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GENE SERIES 03 魔法少女たちの輪舞曲  作者: クリスタルナオト
魔法少女大戦Ⅱ 紅炎竜・黄金嬢・嗜喰鬼
45/48

父との再会

神田家は元を辿れば地主の家系であった。小作人を多く抱え、農作物を多く蓄えていた豪農を先祖としている。関門市の歴史を紐解く史書にも神田家の先祖が語られており、付近の地帯で重要な存在であったようだ。

 そんな神田家に転機が訪れたのは戦後。GHQの政策による農地改革で多くの土地を失う羽目となった。そこで現当主の祖母にあたる神田かんだキクヨは手元に残った少ない土地を資産に遣り繰りし、着実に財産を増やしていった。旧財閥の一族を婿に迎え、神田家は土地運用で華やかな家庭と生活を得たのである。

現当主「神田かんだクラーク」の子息は三人いる。長女の悠華はるか、長男の悠樹はるき、次女の恋華れんか。その三人が、次世代において神田家を繁栄させる貴重な人物であるのは、想像に難くない。特に悠華は父親から当主の座を受け継ぐ者として期待されていた(神田家においては兄弟姉妹の中で出生の早い者が選ばれるようだ)。しかし悠華が大叔父のクリストハルトと母・麗華の間に出来た子だと発覚すると、すぐさま当主の座から下ろされてしまったのだ。


「貴女が細江中学に進学し、神田家から出て行った後、僕は父から次期当主として様々な勉学を教わることになりました。学生の教養科目は当然、政治・経済・法律・社会・国際言語…必要とあらば父の仕事も手伝いましたよ。実体験は勉強以上に貴重な学習です」


 神田邸の廊下を歩きながら悠樹が呟くように言った。その背後で悠華が彼についてくるように歩を進める。

 本来なら使用人が案内している筈だが、今日だけは一部の者を除き休暇を出しているようだ。

別段、彼に案内されなくとも自宅なので間取りは知っている。だが姉と弟の関係であろうと礼儀は必要と判断して仕方なく従っていた。


「私が数年かけてようやく修得した教育課程をたった一、二年で……やはり昔とは大違いなのね」

「ええ、もう僕は昔とは随分と違うのですよ。貴女の知る僕ではありません」

「二年前は(はなれ小僧だったくせに…ハンカチとティッシュが手放せない子供だったのに。可愛げないわね」

「そ、それは言わないでください!」


 不意を突かれたのか思わず体が硬直し、恥ずかしげに返答した。

 悠華の脳裏にはかつての悠樹の姿が浮かぶ。それは今のインテリ系の真面目な少年ではなく、彼女の言っていた臆病な少年の彼だった。

 悠華が一歳を迎える頃に母・麗華は双子を産んだ。それが悠樹と恋華である。二人は世に珍しい一卵性双生児の兄妹で当時は悠華以上に可愛がられていた。悠華も物心つくようになってから姉として二人と接し、遊び相手として共に仲良く関係を築いていた。

 その当時の悠樹はとにかく人見知りが激しく、他人と接するだけでも悠華や恋華の背後に隠れるような子供だったのを覚えている。感受性が強かったのか、動物でも虫でも何でも怯えていたものだ。


 ――しかし。


(やはり今の悠樹は昔とは違う……)


 神田家を出る前に見た内向的な性格はどこにも見られない。理路整然とした物腰で落ち着いており、かつての幼い容姿は第二次性徴期ということもあって若干の逞しさが見て窺える。悠華自身、彼の成長振りに今でも驚きを隠せなかった。


「……ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」

「はい、何でしょう」


 ふと、脳裏で浮かんだ疑問を悠樹に問いかけてみる。悠華に「洟垂れ小僧」と言われて動揺していた様子は既に冷静さを取り戻していた。


「急に次期神田家当主になって詰め込み教育をされて……少しでも私を恨んでない? もしそうなら恨んでいるって言ってもいいのよ。言いつけとはいえ家を出て行った私にも非があるから」


 神田家を取り巻く騒動で悠華は次期神田家当主の座を下ろされた。と、なれば自動的に神田家の当主を継ぐのは悠樹になる。

だが、その為の教育課程は容易なものではなく、悠華でさえ園児の頃から修得するのに月日を要した。悠樹も同様の教育を受けていないというわけではないが、容量に例えると悠華の半分以下にしか相当しない。

それを短期間で修得したということは、あまりにも余裕のない生活を送っていたのだろう。ある意味地獄の日々を味わったかもしれない。

そう考えていた悠華の内心では彼に対する申し訳のなさで溢れていた。

 彼女の意図を汲み取ったのか、悠樹が「やれやれ」といった様子で肩をすくめる。


「僕を哀れに感じたのですか。それなら別に貴女が心配することはありませんよ。別段、僕はこの生活が辛いとは思っていません。むしろチャンスだと考えております」

「え……?」

「本当のところ……僕は貴女が疎ましかったんですよ! 父上や母上、使用人に囲まれ愛されていた貴女がね! 次期当主として順調にエリートの道を歩む貴女を何とかして排除してやりたかった! それがやっと叶う……!」


