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第1話

 VRMMORPG全盛期の現代において、俺がプレイしている『フロンティア・リーダー・オンライン』は、ちょっと珍しいゲームである。

 どの辺が珍しいかというと、このゲームは前世紀に唱えられた「ゲームは1日1時間まで」という良い子のためのルールを、忠実に守らせようとしているのである。


 このゲームでは、プレイヤーは1つのアカウントにつき、1日に1時間しかプレイできない。

 その制限時間を過ぎると、強制ログアウトさせられるという仕様になっている。


 この仕様はお子様を持つ親に受けた。

 つまり、子どもが「毎日ゲームばかりやっている」という状態にならないように、「ほかのはダメだけど、このゲームならいいわよ」と言って子どもに買い与えるわけだ。

 ちなみに、中学生である俺がこのゲームを始めたのも、その口である。


 そして結果として、この『フロンティア・リーダー・オンライン』──通称『FLO』は、なかなかのヒット作となった。

 後追いで同じ仕様を持ったVRMMOも多数出たほどで、作品タイトル通りに、時代を未開拓の地へと導く先導者となったのである。


 ちなみに、廃人クラスのプレイヤーとなると複数アカウントを購入して複数キャラ回して色々とやるらしいから、そういった連中は結果としては1日のプレイ時間1時間とはならないんだが。

 まあそういうのは全体から見てごくわずか。

 大部分のプレイヤーは、1日1時間でプレイしている。


 さてゲーム内容はというと、スタート地点となる始まりの街を起点にして、下層へ下層へと潜り、人類の版図を拡大してゆくというものである。

 サービス開始当初は、始まりの街と、第1階層のダンジョンしか行ける場所がなかったのだが、サービス開始から1年ほどが経過した今では、第17階層までのダンジョンが突破され、それに伴っていくつかの下層の街が解放されていた。


