1 遊園地
いつもは絵を描いてばっかであまり文字を書かないので、読みづらかったら申し訳ないです。
天にはまるでこの世のすべてのシャンデリアを砕いて散らかしたかのような星空が広がっていた。そんな星がこぼれてきそうな空の下で、寂しそうな遊園地が風にきしみながら佇んでいる。
遊園地を弱々しい風がくぐもった音楽を運んでいた。塗装の薄れたティーカップを超え、動かないローラーコースターに掠り、儚く点滅するネオンサインの下を通って、もうすぐ消えそうなくらいになってしまった風は、ようやくメリーゴーランドにたどり着いた。
プラスチックでできた馬の上では、器用に落ちないよう寝ている少女がいた。風は一息つくと、寝ている少女の耳に音楽を届け、鼓膜をやさしく叩いて、満足げに消えていった。
女の子は数回もぞもぞと動き、ゆっくりと顔をあげ、目をこすった。やがて、まるで星空のようにきらきらした目をぱちくりさせながら、起き上がった。
「わたしはどこにいるのかしら?」
息を漏らした彼女は、自分を包んでいる毛布を握りしめた。彼女はしばらくそうやって、プラスチックでできた馬の上で何度も瞬きをしていた。何度目をこらしても目の前に広がっているのは誰もいない遊園地で、彼女の寝室ではない。眼前の風景は妙に風景に見覚えがあって女の子は不気味に思った。
女の子は頭をかしげ、このおかしな状況に陥る前に何をしたか思い出そうとした。
ええと、そう。歯を磨いて、ロリーナとママとパパにおやすみを言ったわ。「イディス、おやすみなさい」ってみんなキスしてくれたもの。そのあと、飼い猫のダイナにおやすみのハグをして、ホットミルクを飲んで、ベッドにもぐりこんだわ。
イディスは手をぽんと叩き、ああ、と声を漏らした。これは夢なのね。
イディスは息を吸い込み、馬から飛び降りた。夢とはいえ、遊園地を独り占めするチャンス。イディスはそんなめったにない機会を無駄にするような子ではなかった。
あたりを見渡し、もう一度夜の空気を体いっぱい吸い込むと、イディスは夜の遊園地の探索を始めた。
遊園地の道はさまざまな彩度の青タイルで舗装され、歩くとこつこつと軽快な音を立てる。しかし、アトラクションの入り口に行っても、管理人がいないので何も楽しめない。イディスの足取りはそのうち重くなっていった。
深夜の誰もいない遊園地は恐ろしく静かだ。最初ははりきっていたイディスも、しばらくすると怖くなってしまった。不安になった彼女はほかに人がいないか探すことにした。
「こんばんは!」
イディスが小さな煙突のついたお店のドアを開け、声を張った。何の返事も帰ってこない。見渡しても誰かいる気配はなかった。
「どうして誰もいないのかしら……不気味ね。これじゃあローラーコースターも観覧車も乗れないわ。風船をくれる人もいないし、誰かいないかしら。」
隣のお店はどうかしらと、大きなキャンディの看板を付けたレストランの中を窓からのぞいたが、うっすらとオレンジ色の明かりがついているだけで誰もいなかった。
ほかのお店に入り声を張って呼んでも呼び鈴を鳴らしても無駄だった。それなら、と、遊園地のエントランスに行き、外に出てしまおうと歩き始めた。せっかくの遊園地だが遊べないなら意味がない。まったく、もったいない夢ね、気が使えないわ、蜂蜜の入ってないミルクのほうがまだましだわ、とイディスは悪態をついた。
さっそくまばゆい明かりに包まれたエントランスとおぼしき場所に向かい、フェンスを縦に伸ばしたような形をしたドアを引いた。しかし、イディスのような年端もいかない女の子の力では閉ざされた扉は開かない。イディスは頬を膨らませ、ふたたび遊園地探索に戻った。
そのうち遊園地の端から端まで歩いて疲れたイディスは、点滅する街頭に照らされたベンチに座り込み、うつむいてしまった。遠くからとぎれとぎれに陽気な音楽が流れてくる。イディスはそれを聞きながらぼんやりしていた。
「どうすればいいのかしら……誰もいないし、外にも出られないし、夢から覚めるまでずっとここで待ってなければならないのかしら?」
そう呟いてため息をつくと、遠くから何かが近づいてくるような音が聞こえてきた。