 歪んだ笑みを浮かべる悠樹。


「悠樹、それ本気で言っているの!?」

「ええ、そうですとも! 嘘偽りない本当の事です!」


 彼の口から吐露された言葉の数々は、弟の身を案じていた悠華を激しく揺さぶるには十分であった。

確かに神田家当主との確執が起きてから家族関係はギクシャクしていた。しかし、悠華自身としてはそれまで送ってきた生活で家族や使用人に疎んじられることはなかった筈である。少なくともこれまでの行為で弟から憎まれる事など身に覚えがない。

だがこうして否定されたという事実だけで、悠華は身が引き裂かれる感覚に襲われた。

落胆する姉の様子を尻目に悠樹は踵を返して背を向けた。その表情からは如何にも満足げだった。


「ま、母上同様いずれは神田家から完全に去る運命です。その時が来るまで慈悲深い父上の庇護下で慎ましく学生生活を送ってください」


 本音を吐露したことで調子が乗ったのか悠樹は嫌味たっぷりの文句をさらりと吐いた。皮肉が含まれたそれは悠華の耳に届いたはずであったが。当の本人はショックでやや放心状態にあった。

 続けざまに「ああ、そうそう」と思いついたように言った。


「貴女の部屋にあった私物は全て廃棄させていただきましたよ」

「えっ?」


 先程の落ち込んだ表情と打って変わって間の抜けた様子で悠華が彼の背中を見上げる。

 私物というのは悠華が糸目をつけずに買い集めていた特撮関連グッズの事である。VHS、DVD、BD、OST、書籍、ソフビ等々と枚挙に暇がない。それ故に寮のある細江中学に進学する際に一部を持ち込んだだけで、残りは彼女が徐々に処理する形で神田家の自室に保存していたのである。

 手出し禁止と使用人に言いつけておいたのだが――。


「まさか、アレを……全部?」

「当然ですとも。処理すると貴女が仰っていたのに中々処理しないものですから使用人が困っていたところを僕が主導でやらせていただきました。それにしても何ですかあのゴミの山は。女子らしくない趣味ですねぇ」

「ゴミの山って! アレが私にとってどれだけ大切な宝かわかっていたでしょ。それを――」

「大切な私物ということであれば幾らでも回収する機会があったでしょうに。兎に角、全て廃棄させていただきましたよ」


 眉間に皺を寄せて詰め寄る悠華にたじろく素振りを見せず、歯に衣着せぬ物言いで終始圧倒する。

弟に言い負かされたものの、趣味の私物を捨てられたという事実に悠華は怒りで拳を強く握り締める。だが彼の背後で殴る構えをするだけで手を出すことはしなかった。


(落ち着いて……今、怒ったら私の立場が更にまずくなる……理性よ理性、気持ちを静めないと)


 握り拳で固まっていた右手を左手で抑え、目を瞑って逸る心を落ち着かせる。仕方ない、捨てられた物は取り戻せない、と自分に言い聞かせて未練を断ち切ることにした。

 そんなこんなで神田邸の廊下を暫く歩んだところで、二人は目的の場所へと辿り着いた。神田家現当主、神田 クラークの執務室である。親切なことに扉の上には「神田家当主執務室」と彫られた真鍮プレートがあった。


「さ、ここからは貴女だけで父上と会ってください。僕の役目はここまでです」

「一緒には入ってくれないのね」

「まさか。神田家を取り巻くトラブルに僕が巻き込まれるのは御免ですよ。もっとも今回は別の用件ですが。とはいえ、くれぐれも父上を怒らせないよう上手く取り成してください。それではまた」


 そそくさと悠華の傍から離れていき、廊下の角を曲がったところで姿が消える。きっとこの後は自室で勉強を続けるのだろう。実直な性格の悠樹なら有り得る話だ。

 それはともかくとして悠華はこれまでにない緊張感で心身を満たしていた。二年前、自分を否定した男が扉を隔てた先にいると思うと胸が張り裂けそうになる。

 扉をノックしようとするものの手が震えてしまい、無意識に引っ込めた。震えているのは手だけではない。足も僅かにブルブルと震えているのだ。

 さほど難しいことではない。神田家当主から用件を聞き終えればそれで済む話なのだ。

 ――それなのに。


(何を臆しているのよ私ったら……二年前とは違うんだから。ただ絶望して不貞腐れていた時の私じゃない。少しだけ勇気を出せばいいのよ)