 というわけで、最前線でゲーム攻略をやっている攻略組は、現在は第18階層の攻略に取り掛かっているわけなのだが。


 俺はというと、第12階層の『グリズリー・フォレスト』と呼ばれる森林地帯に入り浸って、森の熊さんを狩り続ける毎日を送っていた。




 木々が生い茂り、ところどころ木漏れ日が射し込む森林地帯。

 そこで俺は、いつものようにグリズリーたちとじゃれ合っていた。


「よっ、とっ、とっ──ほっ!」


 俺は敵対する3匹のグリズリーの鉤爪攻撃を掻い潜り、そのうち立ち上がっている1匹の懐に潜り込んで格闘スキル《ガトリングジャブ》を放つ。


 俺の左手に青白い光のスキルエフェクトが宿ると、次の瞬間、パパパパッっと閃光のような速度で俺の左手がジャブを連打、グリズリーのボディに9連撃が突き刺さる。

 追って、グリズリーのHPバーが一気に全損し、その本体が光の粒となって砕け散った。


「次は──」


 俺は次の獲物へと視線を走らせる。

 この段に至って、残り2匹のグリズリーはまだ、攻撃モーションによって崩した体勢を、立て直しきっていない。


 その隙に俺は、プロバスケットボール選手のトップスピードにも匹敵する敏捷性でステップを踏み、別の1匹に再びの《ガトリングジャブ》。

 その結果を待たずに、さらに残った1匹に対しても、踏み込んで《ガトリングジャブ》を放つ。


 一拍置いて、バン、バンとグリズリーたちが砕け散った。

 『Congratulations!』の文字が中空に浮かぶとともに、戦闘勝利のファンファーレが鳴る。


「ふぅ……そろそろ1日1レベルアップも厳しくなってきたか」


 戦闘を終えた俺は、リザルトの経験値表示を感慨深く眺める。


 俺がこの第12階層に篭り始めてから、そろそろ半年ほどが経過する。

 篭り始めた当初は、1日に2~3レベルアップもできるおいしい狩場だったのだが、最近ではさすがに伸び悩みを感じてきている。


 実のところ、この第12階層を攻めるまでは、俺もトップ攻略組だった。

 だが攻略組が第13階層を攻め始めたあたりで、俺はその群れとは袂を分かつ。

 彼らとは利害が一致しなくなったからだ。


 第13階層から、トップ攻略組の攻略の進度は急激に落ち始めた。

 第12階層までは月に2階層のペースで順調に進軍を続けていたのだが、第13階層以降の攻略には、およそ1月近くを要したのである。

 これは何故かと言えば、そこから極端に、遭遇する敵の強さが上がったからだ。


 結果として、第13階層以降の攻略組の進軍は、死屍累々としたものになった。

 死んでも街ですぐ蘇るシステムなのだが、1人の1日の平均死亡率が150%などという事態である。

 1度死んでまた死ぬ確率が50%の意味。


 このため、第13階層以降は、攻略組のメンバーはボロボロと抜け落ちていった。

 抜け落ちたメンバー曰く、あまりにもカツカツすぎる攻略は、「楽しくない」のである。


 かく言う俺もその1人で、ほかの連中とは微妙に理由が違う気もするが、最深階層の攻略を進めるのが楽しくないので、ここ第12階層で日々黙々と森の熊さんを狩り続けていた。


 俺はこのゲーム内であっても、死ぬのが嫌いだった。

 無論、『負け』を嫌うだいたいのゲーマーにとってもそれはそうなのだが、俺が嫌うのは、もっと純粋に、デスペナルティである。


 このゲームでは、死亡時のペナルティとして、次のレベルアップのために貯めている経験値の半分が失われる。

 俺はそれが、めちゃくちゃ嫌だった。


 俺は実は、何となく攻略組と同じ立ち位置に付いてはいたものの、このゲームのどこを楽しんでいるかといえば、攻略を楽しんでいるのではなかった。

 俺は、レベルアップすること、成長することそのものを楽しみに、ゲームをしているのである。


 第12階層までは、俺の目的のための行動と、攻略組の行動がたまたま一致していたにすぎない。

 だが、第13階層以降は、一致しなくなった。

 最も効率の良い成長をするためには、第13階層以降を進むのは、得策ではないと俺は判断したのである。


 そんなわけで俺は、第12階層までで最も経験値取得効率がいいと判断した、この『グリズリー・フォレスト』に篭ることにした。

 そうして半年ほどの間、毎日黙々とここに潜り続け、今に至るわけだ。




 俺は今日1日の1時間を終え、ゲームからログアウトする。

 そして自室のベッドの上で、ステータスを開き、


「うへへへへ……」


 そこに並んでいる数値を見て、満悦する。


 多分、俺のこの強さは、ゲーム内でも有数の存在だろうと思っている。

 ひょっとすると、もしかするとだが、俺が『FLO』の全プレイヤー中で、レベル首位なんてこともあるかもしれない。


 攻略組は、確かに下層の敵から高経験値を得ているからそれなりのレベルではあるんだろうけど、俺の予想によれば、それよりも1日150%の確率で発生するデスペナルティによって失うものの方が大きいはずだ。

 というか、ほとんどレベル上がんねぇんじゃねぇこれ?と思うぐらいなのだが、実際のところは攻略組の連中に聞かないと分からない。

 ただ確実に言えることは、最先端にいるプレイヤーたちがレベル的に最強だとは、限らないということだ。


 俺がそんなことを考えながらパソコンを弄っていると、インターネット上の掲示板で、『FLO』攻略組の愚痴が目に入った。


 曰く、「第18階層の難易度は、これまでとは次元が違う。無理ゲー」なのだそうだ。

 俺の印象で言えば、第13階層以降の段階ですでに次元が1個動いているわけで、その環境に慣らされた連中が、さらに次元が違うなどと言うとは……


「よくやるよ、本当……」


 俺はそれを、まったく他人事のように眺めながら、マウスをカチカチとクリックしていた。

 だが次の瞬間、俺はガバッとモニターに食らいつく。


「な……なんだこの経験値は……!」


 その情報サイトに掲載されたエネミーデータを見て、俺はごくりと唾を飲み込む。

 そこに表示されていたエネミーの経験値は、どれもグリズリーの5倍にも匹敵するものだった。


 だいたい、これまで最下層のエネミーと言っても、たいていはグリズリーの1.1~1.2倍程度、最も多いものでもグリズリーの1.5倍程度の経験値しか持ち合わせていなかった。

