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6魔女

「…決めたわ!」


眠っていたイディスは、近くから発された大声に驚き、目を覚ました。目を覚ましたといっても、夢の中には変わりなかったようで、メアリアンが隣にいた。彼女は、手をにぎりしめ、何かを決意したかのような瞳で窓の外をにらんでいた。


「メ、メアリアン……?」


「あら?イディス、起こしてしまったわね……ごめんなさい」


「いえ、気にしないで、それよりどうしたの?」


イディスが起き上がり、ブランケットの上に座ると、メアリアンが語りだした。


「昨日、相談したいことがあるって言ったでしょう?そのことについてなんだけれど」


「ええ。どうしたの?」


「実は私、魔女に会いに行こうと考えてるの」


「ま、魔女?」


よく物語で聞いたことのあるフレーズに、どう反応するのが正解なのかイディスにはわからなかった。この世界の魔女が善い存在なのか悪い存在なのか知らなかったからだ。


「そう。魔女よ。昨日今日会ったあなたにいうことではないかもしれないけれど、止めないでねイディス、ばかげてるってわかってるけど、どうしても私は……」


「ちょっと待ってメアリアン。魔女?って何かしら?どうして会いに行くの?どこに行くの?」


イディスの言葉に一瞬あっけにとられたように目を見開いたメアリアンだったが、ああ、と一人納得して質問に答えた。


「そうよね、あなた、魔法も知らなかったんだものね……魔女を知らなくても不思議じゃないわ。最初から説明しなければね……」


「ご、ごめんなさい?」


気まずそうに謝るイディスに、メアリアンは微笑み説明を始めた。


「魔法については教えたわよね?誰にも言えない秘密があると、何か魔法が使えるって」


「ええ。だからメアリアンは魔法を使えるけど、使えることを誰にも知られないようにしたいのよね?秘密があるってあんまりいい印象もないし」


「そう。基本的に、秘密一つにつき魔法は一つ。だから、どんなに秘密主義な人でも、そんなに色々魔法が使えるわけじゃないのよ。普通はね。でも、魔女は桁が違うのよ」


「桁が違う?」


「ええ。彼女は、この世のあらゆるものを意のままにできるといわれてるの。魔法で何でもできる。だから、恐れられて魔女って呼ばれているの。しかも、そんなに魔法が使えるっていうことは、それなりに秘密を抱えているわけで、彼女が知らないことはないとも言われている。他人の秘密以外のすべての情報を持っているって言われてるのよ」


「あら、すごいのね」


そんな力があったらすぐにメアリアンの家を治してあげるのに、それでお菓子をいっぱい作り出して、お庭にはお花をたくさん生やして、あとドレスもほしいわ……と、とめどなく考えていたイディスを、メアリアンが現実に引き戻す。


「だから、私は、彼女を探し出して、いろいろ聞こうと思ってるの」


いろいろ、というのは、なぜメアリアンの家が立派な廃墟になってしまったか、などのことだろう。


「そうなの。……そうだ、ねぇメアリアン、私も行っていいかしら」


「えっ?イディスも?」


「だって、楽しそうなんだもの。魔女に会ってみたいわ。どこにいるの?」


昨日の遊園地でランタンの魔法やメアリアンの魔法を見たイディスは、もっと色々な魔法を見たいと考えた。どうせここは彼女の夢の中。痛い思いはしないだろう、と高をくくっていたのだ。それに、メアリアンの手伝いもしてあげたい。


「楽しそうって……イディス、あなた、わかってるかしら?魔女はどこにいるかわからないし、すっごく危険なのよ?どんな人なのかもわからないの」


「でも魔女に会いたいわ」


「さすがに自分より年下の女の子に一緒に来てもらうわけにはいかないわ。家族が心配するわよ?」


「家族……」


イディスは自宅のベッドで寝ているであろう両親と姉妹と猫に思いを馳せる。大丈夫だ、自分も今頃はなんの危険もない場所で寝息を立てていることだろう。それに夢の中で死ぬことはない。と彼女に言うわけにもいかず、どうやってメアリアンを説得するか悩んでいた。


「そうだわ。待って、メアリアン……私、家がどこにあるかわからないの!」


イディスが立ち上がり、腕を組み、胸をそらせて言い放つと、メアリアンは目を白黒させた。


「え?わからないって、あなた」


「……そう、帰り道がわからないの。気づいたら遊園地にいたの。だから行く当てがないし、せっかくなら魔女を探すあなたに同行して家を探したいの。一人になってまた怪物に襲われたら一巻の終わりよ。それに、メアリアンと私はお友達でしょう?お友達を独りで危険なところに行かせられないわ!ちょうどいいから、私も一緒に行かせて、メアリアン」


「本気なの?」


「あたりまえじゃない。」


ふん、と鼻息荒く言い終わるイディスを疑念の籠った眼で見やったメアリアンだったが、思わぬ申し出に、しばらく考えた後、よろしくね、とふわりと笑った。

読んでくださってありがとうございます。

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