 いつの間にか心臓の鼓動が早く打っていたことに気付き、落ち着かせようと左手で胸を抑える。深呼吸した後、意を決したように目を開ける。


――セレネ、奏美、フィーちゃん、テレジアちゃん。私に勇気を。


 知己の者の姿を思い浮かべ、悠華は木製の扉に手を伸ばしてノックする。

扉の向こうからは応答一つさえない。徹底的な排除と無視、恐らくそれが神田家当主の意思なのだろう。苦々しさを噛み締め、悠華は「失礼します」と一言おいて扉を開けた。

執務室に入った途端にどんよりとした重い空気が彼女の周辺を漂う。それとは対照的に執務室の内部は照明と陽光で明るかった。

室内は華麗さと簡素を取り合わせており、執務用の机や資料棚などが並んでいる以外にあまり物は置かれていなかった。壁や展示用のガラス棚には一族が遺した功績を称える賞状やトロフィーが並んでいる。しかしそれは一部に過ぎず、神田家にとって重要な功績のみが選ばれているようだ。

アンティーク調の執務机には仕事に関する書類が陳列していた。その他にも、業務用のノートPC、清書に使用する羽ペンとインク、これまたアンティーク調の電話機などが置かれている。


「……!」


神田家現当主は部屋の中央に鎮座していた。オフィスチェアに背を預けながら開いた窓の方を見つめ、時折吹く微風に靡かれていた。窓の先には手入れが込んだ庭園の景色が見てとれる。

しかし悠華の方には目もくれず、相変わらず背を向けている。やはりとはいえそれが彼の悠華に対する態度なのだろう。白髪の混じった後頭部だけが視界に入るだけで容姿は確認できなかった。

戸籍上の父親――と言えば、複雑な心境になるのだが――の神田 クラークの顔を忘れたわけではない。だが二年の期間が経てば容姿について曖昧な箇所が増えてしまう。


(あっ…)


 よく見ると電話機の横に小さな写真立てが置かれていた。仕事の際に移動させたのだろうか、悠華の方から写真が確認できる。そこには三人の男女が庭園を背景に写っていた。

 中央に二人の少年少女――悠樹と恋華だ。悠樹は真面目な表情、恋華はにこやかに笑顔を繕っていた。

その隣に壮年の男性が並んでいた。彫りの深い顔、痩せた頬、オールバックの髪型、コールマン髭――現当主の神田 クラークだ。

写真は恐らく数ヶ月前から一年前くらいに撮られたのだろう。背景の庭園が違う花で彩られていることから予想できる。しかし仲睦まじい三人の写真に悠華は寂寥感を覚えていた。

それも当然だ。被写体は『三人』で、悠華と母の麗華がいないのだ。かつての写真には『五人』で写っていたというのに。

執務机に置かれていただけの写真に、悠華は神田家との大きな溝を感じざるを得なかった。

彼女に背を向けながらクラークが漸く動きを見せる。


「久しぶりだな悠華。二年ぶりというべきか」

「あ、あの、こちらこそお久しぶりございます。お父さ……いえ現当主様」


 突然声をかけられたのか、或いは気後れしたのか少し焦った様子で返答する。父親の機嫌を窺うために彼女は下手に対応していた。


「それで今日はなぜ神田家に戻ってきた」

「なぜって……それは当主様の方から呼び出しがあったからでしょう。」

「ふむ……ああ、そうだ。そうだったな、私が悠華を呼んだのだったな。いや、すまない」


 申し訳程度にクラークが謝罪の意を述べる。いかにも記憶に留めていないようなフリではあるが、実際は悠華をたしなめる為の奇行だ。その行為に彼女は平常を保つのがやっとだったが忍耐を続ける。


「悠華。二年前に言いつけておいた約束を忘れてはいないな?」

「……はい」

「そうか、ならば口に出して私に聞かせなさい」

「……私、神田悠華は中学・高校を卒業後、進学・就職に関わらず神田家との縁を断つ。その際に与えられる資金五百万を以って独り立ちをする。それ以後、神田家は関知せず一切の補助を受けないものとする。これでいいでしょうか」

「うむ、よく覚えていたな。その約束はこれまでも、これ以降も変更する予定はない。わかったな」

 悠樹が言っていた「いずれ家を出る運命」とはまさにこれの事である。やんわりとした表現で「独り立ち」とは言っているが、事実上の勘当と言ってよいだろう。それが悠華の未来に必ず訪れる運命だ。

 資金五百万を以っての独り立ち。この五百万という金額は一人が、それも年若い少女が持つにはかなりの大金である。しかし勘当された以後の人生において、一人で生きていく為の資金としては決して高くはない。だが神田家当主としては「勘当できるものなら一千万をくれても安い」と考えているのだろう。

