12
この話で最終話にしようと思ったら、いつもの倍の長さになってしまいました。
少し長いですが、お付き合いいただけたら嬉しいです。
あれこれ考えていたら、あまり眠れないまま朝を迎えてしまった薫はぼんやりとした頭で洗面所へと向かう。
いつものように着替え以外の一通りの身支度をすると、クローゼットを開けた。
悩んだ末に、白いシフォンのブラウスと一目惚れして買った花柄のフレアスカートを手に取った。
ずっと追いかけていた憧れの人であり、初めて好きになった人に想いを伝えるためには、完全武装が相応しいと思ったのだ。
(よしっ!)
トレンチコートを羽織ると、いつもより少し高いヒールのパンプスを履いて社員寮の門へと向かった。
9時になる5分前には出てきた薫だったが、門の前にはすでに深いブルーのスポーツカータイプの車が停まっていた。
すぐに透の車だとわかった薫は、車の窓を覗き込む。
「おはよう、早くにごめんね。乗って。」
薫に気付いて降りてきた透は、助手席のドアを開けて薫に乗るように促した。
失礼しますと言いながら、助手席に入った薫は、改めて透の姿を見る。
スーツとは違うカジュアルな白シャツに、黒のスキニーパンツを履いた姿が新鮮だが、よく似合っていると思った薫は早速ドキドキしてしまい、目を逸らした。
「…どこに行くんですか?」
「…ついてからのお楽しみにしとこうよ。」
気をそらそうと話をふった薫だったが、軽く流されてしまうと、透は車を発進させた。
―――――
「…薫ちゃん、着いたよ。」
あまり眠れなかったこともあり少しウトウトしてしまった薫は、透の呼びかけでハッと覚醒した。
「すいませんっ、わたしっ…」
「いいよ。あんまり眠れなかったんでしょ?俺の都合で待ち合わせ少し早くしちゃったし。」
15分ほどで着いたらしいそこで車を降りると、透は近くの洋風の大きな建物に向かって歩きだした。それに後ろからついていく薫は、その店の名前を見て驚いて声をあげた。
「…ここって、indigo blueの本店じゃないですかっ!?」
数日前にピンチを救ってくれた恩恵のある店に行くとは思っていなかった薫は、初めて見た立派な店構えをため息混じりに見上げていたが、スタスタと歩いていく透に気付いて慌ててついていった。
10時開店のその店は、まだclosedの文字がかかりシャッターも閉まっているが、超人気店であることからすでにパラパラと開店を待つ客の列が出来つつある。
その列に並ぶのかと思った薫だったが、透は慣れた足取りで裏の従業員出入口へ向かうと、そのインターホンを押した。
「俺だけど、邪魔してもいい?」
『はいはい、今開けるから待ってて。』
ガチャンとロックが開く音が聞こえると、透に中に入るように促される。
状況がよく理解できていない薫は、数日前の梓の言葉を思い出した。
(…梓先輩がコネがあるって言ってたけど、一体何の関係があるのかしら?)
薫は、透と男性のフランクすぎる会話に疑問を持ちつつ、どんどん進んでいく透の後ろをついて行った。
一階の店舗内へと入ると、大型のショーケースにはまるで宝石のように美しいスイーツたちが所狭しと並べられていた。
長時間並ばなければ見られない光景に、薫はついつい目を輝かせながらスイーツたちを食い入るように見つめてしまった。
「薫ちゃんに、ここのスイーツ食べて欲しかったんだ。」
その様子を見ていた透は、薫に向かってふっと笑ってそう言った。
またドキリと高鳴る鼓動を感じていると、キッチンの方からパティシエらしき男性が出てきた。
「よっ、兄貴。もう二階の用意も出来てるから、選んだら上がって。」
「ありがとう。この前から、いろいろ無理言って悪かったな。」
(あれ?いま、兄貴って言ったわよね?)