 それが、第18階層に来て、突然の5倍である。

 俺は様々な情報サイトを回って裏を取り、その数値が、単なる誤りでないことを確認する。


「そうだよな……そうじゃなきゃおかしいんだ。ようやく運営も経験値バランスのまずさに気付いたか。よーしよしよし、キタキタキタァーッ!」


 俺は夕焼けの赤茶けた光が射し込む部屋の中で1人、くるくると興奮していた。




「リューく~ん!」


 翌朝。

 登校路で、幼馴染みの三国みくに奏多かなたが後ろから追いかけてきて、俺の横に並ぶ。

 セーラー服姿で黒髪ショートのこいつは、見飽きている俺にはよく分からないけど、友人らに聞いたら、間違いなく美少女の部類に入るらしい。


 ちなみにリューくんというのは俺のこと。

 俺の名前が冷峰れいほう龍一りゅういちなので、こいつはそう呼んでいる。


「リューくん最近ひどいよ~。どうして私が迎えに行くまで待っててくれないの?」


 奏多はぷんすかという擬音が出そうな雰囲気で、コミカルに怒っていた。


「あのなぁ……もう幼なじみで一緒に登校するって歳でもねぇだろ」


「ぷぅ。リューくんはいつからそんなに照れ屋さんになっちゃったのかな。少し前までは一緒にお風呂だって入ってたのに」


「……お前それ、ほかの奴がいるところで言ったらグーで殴るからな」


 ……本気で、小5までこいつと一緒に風呂入ってたなんて知られたら、俺の学校での立場が即死する。

 ああ、あのときは俺もまだ、それがどれだけ異常なことなのかって知らなかっただけなんだよ。嘘じゃない。信じてくれ。


「グーで殴られるより、唇を塞がれる方がいいな~」


 ……奏多こいつも、あの頃まではこんな破廉恥な子じゃなかったんだ。

 それが中学に入ったあたりから妙に色気づいて、こんな風に俺をおちょくるようになった……気がする。


 そんな風に、どこに出しても恥ずかしい幼馴染みと一緒に登校路を歩いていると、行く先の横道からもう1人、知り合いの女子が歩み出てきた。


 桐谷きりや美鈴みすず

 その明るいブラウンのロングヘアーを揺らすセーラー服姿の美少女は、学校の男子にはかなりの人気があり、ファンクラブまであるほどだ。


 しかし、このときの美鈴は普段の尊大……もとい、普段の明るい雰囲気はなく、何かイライラとしたような思いつめた顔をしていた。

 美鈴はこちらに気付くと、「おはよ」と形だけ挨拶をし、また俯きながら学校の方へと歩いてゆく。


「美鈴、入れ込み過ぎじゃねぇのか」


 俺が小走りで美鈴に追いつきそう言うと、美鈴は一瞬、睨みつけるような表情で俺を見て、


「……はんっ。攻略を諦めた雑魚が、知った口聞いてんじゃないわよ」


 そう言って、俺を拒絶するように早歩きで先に行ってしまった。


「何あれ~。美鈴ちゃん感じ悪いな~」


 俺の横で奏多がまたぷんすかしているが、俺には美鈴の気持ちがだいたい分かってしまったから、仕方ねぇなぁと思うだけだった。


 桐谷美鈴。

 彼女こそは、現在『FLO』全体で20人程度にまで減ったと言われるトップ攻略組の、1つの有力なパーティを率いるリーダーである。


 美鈴は俺と同じタイミング、『FLO』のサービス開始当初からゲームを続けている古強者で、自分のファンクラブの会員たちを引きつれて、トップ攻略組に食い込んだ。

 当初は利害の一致した俺は、美鈴のパーティに加入して一緒にボス攻略に挑んだこともある。


 俺が第12階層で留まることを宣言すると、その頃の美鈴は、


