誇ったようにディミータを睨む。
(あー……めんどくさい。これだから嫌なんだ。馬鹿な奴らを相手にするのは。僕が誰にも言わないと思ってさぁ…………)
森の空気が変わる。先程までに吹いていた心地良い風が止み、太陽が雲に隠れる。
「何か言ったか? 豚野郎」
少年たちの背中に冷たい汗が流れた。
子供とは思えない肝を震わすドスの効いた声。
右眼にかかった金の前髪を左手でかきあげる。その下から現れる黒に金の虹彩の目。
「置いていけ」
ぶるぶる震えながら取り巻きの少年はルギオスから奪い取った荷物を地面に置く。
「おととい…………来い」
もうひと睨みする。
五人ともガクガクと頷き転がるように逃げていった。
太陽が雲から顔を出しディミータを照らす。
その様子を鼻で笑いディミータは再び歩き出す。
(今のディミ…………まるで別人だった)
思い出すだけでルギオスの腕にゾワッと鳥肌がたつ。
冷たくて殺気のこもった目。
恐怖でルギオスの心臓はバクバクとうるさくなっている。
(…………ディミはディミだ。怖くなんかない!)
頭を左右にぶんぶん振って恐怖を追い出す。ガシッと荷物を掴み取りディミータの背中を追いかけた。