状況が掴めない薫は、説明してほしいと言わんばかりの表情で透を見つめた。
「ごめん、紹介するね。この店のパティシエ兼店長で、俺の弟の明。この前の件でもこいつに助けてもらったんだ。」
そう紹介されると、明はどうも、とぶっきらぼうに会釈した。
透の弟が有名洋菓子店の本店のパティシエ兼店長であることに驚いた薫だったが、この前の件のお礼を言わなければと姿勢を正して口を開いた。
「お兄様の同僚の高坂 薫と申します。この前の件では、急なお願いに応えていただき本当にありがとうございました。」
「…いや、単純にうちにとっても悪くない話だったから、お礼を言われることじゃない。」
明は少し照れたように目線をそらしてそう言うと、じゃあ、ごゆっくりっと言ってキッチンに帰って行った。
薫はその様子を見て、顔の系統は似ているもののどうやら透とは兄弟でも違うタイプのようだと判断すると、クスッと笑みをこぼした。
「…素敵な弟さんをお持ちなんですね。」
「……どういう意味か気になるところだけど、とりあえずこの中から何でも好きなの選んでよ。」
せっかくの有名店のスイーツを前に、透の言葉に甘えることにした薫は、透と同じショートケーキを選んで、同じくindigo blueの経営する二階のカフェへと移動した。
二階も一階と同様にオープン前であることから、他の客の姿はない。
人気店を貸し切りにしているような気持ちに薫は少し高揚感を覚えつつ、透に促されて窓側の丸いテーブル席に座ると、透も薫の隣の椅子に座った。
窓に向かって隣同士に座った透に、薫はさっきまでの高揚感がまた違うものに変わるのを感じた。
程なくして、女性店員がケーキと紅茶を薫の前に運んできてくれた。
透の前にも同様にケーキとコーヒーを置くと、一礼してキッチンへと戻って行った。
広い店内に二人っきりになると、透が口を開いた。
「お茶が冷めないうちに、まずはいただこうか。」
すぐに本題を始めると思っていた薫は少し拍子抜けしたが、憧れのスイーツを美味しくいただくためにはその方がいいと思い、いただきますと挨拶すると、目の前のケーキにフォークを入れた。
きめ細かいスポンジとなめらかな生クリームを口に運ぶと、上品な甘さが口いっぱいに広がった。
「美味しいっ!」
思わず声を出してしまった薫に、透はどこか誇らしそうに微笑むと自分もケーキに口をつけた。
味わっていたものの、あっという間に食べ終わった薫は、余韻を楽しみながら紅茶を口に運んだ。
その様子を見ていた透もコーヒーを一口飲むと、おもむろに口を開いた。
「…ここのスイーツ美味しいでしょ?…俺は子供の頃からこの味で育ってきたんだ。」
懐かしむような、少し寂しそうな複雑な表情でそう言った透に、薫は透の顔を見つめたまま黙っていた。
「この店の味が好きだったし、それを守り続ける爺さんや父さんに心から憧れてた…。
だから、幼い頃から俺もいつかこの店を支えるパティシエになるんだって信じて疑わなかったんだ。」
この店があの手紙に書かれていた店なのだと理解した薫は、そのまま透の続きを待った。
「…でもね、手紙にも書いた通り、俺には壊滅的に才能がなかったんだ。ずっとそのつもりで勉強はしてたから、頭ではアイディアが溢れてくるのに、それを技術に反映出来なかった。だいたいのことは卒なくこなせたのに、一番求めていた能力だけが、俺にはなかったんだ。」
手紙には簡潔に書いてあった内容だったが、その裏に秘められたどうしようもない歯がゆさが伝わってきて、薫は結局何も言えず黙って透を見つめ続けた。
「本当に悔しくて仕方なかったけど、大好きなこの店の味を守っていくためには、明の方が適任なのは俺が一番分かってたから、潔く後継からは身を引いた。それからは、手紙にも書いた通り、前向きな気持ちに切り替えて今の会社に就職したんだ。」
透はまたコーヒーを口に入れると、ゆっくりと飲み込んだ。