「好きにすればいいわ。別に龍一がいなくたって、私たちの実力だけで攻略はできるんだから」


 などと言っていた。


 だが、第16階層あたりから徐々に、美鈴はカリカリしていった。

 攻略がうまくいかない日々が続き、それによってイライラを募らせているように見えた。


 美鈴が俺を「雑魚」と罵るようになったのもそのあたりからで、俺はそんな気分になってまでする攻略の何が楽しいのかと、常々疑問に思っていた。

 だが美鈴には、トップ攻略組リーダーとしてのプライドと責任感があり、それが彼女を前へ前へと推し進めているようだった。




 ──キーン、コーン、カーン、コーン。


 学校が終わった。

 掃除当番で遅くなっちまったが、さっさと帰らないと。

 そしてお待ちかねの『FLO』をやるんだ。


 久々にワクワク感が抑えられなくなっていた。

 何しろ経験値5倍だ。

 1日そこで稼ぎ続けたら、どれだけレベルが上がるのか。


 まあまあ、計算しようと思えばできるんだが、そういうのは野暮ってものだ。

 やってみて結果を見るのが楽しいのだ。


 問題は、第18階層のエネミーを相手にして、まともに立ち回れるかどうかだ。

 トップ攻略組の連中が無理ゲーと言ったバランスである。

 やってみなけりゃ分からない部分はあるんだが……。


 ──と、そんなことを考えながら、学校の正門を通り抜けようとしたときだった。


「龍一」


 横合いから聞こえてきたのは、美鈴の声だった。

 見ると、美鈴とその親衛隊ファンクラブの男3人、それに奏多が、校門脇に立っていた。


 腰に両手を当て、ふんぞり返った美鈴が言う。


「あなた、第18階層なんか簡単にクリアできるそうじゃない。大したものね、是非私たちも一緒に連れて行ってくれないかしら? 最強様のお手並みを、是非とも拝見したいわ」


「……はぁ?」


 俺は思わず、気の抜けた疑問符を吐いてしまう。

 なんだそりゃ、である。


「誰がそんなこと言ったんだ? っていうか、『そのクリアできる』ってのは、俺1人でってことか? 元々5人パーティで攻める想定の『FLO』で、いくらなんでも無茶苦茶すぎんだろ」


 俺がそう言うと、美鈴は「ふんっ」と鼻で笑って、


「……だ、そうだけど? あなた、嘘を言ったのかしら?」


 そう、話を振った。

 話を振った先は、奏多だった。


 奏多はてってってと、俺の傍らに走り寄ってきて、俺の制服にひしとしがみつくと、


「……嘘なんて言ってないもん。……リューくんは最強だもん。雑魚なんかじゃないもん。美鈴ちゃんなんかに、絶対負けないもん」


 奏多は何やら目に涙をいっぱいに溜めながら、そう言った。


 ……あー、なるほど、だいたい話が読めた。

 犯人は奏多おまえか。


 大方、美鈴が奏多に、「龍一は雑魚」的なことを言って、それに対して奏多が「リューくんは最強だもん」とか言って、あとは売り言葉に買い言葉で話が大きくなったんだろう。

 俺も奏多に、「多分俺、『FLO』で最強かもしれない」的なことを吹いてたからなぁ……うーん、口は災いの元ってのはこの事か。


 俺は美鈴に言う。


「あのなぁ、美鈴……。こいつは『FLO』のことなんか何も分かってねぇんだから、お前もそんな奴の言うこと真に受けんなよ」


「ふんっ、関係ないわね。嘘をついたっていうなら、約束通りに罰を受けてもらうまでよ」


 え、何それ。

 約束? 罰?


