第一話「謎の占い師」
「フェっふェッフェ、今日は何用かねぇ!?」
真っ赤なクロスを敷いた壇上に、水晶と台座を飾った謎の占い師が出てきた。
おい、ここはどこだ!? アキラは後ずさった。
だが、後ろに下がれない。なぜか自身の意識が「後ろには道がない」と悟っている。
気づいたら、謎の占い師の格好をしたおばさ...
「あんた、死にたいのかぇ?!」
いやな余寒がして、アキラは思い直す(この人は心の中が読めるのか?
占い師である彼女の店は人通りからやや外れた目立たない路地裏で、
色とりどりの珠を7つ、お手玉していた奇妙な姿で。
お手玉のように見えたけど、実際は違った。7つの珠は何かの力で浮いていた。
得体が知れない。あきらは無意識に非日常な光景に興味を覚える。
「た、たまたまが浮いてる」
「...あんたそれ、危険な発言だよ」
老b.お姉さんがそう口にした時、アキラの股間が上方に引っ張られてしまっ
「おおおおおお、きんt、いったいっmういった。。いったあい。。!!」
「言葉には気をつけるんだねぇ...」
うっしっし、と占い師は不敵な笑みを浮かべた。
さてっ、と気を取り直した占い師は、招かれた来客「あきら」に声をかける。
「あんたがココに来た理由は大体メボシはつくんだが。
あらかた、俺TUEEEE!!を望んで異世界に迷い込んだのかぇ?
若いってのはホント何でもありだねぇ。年取ってから黒歴史に嘆いても知らんがねぇ〜www」
ふぇっふぇっっふぇ、とまたも不敵な笑みを浮かべた。占い師。
ほんとに、このばーさんは心を読んでるかのようだ。
そのとーり。アキラは、常日頃から自らが思うがままの世界を夢見ていた。
何もかも、毎日が自分の好きな様に動ける日々。邪魔するものは何もない!
俺TUEEE
EEEEEEE!!!!!で最強だ。ハーレムも夢じゃない!
現実世界の死んだ魚のような芽をしたクラスメートには絶対にお役に務まらないような...
快活美少女テンプレで男心をぐわっとつかむ、そんなヒロインたちと夢の冒険に立ち回りたいのだ。
そしてゆくゆくは偉業を成し遂げた英雄として、いつまでも世に語り継がれるべき伝説の存在となるのだ。
「おばs、、いえ、お姉さまは一体何もの?」
「わしゃ、選ばれし者たちの望みを叶える神の御使いだよ。
汚れを知らない純粋なチェリーの蕾に、祝福を与えるべくしてココにいるのさ。
あんたは見たところ底知れない魔力が根付いてるねぇ。あと14年もしたら立派な魔法使いだろうねぇ」
うっしっし、と占い師はまたもや不敵な笑みを浮かべた。
そうか、魔法使いか。魔法使いには子供の頃からあこがれていた。
あと14年ということはアキラは今16歳だから、30歳の誕生日を迎えるときには厳しい修業を経て、立派な魔法使いになっていることだろう。
アキラは胸が踊った。
「そうか、俺にも魔力が宿ってるんだな? なんかこう、手から【ふぁいやー】って出来るんだな?」
「そうだねぇ。ひとまずあんたの属性でも調べて差し上げようかぇ」
そう言って、占い師は7つの水晶球を目の前でぐるり、ひとりでに回転させた。
7つの色は一つの輪となり、虹色の光を曲線で描いて、あきらの魔力と対話していく。
アキラは素質があるからか、彼らの声?を聞いた気がした。
『んーこのこはパットしないわねわたしパス』無
『あら、かわいいこじゃないおねーさんはこのみだわ♡』緑
『のーこめんと』蒼
『こいつマズそう』茶
『キシャぁあゝアア』黒
『あ、アブナイメをしてるワ、かかわりたくないわ』白
『いやこいつはなかなかみどころがある』赤
・・・何か空耳にしてはきわどいセリフなような...
最終的に、2つの水晶の色がアキラに反応を示した。
涼しげな緑のオーラと、淡く燃え上がる緋色の影を見た気がした。
「ほぅ、2つの精霊に気に入られたか。風と火。なかなかの収穫だねぇ!」
「ふぁ、ふぁいやー使えるのか! 俺TUEEEEEE!!!!」
「粋がるでないぞぃ、チェリーボーイ! 世の中の厳しさを知らんうちは、用心深いに越したことはないねぇ! それに只で占ってやるだなんて誰が言ったかい。
ほれほれ、正規料金でこの金額じゃわい」
占い師は「1,000,000円」と書いた請求書を提示する。
ぼったくりだ。払えるわけがない。
「たわけ!!! 水晶珠2つも掻っ攫ってくんだよ。人身売買でもこの値段は破格さぇ! 払えんなら身体で払うしか無いねぇ?? ぇえ!?」
半ば強引に、適正の出た水晶珠2つを売り受けようとする占い師。
もはや何でもありだ。だが、アキラはそれを不当と断ることが出来ず、空気に飲まれて借金を背負ってしまうことになる。
お金がないなら、身体で稼げ!とのことだそうだ。
「なあに、簡単さ。魔法の力を貸してやるから、この世界の冒険者稼業で荒稼ぎしてくりゃいいのさ。お金が無いなら働いて差し出せってそういうことさね。未熟なあんたでも多少腕の立つ先輩に声を掛けといたから、そいつに色々習うといいさね」
さーさ、ほら行った行った。と、占い師は強引に店を片付ける。
これで今日の営業は終わりのようだ。
ふと、アキラの後ろに人影が現れた!
そうと決まれば早速冒険の始まりだぜ★