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テラザウォール  作者: 森國 龍剣
9/14

壁は、覚えているか?

ここは?


えーっと、俺…道成と涼華ちゃんと下校してて…。


あ、変な建物が目の前に現れたんだったっ!!


道成?!


道成は…?


ここ、どこだろう。


真っ白な世界?

夢の中ってことかな…。


振り返ると、さっき目の前に現れた建物が遠くに見えた。


取り敢えず、あれが気になるよね。


そう思って歩き出したはいいけど、近づく程に、心臓の鼓動が早くなって、なんだか息苦しくなってくる。

道成…。どこいったんだろう。


少し歩くと、その建物がとてつもなく大きなものだとわかった。

見上げた先のどこまでも続く建物は、威圧的に俺に迫ってくる。


なんだか、気持ち悪い…。心臓の音も体全体に鳴り響く…ほんと嫌な感じだよ。


はぁっと息を吸い込んで、ゆっくり吐き出す。


道成を探さなきゃ。

そう思って進んだ先に、見慣れた後姿を見つけた。


____道成ーーっ!!


叫んだつもりが、声が出ないっ。


どうなってるんだよ!!


道成は、建物に向かって立っていた。


____道成!!だめだよ!置いていかないで!!


今度は、つらい気持ちが胸を締め付け、また鼓動が早くなる。


____俺を一人にしないでよ!道成ーーっ!



ふり絞る心の声も虚しく、頬に涙が伝った。


頭が痛い。


____っと、何が起きたんだっけ…。


ぼーっとした意識の中、いきなり飛び込んできたのは、


「道成!道成!目を覚ましてよー!道成ぃぃ!」


「野村先輩っ!!しっかりしてください!!」


うるっせぇ、大声出すなよ。


「道成?気が付いた?道成?」


重い瞼を開くと、泣きそうな雪近と、近藤の顔があった。



「あ。ああ。」


「よかったぁぁ!道成生きてたぁ!」


「勝手に殺すなっての。」


雪近は、だって…と言いながら、目じりをこすった。


「野村先輩!!大丈夫ですか?お怪我ありませんか?どこか痛いところは?」


近藤が心配そうに見つめてくる。


近い、近い。



「ん。ああ。どこも痛い所は…」


一通り、体を動かしてみて、


「おう、なさそうだ。」


俺のその言葉に、二人から安堵のため息がこぼれる。


「あぁ~、もうほんとに心配したんだからね!道成死んじゃったかと思ったんだから!」


「だから、俺を勝手に殺すなって。」


ぺたぺたと顔を触ってくる雪近を軽く払いながら、


「ごめん、俺、そんなに長い間寝てた?」


と尋ねた。


「そうですね…。私が一番最初に目を覚ましたのですが、野村先輩は随分長い時間、気を失ってました。私が目を覚ました時には、辺りはまだ明るかったのですが、今はすっかり日も沈んでしまって…。」


近藤が、ほっとしたのか、その場にへたり込みながら話してくれた。

相当、心配かけたんだろうな。近藤にも、雪近にも。


「そうか。心配かけたな。って、ここはどこだ?」


今まで、ぼーっとしてたのと、周りが暗いのもあって気にしてなかったのだが、

ここはどこだ?

学校の前の坂道の下じゃない。


俺は、改めて上半身を起こしながら、辺りを見回した。


「さっき、明るい間に少しだけ辺りを散策してみたのですが、ここ林の中みたいなんです。街灯も無くって。」


確かに、辺りはとても暗く、街灯はおろか、家や車のヘッドライトさえ見つけられない。


「ここ、どこなんだ?」


俺の言葉に、二人とも、う~ん?と顔を見合わす。


「俺たちにもわからないんだよ。道成を置いてどこにも行けなかったし。ここがどこなのかまだ俺たちにも全然わからないんだ。」


雪近が少し不安そうな声で話してくれた。

雪近も、近藤もここがどこかわからなくって、不安が募ってるって感じだな…。

確かに、こんなに暗いと不安になるな。


都会育ちの俺はこんなに暗い場所に来たことはない。

見渡しても、満月に照らされた、草木が揺れていることしかわからなかった。


俺は、はっとして、


「二人は、壁の世界に行ったのか?なにがあった?」


と、訊ねてみた。


二人は不思議そうに首を傾げながら、


「私は、学校の前の坂道から、ここで目が覚めた記憶しかありませんが、道成さんはどこかに行ってたのですか?」


「壁は、覚えているか?」


「はい、坂道の下で、急に目の前に現れた建物みたいなのは、覚えてます。」


そうか。俺だけ次元の境界だったかに、行ったのか。それとも本当は夢を見ていただけじゃないのか。まぁどっちにしろ、話した所で二人になんて説明すればいいかもわかんねぇし、黙っておくか。


「道成?黙り込んでどうしたの?」


心配したのか、雪近が顔を覗き込んでくる。


「ん、ああ。いや、俺、変な夢見てたみたいなんだけど、忘れてしまったなぁとな。」


そっかそっかと、雪近は立ち上がる。


「ねぇ。どこか、人が居そうなところ探しに行かない?ここがどこかわかるかもしれないし。と言うか、俺めちゃくちゃ腹へっちゃって。」


ぐぅぅぅぅ。

雪近の腹が鳴った。


へへって笑いながら、

「道成、立って。」

と、こちらに手を伸ばしてくる。


その手を掴んで、俺も立ち上がった。


少しだけ、肌寒い風が吹いたかと思うと、


ぐぅぅぅぅる。

俺の腹もなった。



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