「こいつ、嘘だったら土下座して謝りますとでも約束したの?」


 バカだなー、まあ自業自得だよ、これに懲りて口から出まかせでいい加減なことを言う癖を直してくれればこれ幸い、なんて俺は思ったのだが。

 次に美鈴の口から出た言葉を聞いて、俺は目が点になった。


「そんなくだらないものではないわ。──さあ奏多さん、約束通り、脱ぎなさい」


「……は?」


 え……こいつ今、なんて言った。

 『脱ぎなさい』と言ったか?


 脱ぎなさいって……何を、何を脱ぐの?

 お兄さん、ちょっと興味しんしんなんだけど。


「『嘘だったら、ストリップショーでも何でもやる』って、約束したわよね? ほら、早くなさいよ」


 美鈴は嗜虐的な笑みを浮かべて、奏多を責めたてる。


 奏多、お前ってやつは、またなんと破廉恥な約束をしてしまったのか……。

 最近どんどんはしたなくなっていくかと思っていたら、ついに露出癖にまで到達してしまっていたの?


 そう思って傍らの奏多を見ると──意外にもそこには、顔を真っ赤にして涙を浮かべ、屈辱に満ちた表情を浮かべる少女の姿があった。


「嘘なんかついてないもん……リューくんは最強なんだもん。だってリューくんが言ってたんだもん……リューくんは嘘つかないもん……」


 奏多は、そう呟いていた。


 …………。


「ほら、さっさと脱げよ!」

「自分で言ったことなんだから守れよ!」


 美鈴の親衛隊ファンクラブの男子たちまでが、奏多を責めたてはじめる。

 それはやがて、校門前での「脱げ」コールへと変わってゆく。


 ……こいつら、奏多に何か恨みでもあんのか、と思う。

 だがすぐに、そうじゃないなと気付いた。


 これは、鬱憤晴らしなのだ。

 鬱憤が溜まっているところに、奏多が変に噛みついて来たから、ただそれを血祭りにあげて憂さ晴らしをしようとしているのだ。


「脱ーげ!」

「脱ーげっ!」


 まあまあ、奏多の自業自得ではある。

 だが──


「……嘘と決まったわけじゃねぇだろ」


「……は?」


 ぽつりと呟いた俺の言葉に、嗜虐的に歪んでいた美鈴の表情が凍りつく。


「俺が1人で第18階層をクリアして見せりゃあ、奏多は嘘をついたことにはならねぇだろって言ってんだよ」


 これが、俺が撒いた種でもあるんだったら──

 そいつは、俺も一緒に背負ったっていいはずだ。


 その俺の切った啖呵に、美鈴は顔を引きつらせる。


「はっ、ははっ……! 私たちが4人がかりでも歯が立たない第18階層を、龍一、あなた1人でクリアできるっていうの……? あはっ、あっはははははは!」


 美鈴は哄笑する。

 まるで壊れたお嬢様キャラのように笑う。


 そしてその後に──キレた。


「ふざけないで! ……そこまで言っておいて、できなかったときには、どうなるか分かってんでしょうね」


「ああ。そのときは俺も奏多と一緒に、ストリップショーでも何でもやってやるよ。だが──こっちにだけ賭けのリスクを押し付けるってのは、筋が通らないんじゃねぇのか?」


 この俺の言葉に、美鈴がぐっと言葉を詰まらせる。

 だが次の瞬間、美鈴は獰猛な笑みを浮かべて、言い放つ。


「……いいわよ。もしあなたがそれをできたなら、私が脱いであげるわ。そんなこと、絶対にできるわけないもの」


 こうして俺たちは、お互いに後に退けない戦いへと、足を踏み入れることになった。


「りゅ、リューくんごめんね。私、そんなつもりじゃ……」


 俺の傍らで成り行きをハラハラと見守っていた奏多が、泣きそうな顔で俺を見上げる。

 なんだ、こいつまだ、こんな顔もするんだな。


 俺はその奏多の頭に手を置いて、言った。


「まあ任せろ。俺は──『FLO』最強のプレイヤーだ」


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