「薫ちゃんと同じ様に新入社員で販売促進部に配属されて、ここでなら、って意気込んでたんだけど、周りはそれを黙って応援してくれるわけじゃなくてね。」
「…えっ?」
「信じられないかもしれないけど、あの頃は今と違って販売促進部もギスギスしてて、足の引っ張り合いなんて日常茶飯事だったんだよ。」
今の雰囲気からは想像も出来ない状況に、もしそれが続いていたらと思うと薫の心はざわついた。
「実家のこととか出されると、さすがに俺もちょっと弱ってきて、あの頃はやっぱり俺は菓子作りに関わるべきじゃなかったんじゃないかって何度も考えてた。」
「…そんなっ!?」
透のおかげで、今、自分がこうしていられる事実を否定して欲しくなかった薫は、思わず口を挟んだ。
その様子に驚いた様子の透は、穏やかな笑みを作って、薫の目を見て口を開いた。
「……そんなときに、君に出会ったんだよ。」
「えっ?」
急に自分のことを引き合いに出された薫は、動揺してさっきの勢いはどこかへ飛んで行ってしまった。
「何とか勝ち取った企画で、あの店で仕事が出来ることになったんだ。
やっとできる菓子作りの仕事が本当に嬉しくて、とにかく成功させてやるって躍起になってた。お客さんの反応知りたくて、無理言ってアンケートとかもお願いして…」
あのスイーツにはそんなに強い思いが込められていたからこそ、あんなに素敵なものが出来たんだと、薫は話を聞きながら、どこか納得していた。
「…そしたら一枚だけ真っ黒にみえるくらいに埋め尽くされたアンケート用紙があってね。」
「…」
「内容も面白くってさ、俺でも思いつかないことも書いてあったりして…
どうしても、どんな子なのか見てみたくなったんだ。」
「…えっ?じゃあ、あの時のは…」
「…それも思い出してくれたんだね。
ごめん、あれは分かってて近づいたんだ。わざわざ営業時間に店に行って、もしかしたら会えるんじゃないかって。
…そしたら、すごく幸せそうな笑顔であのスイーツ食べてる子がいたんだ。
その瞬間、ああ、あの子だって確信した。」
全てを見られていたことが恥ずかしくなって、薫は少し俯いた。
「俺の関わったものでも、あんなふうに誰かを幸せに出来るって証明してもらえた気がしたんだ。」
心から感謝を言われている気がした薫は、また顔を上げて透を見つめた。
「あれから、俺の頭の中にはずっと君の笑顔があるんだよ。」
確信的な言葉を使っていないのに、愛の告白にしか聞こえないそれに薫の鼓動はどんどん速くなっていく。
「…だからね、ずるい俺は『罠』を張って賭けをしてたんだ…。」
突然、いつもの鉄壁の笑顔でそう言った透に、薫のさっきまでのトキメキは何処かへ行ってしまった。
「…わっ、罠っ!!?」
「進路に悩む君に、甘い餌をチラつかせて俺のところへ来るかどうかね…。」
手紙の最後に添えられた便箋の内容を思い出して、薫はまんまと引っかかった自分が少しだけ情けなくなった。
「…君が引っかからなかったら、諦めるつもりだったんだ。そもそも、一回しか会ったことない子のことをずっと思い続ける自分もどうかしてるって思ってたし…」
「…」
「でも、君はこうやって俺の前にもう一度現れた。…だから諦めるのはやめた。
…まさか気付いてもらえないとは思ってなかったけどね。」
「っ!!…それは、その…すみません。名前も性別も完全に勘違いしてて…」
そのことに関しては、鈍感な自分に非があるのがわかった薫は素直に謝った。
「…そのくせ、歓迎会で憧れてるなんて言うから、どうにか俺のこと見て欲しくなって、あんなこと言ったんだ。
…あのときは、あんなやり方で戸惑わせてごめんね。」
透の本当の気持ちを知ってからも、あの言動については理解できなかった薫は、今の言葉を聞いてやっと納得がいった。
(…やっぱり、あれは…)
それと伴に、薫の中の考えが確信に変わっていくのを感じていた。
「…俺の独白はここまで。
君に改めて想いを告げる前にきちんと話しておきたかったんだ。
だから、もう一度俺にチャンスをくれないかな?
