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大陸英雄戦記  作者: 悪一
第60代皇帝
269/496

草案

 4月20日15時丁度。

 1分どころか1秒の狂いもなく、カステレット砦内にある宝玉の間において後世「カステレット講和会議」と呼ばれることになる講和会議の幕が上がった。


 初日である今日の会議、「第一回本会議」の内容は、序盤はそんなに重要なものではなかった。会議をどう運営し、どのように進めるか。そして議長は誰か、決裁権の範囲はどれほどか。それを議論する。議論といっても、このような会議では慣習に則って云々するので、この段階で異論が出ることは少なく、そして今回の場合もそうだった。


 問題が起きるのはその後、シレジア王国が作成した講和条約草案の提出である。提出だけで、特に議論することはない。東大陸帝国側も草案を精査し、どれを受け入れてどれを拒否する時間がないと判断しようがないからだ。

 条約提出の後は「双方ともに実りある会議にしましょう」と締め括られ、両国代表者の笑顔の握手によって初日の会議が終了し、その後各国外交使節団と夕食を共にした……らしい。


 らしいというのは、一介の佐官である俺が会議や会食に出席できるはずもなく、エミリア殿下から聞いただけだから。

 それをどうこう言っても仕方ないし、たぶん俺が出席しても緊張で縮こまるだけなので不満はない。エミリア殿下を直接支えることはできないが、会議前後ならばそれができる。


 会食が終了してから暫く経った、20時20分。俺、エミリア殿下、そしてフィーネさんが適当な部屋に集まり、双方が提出した講和条約草案を分析を始めた。サラとマヤさんは扉の外で待機し、万が一に備えてもらう。


 ……てか今さらだけど女子率高いな今回。別に困らないからいいけど。


 それはさておき、王国側が提出した条約草案の分析を始める。外交交渉に来た王女が自国提出の草案の内容を詳しく知るのが今日が初めて、なんていうのは普通は恥とも言える事態だ。どれもこれも公開を渋った大公が悪い。

 だからちゃんと勉強しなくちゃね。


 シレジア王国提出の講和条約草案、要点だけを纏めると以下の通り。


 一、本条約の締結をもって、両国の戦争は終結すること。

 二、東大陸帝国政府は、帝国西部ヴァラヴィリエとその周辺地域及び村落、帝国西部ルドミナとその周辺地域及び村落をシレジア王国に譲与すること。両地域に存在する東大陸帝国政府が保有する一切の公共財産についても同様である。

 三、東大陸帝国政府は、シレジア王国が戦争のために使用した費用を全額払い戻すこと。払い戻しの金額や時期、方法は別途協議の上で決定すること。

 四、両国が保有する捕虜に関してはその全てを解放すること。捕虜解放にかかる費用は、全て東大陸帝国政府が負担すること。

 五、東大陸帝国政府は、ラスキノ自由国が完全無欠の独立国であることを確認すること。


 とまぁ、こんな感じだ。

 言ってしまえば、これはギニエ休戦協定の内容をさらに深めたものとなる。


 一に関しては説明不要。

 二の前半部分も説明はいらないかな。後半部分は、単に「その都市にある役所や駐屯地などの不動産、書類や軍事物資などの動産も貰うからね」という意味。

 三は賠償金の話。

 四も説明不要。ただし捕虜が全員帝国政府に従順とは限らないけどな!

 五に関してはおまけみたいなもんだ。東大陸帝国政府は未だラスキノを独立国家として認めてないからちゃんと認めてあげてね、ということ。


 ……なんていうか、ケチがつけようがないくらいまともな内容だ。カロル大公のことだから「シレジアは何もいりません! 平和さえあればそれでいいんです!」って両手を上げながら言うのかと思ったんだけど。


「まぁ、対外的にも対内的にも色々と言っておかないといけませんからね。一応勝者ですから」


 と、エミリア殿下。

 実際その通りだ。勝者が勝者らしくしていないと、舐められる以前に怪しさ満点だ。


 問題は、この草案にどれほどエミリア殿下の意見を通せるかだが、それは東大陸帝国側の返答を聞いてから判断するしかない。




---




 2日後、「第二回本会議」が開かれ、東大陸帝国外交使節団首席セルゲイ・ロマノフが、シレジア王国側が提出した草案について返答した。その気になる答えは……


「一、四、五については完全に同意、三については『今後の協議次第』と言われましたが大筋で合意。ですが二についてはシレジアに占領されてすらいない地域を割譲することはできない……とのことです」

「それはもう、完全拒否と言っていいのでは……」


 二の領土割譲については言わずもがな。三の賠償金についても「大金払うつもりはない」と言っているようなものだ。それじゃ帝国の負けではなくて、引き分けじゃないか。

 フィーネさんも俺と同じ意見のようで、


「やはり帝国は負けていない、という意志の表明なのでしょうか。気持ちはわかりますが、やはりここからどう有利に持っていくかが問題ですね……」

「えぇ。あるいはそうやって会議を長引かせ、私達が外国にいる間シレジアに残る叔父様……カロル大公に行動の自由を与える意図があるやもしれません」


 このような講和会議、時間がかかることが通例だ。今回は交戦国が2ヶ国だけなのでそんなに長くならないだろうが、それでも1ヶ月はかかると見るべきだ。もしこれが多対多の戦争だったら、利権の奪い合いと折衝に時間を割かれ、半年以上は覚悟しなければならなくなる。


 こりゃ、結構苦労するかもしれないな。

フィーネさんの髪色について


茶色か銀色かという意見が多いようですね。私もどっちか迷いますね。

というわけで気になったのでもうツイッター投票機能を使います。

→https://twitter.com/waru_ichi/status/668862334178201601


今回は4択。銀、栗、焦げ茶、紅茶色。


もしかしたら投票結果が書籍版の絵に採用される……かも?(結局は私の気分次第ですし深く考えなくても大丈夫です。参考にする程度です)

よろしくお願いします。


追記)クラウディアお姉様の髪色もフィーネさんと同じになります

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