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春のサバイバルに向けて

ディミータ「ネタがなくなったそうだから僕らがここで喋るみたい」

ルギオス「でも、ネタが出来たら退くんだろ?」

ディミータ「そうみたいだね」

ルギオス「…………何を話せばいいんだ?」

ディミータ「さあ?」

 講堂に響く校長の声は、喋り始めてから十分経った今でも全然終わる気配がしない。

 ドーム状に造られたこの講堂は、マイクを使わなくてもかなり声が響く。天井や壁のガラスはほとんどステンドガラスで中はかなり明るい。

 生徒は全員用意された椅子に座って校長の話に耳を傾けている。

 しかし、ほとんどの生徒は床に目を伏せて何か別のことを考えている。


「この季節は、多くの命芽生える季節であります。冬に来ていた渡り鳥は南へ旅立ちます。逆に帰ってくる鳥たちもいます。これは全て…………」


 ディミータの隣に座っているルギオスは、完全に寝ている。もともと、眠そうにしていので校長の声は子守唄に聞こえたのだろう。

 ディミータは、頭を空っぽにして校長の眉間をあたりを見ている。

 傍から見ると真面目に話を聞いているように見えるだろう。

 それからもう十分ほどたってやっと校長の長話が終わった。


「続いて、春のサバイバルについての連絡です」


 司会担当の先生が話し出したのでディミータは気づかれないようにルギオスを突っついた。

 眠そうに目をこするルギオス。 


 春のサバイバルというのは、クラス別に別れて学園敷地内の森に三泊するというものだ。参加できるのは、小等からなのでディミータたちは初参加になる。

 もちろん、ただ泊まるだけじゃない。

 まず、生徒のみで森で野宿しなくてはならない。先生はもちろん専属騎士や執事などは参加不可。自力で食事や寝床を整えなくてはならない。

 これは、ボタンの掛け方すら知らない大人にならないための対策で始められたものだ。それがいつからか、学園あげての大イベントとなった。

 今では、緊急時でも生き延びる知恵を身につけよう。という考えの元で開催されている。

 秋にも似たようなイベントがあるため春とついている。


「さて、今年もこの季節がやって来ました。開催は、二週間後です。その期間、皆さんには自炊方法や毒草の見分け方などを勉強してもらいます。

 また、今年はそれぞれのクラス別で十段階評価で生活態度の善し悪しを出します。

 点が高かった順に食料品を提供します。一番低かったクラスは残念ながら三日間薬草での生活になってしまいます。皆さん、しっかり頑張ってくださいね」


 厳しそうな眼鏡をかけた女の先生がサバイバルの説明を終える。

 そのあと、何点か先生が報告事項を伝えて始業式は終わった。


「春のサバイバルかー。今からすっごく楽しみ!」


 始業式は、午前中で終わり午後の授業はない。

 ディミータたちは、ルギオスの部屋で女子会ならぬ男子会をしていた。

 テーブルに置かれたクッキーは、ディミータからの差し入れだ。


「でも、それまでに毒草の見分け方を学んでおかないといけませんよ」


 笑顔で近づいてきたナサルの両手には重そうな本が三冊ある。

 よいしょっという掛け声とともにドスッとテーブルに置く。その衝撃でお皿の上のクッキーが飛び跳ねる。


「…………だいたい予想はついてるけどこれ、なに?」

「ルギオス様の予想通りでございます」


 笑顔のままナサルは仰々しく答える。笑顔なのにとても怖いと感じるルギオス。


「さて。これから、夕食までに三人で薬草について学びましょう!!」

ディミータ「ねえ、ルギオス? 好きな食べ物ってなに?」

ルギオス「うーん…………。魚のあの黒い部分」

ディミータ「血合肉のこと? 僕、あれ苦手」

ルギオス「そうか? 俺はめちゃくちゃ好き」

ディミータ「じゃあ、今度、食事にでたらこっそりあげるよ」

ルギオス「えー…………ナサルにバレないかな……」

ディミータ「上手くするよ」

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