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Roman is the Future  作者: 浪漫古参
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プロローグ

 たまに、この世界は何で構成されてるんだろうって考えるんだ。


 でも、答えは分からない。俺よりずっと頭が良い人が考えて、四大元素とか五行思想とか色んな説を唱えても、それを証明することなんて不可能だから。


 ところで、二元論という言葉を知ってるだろうか?この世の中は相反する2つのもので出来ているもんだという考え方だ。

 例えば、光と闇、現実と理想、男性と女性、という具合に。相反してるけど一方がなければ一方も存在しないよな?

 そして、対立しながら互いに他者に向かって変化し、常に動いているという力動的二元論。これが陰陽思想、俺が好きな考え方の一つだな。


 だから人生は良いことが続いたりすることもある。同じ様に悪いことが続いたりすることもある。そう、嫌なことばかりの後には素晴らしいが待ってるハズ。


…少なくとも俺は心からそう思いたい。



 高校の商業科を出た俺は大学には行かず、就職することにした。何故ならひたすら勉強をするその考えが俺にはいまいち理解できなかったからだ。要するにちょっと…勉強が苦手だった。

 運が良かったのか、ちょうど新しく造られた企業、というより政府直々に職員を募集している時期だった。俺はそこの情報処理課で採用されたんだ。

 ある程度しか普段勉強をせず、ほぼ勘で問題を解いていくような俺でも受かったのだから、結構ハードルは低かったと思う。


 とりあえず仕事をこなし、給料をもらい、それで飯を食う。ただそれだけの平凡な日々だったが、俺はそれでも満足だった。

 務め始めて一ヶ月位すると、政府の中で絶対機関という機関が設立された。当初は全く興味を持ってなかったのだが、未だかつて無いような最前線テクノロジーの研究に力を入れていると聞いてから少し気になってはいた。


 それから数日後のこと、上司から絶対機関直属の情報課に移らないかと言われ、数人の同期と共に配属になる。その時、俺は絶対機関の隊長と初めて顔を合わせた。



 「初めまして。情報課のロマン・フュルステンベルクです」



 少し緊張しながらも軽く挨拶と自己紹介をした。

 言い忘れていたがこれが俺の本名で、周りからはよく名前の最初の3文字をとって「ロム」と呼ばれている。



 「新しく情報課に配属されたロマンか。絶対機関の総括を務めている。よろしく」



 ………?、名前は名乗らないのか?少し不自然さは感じたが、隊長はいかにもリーダー格という雰囲気を漂わせていた。

 そしていつの間にか情報処理担当の同期の中で俺だけ絶対機関の主力の隊員にさせられていた。

 その理由は今は置いといて、正直面倒だなとか思ってしまったが、後に隊長が実力を認めてくれたと知って嬉しかった。


 こうして俺は絶対機関の一員となった訳だ。



 前置きは長くなったが、そもそも俺が入隊したこの絶対機関とは一体何なのか…。

 …そういえばどういう機関なのかという説明を全く聞いてなかったので、隊長に話を聞く。基本的に人と話すのが苦手な俺は、また緊張する羽目になった。



 「あの、絶対機関ってどういった機関なんですか…?」


 「それは以前説明しなかったか…?簡潔に言えば相対機関に対抗して設立された軍機関だ」


 「あー、なんかすいませんでした」


 「遠慮することはない、何か分からないことがあったら気軽に聞いていいぞ」


 「あ、はい」



 と、優しい隊長は言った。にしても、やっぱり軍機関なんだよな。なんか大変な機関に入隊したような気もするが、給料は前よりも良いから気にしない。

 ついでに相対機関の事も聞こうと思ったが、隊長が忙しそうだったのでやめた。そりゃあ出来たばかりの軍機関の総括だし、忙しいのも当たり前か。


 それ以来、質問をキッカケに隊長と話すことも多くなり、隊長から直々に戦術を学ぶこともちょくちょくあった。

 というより、そもそも前線部隊の人数が足りなくなったらしく、情報処理担当から何故か俺が候補として選ばれたらしい。

 その為、絶対機関と対立する襲撃部隊、つまり相対機関との戦いの際に、弾薬等の補給係として前線に立たされる事もあった。


 俺が見る限り、相対機関ってテロリスト…だと思う。絶対機関本部の周辺でちょっとした暴動を起こすってのもしょっちゅうだし。

 とにかくこの二つの機関はかなり仲が悪いらしいが、関係がこじれ出したのは最近のこと…って隊長が会議で言っていた。



 …そういえばこの頃だったな、会ったの。俺は生涯初の衝撃的な出会いを体験したんだ。こっからちょっと思い出話になる。

 その日は本部の近くで相対機関との小競り合いがあって、人員不足ってことで俺も前線部隊に同行させられていたが、元々運動が苦手な俺は部隊からやや遅れてしまっていた。

 なんとか着いて行こうと駆け足。そこはやや狭い路地で、見通しの悪いT字路。そこで俺は出会ったんだ。間違えた、ぶつかったんだ。



 「ご、ごめん!大丈夫!?」


 「あ、いや、大丈夫です、すいません」



 大丈夫じゃない、本当は凄く痛かった。結構強くぶつかった。左の路地から人が飛び出してくるなんて思わない。何せここは戦場だし。

 それとここには事前に避難警告が出されたはずだから、ここに人がいること自体おかしいんだが…、この時はそこまで頭が回らなかったな。


 尻餅を突いたままふと、ぶつかった相手の顔を見てみるが、俺は視力が弱かった。女の人、ってことはすぐに解ったが…。いや、この人とは前に一度会って話したことがあるぞ。


 すぐに立ち上がり、昔からの直りやがらない挙動不審な態度で頭を下げ、とりあえず此処は危ないことを彼女に伝える。



 「ここは一応避難警告出されたはずなんだけど」


 「やっぱりそう?どうりで人がいないと思ってた」



 と、その後もなんやらかんやら互いに平謝りして部隊を追い掛けた。いま思い起こしてみると彼女はなんだか不自然だったような…?