 だが悠華は自身がいずれ体感する未来よりも気になることがあった。


「用件を聞く前に当主様に言いたいことがあります」

「何かな。お前の話など聞きたくもないが」

「恋華のことです。ヨーロッパの学校に進学していた恋華が行方不明になった話は事実なのですか」


 それは黒の魔法少女との戦いの後に奏美が本郷刑事から聞いた話だった。語学の勉強でヨーロッパへと留学した恋華が当地で失踪したというのだ。奏美から聞いた限りでは、事件は昼間に起こり、その場から消えたかのようにいなくなったという。当地の警察がこれに対処するものの、依然として事件は困難の途を辿るばかりと聞いている。

 悠華が数歩踏み、『父』との距離を詰める。それでも当主は顔を向けることはなかった。


「なぜそんなことを伏せておられたのですか。私に報告しないのは兎も角、この事件は神田家にとって看過できない事態です。邦人女性の失踪事件として大々的な協力要請を――」

「あー……その、なんだ。恋華に関しては当地の警察に任せている。お前が慌てなくともいずれ解決はするさ。我々は結果を待つのみだ」

「は……?」


 妥当、というよりは適当。まるで他人事のような態度に悠華は怒りを抑えられず、両腕を振って執務机を叩いた。


「何ですかその態度は!! 恋華は私と違って正真正銘、当主様の実子でしょう!?」


 二年前、悠華が自分の子ではないと知ったクラークは慌てて悠樹と恋華にDNA鑑定を行ったことがある。結果は二人とも合致しており、実子だということが科学的に証明されている。それからというものの、彼は悠華を蚊帳かやの外にして双子の兄妹を溺愛していた。

その様子を彼女は遠目で見ていたのを覚えている。例え、自分が愛されなくとも二人が父親に愛されているならそれでいいと願っていた。だがクラークの適当すぎる判断はそれを脆くも崩したのだった。

恋華も悠樹と同様で内向的な性格はそのままに、しとやかな令嬢として育った経緯がある。世間知らずな面もあり些か頼りなかった。そのため姉として彼女をフォローすることが何度もあった。そんな彼女が失踪したというのならば、悠華はいても立ってもいられない思いで緊迫していた。

だが――。


「確かに恋華は私の娘だ……が、どうも私には女が信じられないのでね。まぁ、何とかなるだろう。時間が全てを解決してくれるさ」

「っ……!」


 適当を通り越して無責任ともいえる発言に悠華は怒りで拳を握り締める。しかし殴りかかれば事態を悪化するだけで何も解決しない。悠樹の時と同じく徐々に怒気を鎮めようとする。


「そういえば用件の方がまだだったな」


 恋華の行方不明が重大でないとばかりに流し、主題に話を移す。その淡々とした移行に悠華は呆れて反論も出来なかった。


「今度の休日にジロン・トルドー社の社長が日本に来訪する。フランス産ワインを海外に輸出・販売している会社でね、この度日本に流通ルートを広げたのだよ。それで業務提携の傍ら、親交も兼ねて神田邸でもてなしをしようと考えているのだ」

「それで……私に何をしろと……?」

「そこの社長、シゼル・エグザルホプロス氏はまだ年若い女社長でね、まだ日本には訪れたことがないそうだ。そこで悠華の役目だ。社長と親交を深めて懇意になってもらいたい。そうすれば後々何かと有利だ」


 娘の行方よりも仕事を優先する非情ぶりに最早口が開かない。

二年という期間が彼の中で生じた疑心を助長させたのだろうか。彼を内包する闇を覗きたかったが、それを行える手段はどこにもなかった。


「悠樹じゃダメなんですか? 次期当主ですし、その方がいいのでは」

「あれはまだ早い。それにフランス語が流暢でない。お前なら勉強しているし、同じ女性なら何かと同感しやすいだろう」


 都合の良い事を言っているが要は体よく利用する算段なのだろう。


「そういうわけだ。悠華、やってくれるな?」

「……拒否する権利はないんでしょう?」

「勿論だ」


 ここで断ったところで何かが変わるわけでもない。神田家との確執がなくなるわけでもなく、妹の恋華の行方が判明するわけでもない。

 ならばここは当主の意向に従って穏便に済ませるしかない。

 嫌々とした態度を取りながらも、屈したように悠華は「はい」と肯定の意を示した。


「それでいい。では今度の休日に神田邸に来るがいい。用件はこれで終わりだ、さっさと細江中学の寮に戻れ」


 話が終わったと同時にクラークは無視するように沈黙を決め込んだ。端的に「寮へ戻れ」とは言ったものの、彼の背中からは「さっさと出て行け」という念が溢れているように見えた。


(お父様……)


 一度でも振り向いて娘の顔を見て欲しい。

 そんな慕情を寄せるも、相変わらず当主は背を向けたままで振り向いてはくれない。例え何時間待っていようが、その光景は変わることがないだろう。


「……わかりました」


 失意の念に駆られ、悠華は踵を返して執務室から静かに出て行くのであった。


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