…薫ちゃん、俺と付きあ……」
あの時と同じ台詞を途中まで言いかけた透だったが、口を塞ぐように伸ばされた薫の手によって、それは阻まれてしまった。
「…今度は私の番です。…ケジメをつけさせてください…」
「?」
「私、ずっとあなたに言いたかったことがあるんです。」
そう言った薫は、透の口から両手を外すと、姿勢を正して座り直した。
「私、ずっと自分は何もやりたいことがない空っぽの人間なんだって思ってました。」
「…」
「勉強も大好きな家族のために、自慢の娘や姉でいようって頑張ってただけで、自分から進んでやっていたわけじゃなくて…
お菓子作りは好きでしたけど、あなたみたいに職人になりたいって情熱を持てるほどではありませんでした。
…そんなときに、私はあのスイーツに出会いました。」
今度は薫の話が始まって、先ほどとは代わり、透は黙ったまま薫の顔をじっと見つめていた。
「いつも食べてたお菓子が生まれ変わったみたいな感覚に本当に感動しました。これを生み出したあなたになら、私も変えてもらえるんじゃないかって思ったりして…
だから、アンケートにあんな質問書いてしまったんです。」
少し照れ臭そうに言う薫に、透は優しい微笑みを携えながら、ただただ黙って話を聞いていた。
「あんな質問にきちんとしたお返事をいただけて、本当に嬉しかったです。やっぱり素敵な人だったって確信を持てて、憧れの気持ちがより一層強くなりました。
だから、最後の言葉は…例え思惑に嵌ってしまっただけだとしても…あの時の私には最善の道でした。
もちろん今でも胸を張ってそう言えます。
そんな自分になれたのは、全部あなたのおかげなんです。」
そう言い切ると、薫はカバンから箱に入ったボールペンを透に差し出した。
「あの時は、本当にありがとうございました。いつかあなたに会えて、あの時のお礼を言えたらお返ししようって決めてたんです。」
「……これが君のケジメ?」
「はい。あの店に忘れてあったのを、ずっとお守り代わりにして私が預かってました。お返しするのが遅くなってしまってすみません。」
「…そういうことなら、受け取っておくね。大切に持っててくれてありがとう。失くしたとばかり思ってたから、まさか君がこれを持ってるとは思ってなかったな。」
少し懐かしそうにボールペンを見つめた透は、薫から箱を受け取ると手元に置いた。
「…これで、もう薫ちゃんの話は終わり?」
先ほどの話に戻そうとしたのか、透がそう尋ねたが、薫は首を横に振った。
「…これは、過去のあなたに、です。
今からは今の藍川先輩ににお伝えしたいことがあります。」
はっきり透の目を見てそう言った薫に、透は一瞬驚いて目を丸くしたが、すぐに笑顔に戻って続きを促した。
「…初めは、先輩の何を考えてるのかわからない笑顔が苦手でした。」
「…うん。」
「…でも、時々見せる、少し寂しそうな、切なそうな表情がずっと気になってました。」
返事の催促をする前に必ず行われるあの『合図』が何を示しているのか、薫はずっと考えていた。
「一緒に仕事をするうちに、先輩の優しいところとか、仕事に対する姿勢とか、尊敬できる部分が見えてきて…いつしか、私はあなたのあの笑顔に隠された本心を知りたくなっている自分に気付きました。」
何度も助けてもらうたびに、透の優しさを感じていた薫は、あの鉄壁の笑顔の裏側にいる本当の彼自身を見てみたくなったのだ。
「あの時…私を叱ったくれた時、先輩は、甘えていい、って言ってくれましたよね?
