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大陸英雄戦記  作者: 悪一
砂漠の嵐
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黒海艦隊

2/2

 グライコス地方アルマラ海沿岸、バイラに展開していたオストマルク帝国軍第155旅団が、深い霧の中それを偶然発見した。


「おい、あれはなんだ……?」

「そりゃお前、船だろう」


 霧の中、それを友軍の船と見誤っても仕方ない事である。それに彼らは海軍に詳しくない陸軍の将兵なのだから。

 故に彼らは無警戒で、あろうことか友軍の船を拝もうと海岸に集まって手を振ろうとする者もあった。


 しかし、違和感はすぐに気付く。

 やってきた船は大型で、そして北東方向からやってきたということを。


「……まさか」


 そう口にした瞬間、彼らは事実を見ることになる。


 キリス第二帝国海軍黒海艦隊所属の一等戦列艦「バルトロマイオス」率いる艦隊の上級魔術攻撃によって、第155旅団は4割の被害を出した。


 10月26日、9時45分のことである。




---




 艦隊の攻撃を受けた第155旅団を始め、アルマラ海沿岸に展開するオストマルク帝国軍が悲鳴にも似た伝令を各所に出し、そしてその報告がフィーネさんを経由してイムロズ島にもたらされたのが10月27日のことだった。


 それを知った俺としては、つい舌打ちをしてしまった。


「畜生、逆か!」


 なんともまぁ、醜い光景だったと思う。


「……はぁ、すみませんフィーネさん。報告の続きを」

「いえ。大丈夫です」


 フィーネさんは何も言わず表情にも出さず淡々としていたけど、内心嫌われていないかと不安になるところではある。


「アルマラ海沿岸にて我が軍を襲ったのは、キリス海軍黒海艦隊。戦列艦2隻、巡防艦7隻、計9隻です」

「対して、グライコス艦隊は戦列艦1隻、巡防艦5隻か……」


 数的不利、である。

 しかもこっちは新編された艦隊、対して向こうはそうではない。どうあがいても質的にも不利。


「敵艦隊の動向は不規則で、どう出るかわかりません」

「……いや、たぶんヘレス海峡を突破する気なんだと思います」


 なんともまぁ、大胆かつ大規模な作戦だ。


 南大陸艦隊を陽動としてイズミル封鎖艦隊の戦力を分散させる。

 そして黒海艦隊がアルマラ海で対地支援攻撃を開始。それに対応すべく、イズミル封鎖艦隊の戦力をさらに分散させる。


 しかしヘレス海峡はかなり狭隘だ。黒海艦隊を襲撃しようと無理に北上すれば、ダーダネルスから攻撃が飛んできて、傷ついたところで黒海艦隊が地の利を生かして戦う。

 イズミル艦隊が封鎖線を突破して挟撃する、という選択肢もあるか。


 封鎖艦隊が北上しない場合、その時は黒海艦隊とイズミル艦隊で封鎖艦隊を挟撃すれば済む話だ。


 そしてイズミル艦隊と黒海艦隊を合流させる、ということだろう。


 かなりリスクのある作戦だが、成功すればエーゲ海の制海権は再び五分に戻る。既に海上輸送による兵站網を築いているオストマルクとしては、すこしキツイ展開だ。


「どうするつもりです?」

「……イズミル封鎖艦隊にはそのままイズミルを固めてもらいましょう。黒海艦隊の南下は我々で防ぎます。封鎖艦隊になんとか連絡を取ってください」


 無論、それはライザー准将の名前で、であるが。

 あと、アルマラ海沿岸に展開する諸部隊に警報を発しないといけない……が、まぁこれは現地司令官が独自に判断できるか。


「了解ですが……、我々だけで防ぎきれますか?」

「まぁ、数の上でも質の上でも無理ですね」

「では……」

「でもまぁ、勝てないまでも敵の南下を防げればそれでいいわけです。そういうことであれば、まだやりようがありますよ」


 無論、楽観視できる状況にはない。

 でもなにもしないわけにもいかない。


 普通にやったら負ける。けど……、


「とりあえずライザー准将と会って情報を共有しましょうか」


 普通にやらなければ、勝機はある。


 さて、どういう風に料理してやろうかと考えていた時、フィーネさんが口を開いた。


「ところで少佐。もう1つ報告があります」

「はい? なんでしょう?」

「マリノフスカ少佐が風邪を引きました」


 ………………?


「えっ?」


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