 でも、この日は俺を変えるきっかけになった日と言えるだろうな。


 彼女とちょうど一週間前にほんの少しの時間だったが、会話を交わした事を今思い出した。あの声と雰囲気は間違いなく彼女だ。

 俺は普段滅多に外に出ない。確かあの時は親友に誘われ商店街を出歩いてた時だった。

 その親友の買い物を店の外で待っていると、いきなり話し掛けられた。



 「ねぇねぇ、ちょっといい?」


 「え?あ、はい」


 「ノエルって人、知ってる?」


 「?、あー、ちょっと知らないですね…」


 「そっか、ありがとね^^」



 それが路地裏でごっつんこした彼女である。何故あんな質問をしたのか全く見当がつかないが、俺にとっては嬉しい出来事だったなぁ。



 しかし、その数日後、なんと俺はまた彼女と再会した。しかも再会したのは絶対機関の本部だった。



 「今日から新しく情報課に配属となったパールだ。この仕事については全くの素人だが、物覚えが早く、要領も良い。これから宜しくやってくれ」


 「よろしくおねがいします」



 まさか今度は同じ隊員として再会するとは夢にも思わなかった…あ、こっち来た。



 「ヤッホー!これでまた会うの3回目だねー。そうだ!まだ名前聞いてなかったね。名前は何て言うの?」


 「あ…いや、その…ロマン・フュルステンベルクです。皆からはロムって呼ばれてて…」


 「ロムかぁ。呼びやすい名前だねー。これから宜しくね」


 「う、うん」



 とっても緊張した。入隊した理由は詳しく話さなかったが、前に二度も偶然に会ったことは彼女も覚えててくれていた。



 「だってさ。ロムと同じ情報課っすかぁ。けっこう可愛いすね」


 「…んまぁ、確かにね…」



 と、たまに話しかけてくる彼の名前はライナス・コールリッジ。俺を含め、皆からは略してライコウと呼ばれている。なんでか知らんが語尾に「~っす」って付けるのが癖らしい。

 隊長とは絶対機関が出来た頃から付き合いらしく、常日頃に隊長と一緒にいることが多く見受けられる。

 数年前、大きな事故に遭って記憶喪失になったらしく、その時、隊長に助けられたんだ。



 …って別に聞いてもいないのにライコウが少し前に教えてくれた。



 ある日、久しぶりに会議が開かれた。どうやらまた相対機関がなんやらかんやらのコト。

 そういえば最近、仕事は日に日に忙しくなっている気がする。ただ忙しい分、給料がドンとアップ…って事はないらしい。まぁ、ここの隊員って国家公務員の扱いだもんな。


 ところで相対機関について詳しく知らない。この機関と対立しているってことは何となく分かったけど…。そのことを隊長に聞くにも会議中で聞けないし、俺は隣にいたライコウに聞いてみた。


 「相対機関は絶対機関の反抗組織で、ずっと昔から絶対機関と相対機関は対立してるっすよ」

 「ふーん」


 …そりゃもう知っとるっすよ。


 そういえば、相対機関のことも絶対機関のことも、俺あまり良く知らないな。

 出来たばかりの組織だからか、この機関の具体的な活動はインターネットで検索しても全く出てこなかったし…何か微妙に怖いんだけど。相対機関のことは…まだ調べてない。

 そのことについてもライコウに聞いてみたが、何故か無視された。



 話は変わるけど、新しく入隊したパールと俺は趣味に共通点があったこともあり、すぐに意気投合した、と思う。


 その共通点というのはスバリ『音楽』。パールは大の洋楽好きらしく、昔懐かしのモノから今流行りのモノまで、幅広く知っているらしい。

 そして無類の音楽好きだ。俺も両親の影響で古い洋楽を聴き始め、今じゃどんなジャンルの音楽でも聴くようになった。

 実を言うと俺は洋楽よりも電子音楽、つまりシンセサイザー等の楽器を使ったジャンルの方が好きだったんだけど、もちろん洋楽も好きだ。

 試しにパールにも俺のお気に入りを聴かせたら、その影響を受けて雑食性になってきたとか何とか言ってる。


 最近は、パールが俺の部屋に来て一緒に音楽を聴いたりして。で、ホントに下らない事を話す。



 「ロムって眉毛太いよねー」


 「えっ、自分ではそうでもないと思ってたんだけど」



 …とか。こういうがいつまでも続くのが、いや、こういうのがあること自体幸せって奴なのかなぁ。でも…そんな日常が毎日続くなんて、夢のまた夢なんだよな。



 それでも好きな音楽を好きな人と聴けるってのは素晴らしい事だと思う。

 本当に。



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