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吸血鬼の春休み

吸血鬼(現在公開可能な情報)


クスリにより昼間も活動出来る。

朝が苦手で、夜の方が元気な人が多い。

見た目はほとんど人と変わらない。



 吸血鬼であるルギオスは、朝が苦手だ。

 眠いというのもあるが、太陽の光が肌をちくちくと刺激するからだ。


(その点、アスランはいいなぁ…………)


 アスランが人間とのハーフだと聞いたのは春休みに入る一週間前。ちょうど、ディミータと友達になった日だ。

 父にディミータと友達になったということを報告したところその事実を告げられたのだ。

 とはいえ、幼いルギオスにとって血の繋がりだとか、母親が違うとかそんなことはまだ、よく理解できなかった。


(弟に変わりはないからな……)


 兄である以上、自分は、弟を守る責任がある。

 そう思うと自然と苦手な勉強にも力が入る。


(でも…………)


 ルギオスは、寝返りを打って布団を被る。

 黒髪がふさっと顔にかかる。


(早起きだけは苦手…………)


 ムスッとした顔でルギオスはナサルの予習授業を受けている。

 布団から引っ張り出された挙句、最も苦手とする歴史の授業を受けさせられているからだ。


(ね、眠い…………)


 顔を洗っても頭から出ていかない睡魔がナサルの呪文のような説明で覚醒しようとしている。


「この……きっか…………ぼっ……」


 ナサルの声がだんだん聞こえなくなっていく。


(もう…………ダ……メ……)


 ガックっと首が前に垂れる。


「ここまでは分かりましたか?」

 ちらっとルギオスを見るとすーっと小さな寝息を立てて寝ている。

 無言で近寄りガシガシと揺すってみるも起きる気配はない。


「まあまあ、春休み最終日ぐらいは、寝させてやれよ」


 ナサルは、壁にもたれてるデニーを見る。


「最終日だからこそ、新学期に向けて予習をするのですよ」


 服装の乱れを直しながらナサルは、デニーを睨む。


「まあまあ。こうなればルギオス様は起きないだろ? だったら、気晴らしに酒でも飲みに行こうぜ」


 ナサルがとめる暇もなくデニーは、ルギオスを抱き抱えて部屋から出ていってしまった。


「最終日だから……か」

 一人残された部屋でポツリと呟いた。


「いやぁ〜、ほっと! ルギオス様はかわいいよなぁ〜」


 顔を真っ赤にしてデニーは(あるじ)であるルギオスの可愛さ自慢をしてる。

 街一番の安い酒が飲める“ウコイサ”。出てくる料理も安くて美味しいため学生の姿もちらほら見える。


「はいはい、そうですね」


 適当に返事をしながらナサルは、自分のグラスに口をつける。


「ところで、デニー? あなた、そんなに飲んで二日酔いとか大丈夫なんですか?」


 明日は、ルギオスと一緒に学園に戻る日。寝坊なんてしたら、騎士の恥だ。


「平気! 平気! ニワウルシとマンドラゴラのスープを飲めば気分爽快! 飲んだ瞬間から酔いが覚めるんだよ!!」


 たしかに、今までデニーが二日酔いになったという話は聞いたことがない。


「っと……そろそろ帰るか…………。ああ、ちょっと」


 近くを通ったアルバイト店員に先程のスープを頼む。


「そう言えば……あと、一年ちょっとでテレティか……」


 テレティというのは、七歳になった子供を祝う大事な行事であり。

 昔は、七歳まで死ぬ子供が多かったのでそこまで生きのびたことをお祝いし、大人への仲間入りを示す行事であった。

 しかし、今は、衛生環境や栄養状態などが改善され幼児の死亡率は低下している。そのため後者の大人の仲間入りというのは、今ではなくなっている。


「そうですね……」


 ナサルはふっと息を吐く。

 その姿はまるで、我が子の成長を見ている父親のようだった。

レヴィンス王国


吸血鬼の住む国。

ぶどうの生産量が多く、ワインが特産品である。

夜の国と呼ばれていた時期があり、他の国にはみられない習慣が数多くあるらしい。


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