…私、そんなこと言われたの初めてだったんです。」
それまでの薫には何でも一人でこなせる自信があったし、周りにもそう思われていたため、誰かに甘えることなど考え付きもしなかった。
「先輩は私に、他人を信用すること、甘えることの心地よさを教えてくれました。」
だからこそ、薫は気付いてしまったのだ。
似た者同士である薫に、透が自分の姿を重ねていたことに。
あの言葉は、きっと透がずっと誰かに言われたかった言葉であることに。
(…あの『合図』は、そんな弱さを持った自分に気付いてほしいってサインだったんでしょ?)
(…だから、)
「…だから、私はあなたが甘えられる特別な存在になりたい…。」
「…」
「…私、藍川先輩のことが……透さんのことが、好きでっ…」
薫の口から途中まで出た言葉は、強引に薫の身体を引き寄せた透の唇によって飲み込まれてしまった。
(…ああ、なんて甘いんだろう。)
唐突に始まったキスに、薫は抵抗することなく、思考を全て持っていかれてしまった。
しばらくして、やっと薫の唇は解放されたものの、身体は透にきつく抱き締められたままだった。
「…本当に、君には一生敵いそうにないなっ…。」
「えっ?」
やっと口を開いた透の一言は、薫にはよく分からず、疑問の声がこぼれ出た。
「……あの時も、今も。君は予想を遥かに飛び越えて、俺の欲しい言葉をくれる。」
「…」
「…好きなんだ。…どうしようもなく、君が欲しい。」
「もう、何年も前からとっくに君は俺の特別だよ。…だから、俺と付き合って…。」
懇願するかのように呟かれた透の一言に、薫はその腕の中で小さく、はい、と答えた。
その返事が聞こえたのか、さらにギュッと抱き締められると、薫は透のことがどうしようもなく愛しく思えた。
しばらくそうしていたが、抱き締められているのは自分のはずなのに、薫はまるで自分が抱き締めているような気分になってふふっと微笑んだ。
「……何、笑ってるの?」
「ふふっ…何でもない。」
そう言いながらも笑っている薫に、透はムッとした後、ニヤッと意地悪そうな笑みをつくった。
「…そんな余裕、なくしてあげようか?」
「えっ!?」
不吉な一言を放った透に危険を察知した薫は、身体を離そうと試みたものの離してもらえるわけもなく、甘んじて透のキスの雨を受けることとなった。
どんなスイーツを食べたとしても、味わえないであろう極上の甘さを知ってしまった薫は、愛しい人の腕の中でその甘さに酔いしれる。
これから幾度となく送られるであろう『合図』を受け取りあいながら、お互いをもっと知っていければいいと、薫は透の腕の中で二人の未来に思いを馳せたのだった。
―END―
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「ちょっ、いい加減離してくださいっ!」
もう何分もそうしていることに気付いた薫は、我に返って透から離れた。
「あれ?…また敬語に戻ってるんだけど。」
「だって、先輩は先輩ですし、そんな急に変えられません!」
「その先輩ってのも止めよう。さっきは名前で呼んでくれたでしょ。」
「…だから、それももう少し時間をください…。」
「あっ、そうだ!罰ゲームつければ早く直るんじゃないかな?」
「えっ!?」
嫌な予感がした薫は全力で拒否しようと口を開いたが、透に先を越されてしまった。
「今日これから、5回敬語使うか、先輩って言ったら、俺の言うこと何でも聞くこと。」
「なっ!?そんなの認められません!」
「はい、今ので1回ね。あと4回だからね。」
「…ち、ちなみに、何を要求するつもりでっ…なの?」
「今のはギリセーフかな。
…うーん、今のところ第一候補は、明日の朝まで一緒にいて、かな?」
「っ!!?」
急に爆弾発言をした透に薫は言葉を失ってしまった。
「嫌なら頑張って直せば良いんだよ。」
どんどん腹黒さを見せてきた透に、こんな隠された姿が見たかったわけじゃなかった薫は、これから自分がいいように転がされるであろう未来を密かに覚悟したのだった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また、書けましたら番外編をあげるかもしれません。
読んでいただいて、本当にありがとうございました。