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GENE SERIES 03 魔法少女たちの輪舞曲  作者: クリスタルナオト
魔法少女大戦Ⅰ 黒の来訪者
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白の魔法少女VS黒の魔法少女 PART17 終結

 結界魔法〈虚空メタフィールドシャイン〉は温もりを感じさせる結界であった。それこそ春の独特な雰囲気を思わせ、季節特有の陽気さと穏やかさを描いた絵画の風景にも似ていた。


(心地よい感触・・・・・・なるほどアイツらが使用するのもわかるわ)


 結界魔法は発動者である魔法少女の魔力を最大限に高め、相手に絶大な負荷を与える。かつて悠華はこれを何の知識もなく使用された結果、惨敗へと追い込まれてしまっている。結果としては事なきを得ているが、もしも過剰に拷問を受けていればうに生を終えていた。

 

 今では機転や仲間の支援もあって相手が多人数にも関わらず優勢である。虹色に輝くプリズマ光の海を滑空する。羽は互いに反射し合う光を吸収し、活気を得た様はさながら別の生命体だ。

 

 悠華の腕中には黒の魔法少女が三人とも収まっている。暗黒物質をエネルギー源とする彼女らには眩いばかりの光は弱点である。肌がジリジリと焼けているのが目に見える。


「クソォ! テメェだけは・・・テメェだけは刺し違えてもブッ殺し・・・」

「そうはさせないわ! リリウム・エメリウムショット!」


 大裂シザーズ銀鋏シザーズの刃先を突き立てようとするレイヴンだったが、顔面に悠華のデコから発射された魔法が直撃し悶えた。その拍子に鋏が手元からスルリと落ち、光を浴びて消滅していった。


(これで〈虚空メタフィールド〉から出ない限り鋏は使えないなのです!)


 悠華の髪に張り付くフィーの言葉がテレパシーで脳裏に響く。妖精の言う通り、レイヴンは白の結界魔法の効力で鋏を取り出す事が出来ない。大きな魔力を必要とする得物は制限されるのだ。

 

 光のエネルギーを吸収した悠華の腕力は凄まじく、身体強化が為されているレイヴン達ですら苦悶する。彼女の細やかな腕には強烈な程の筋力がみなぎっているのだ。


 次第に悠華は高度を落とし始め、地上へと下降する。地上は〈虚空メタフィールドダーク〉の様なジメジメとした土壌ではなく、鉱石がところどころ突き出ている硬質の土壌であった。乳白色を帯びた鉱石の一つ一つが光を反射し、辺り一帯を明るく彩っていた。


「綺麗・・・・・・これが白の結界魔法・・・」


 思わずそのような言葉が漏れた。

 地上へと降りる手前、悠華は黒の魔法少女たちを話した。5メートルからの落下は流石に魔法少女には然程ダメージを受けるほどではないが、「ぷげらっぽいっ!!」と拍子抜けな声が漏れた。間違いなくポイズン・スワンプだ。


「・・・・・・リリウム・セラフィー。貴女が手を出した以上、容赦しない」

「私もよ。この場で貴方達を倒してこの地から追い払うわ。二度とセレネのジュエルハートを奪おうなんて企まないようにね」

「・・・・・・貴女はまだ知らない。この地が如何に特殊であるかを」

「え・・・?」

「――〈レオパルドラン〉」


 悠華が問う前にシュヴァルツェア・レオパルドが駆けた。四つん這いの体勢から駆ける疾走は目で捉えきれず、瞬時に姿が消えた。

 だが、それはすぐに終わった。光の放射による絶え間ない肉体強化の支援を受けている悠華が、時速300kmにもなる彼女の疾走を視界に捉えたのだ。目前まで迫っていたレオパルドに魔力を凝縮させたリリウム・ウォームをぶつける。その瞬間、胸で火花が飛び散り、レオパルドは後方に吹き飛んだ。


「くっ・・・はぁ・・・さすがに敵の結界魔法の範囲ではダメ・・・・・・か・・・」

「レオ・・・・・・・・・このー邪魔なだけの白の魔法少女がー!」


太刀打ちできず無残に倒れる仲間を見てポイズン・スワンプの怒号が響く。

即座に得意の詠唱魔法で毒を発射するものの、三人の中で魔力が少ない彼女の魔法では打ち勝てないのは目に見えていた。それどころか毒は光を浴びて浄化し、わずかな煙を上げて消滅した。


「リリウム・メテオール!」

「きゃぁぁぁ!!」


 左わき腹で両手を固めて薙ぎ払うかのように顕現した光の刃が、凄まじい速度でポイズン・スワンプに命中し炸裂する。リリウム・ウォームより少ない魔力で発動された構築魔法ではあるが、素早く出されるソレはスワンプには到底見切れなかった。

 シュヴァルツェア・レオパルドもポイズン・スワンプも悪と見做すにはとても難しい。二人とも悲しい過去を負ってしまったが故に争っているのだ。そうでなければこのような形で邂逅を果たすこともない。

 

 とはいえ、咎人を野放しにするわけにはいかない。〈白の魔女セレネ〉のジュエルハートを奪取する目的の経過で誰かを殺めた罪があるのだ。それも警察署の刑事や水夏といった魔法には何の関係もない者達を。

 相対する属性の結界魔法による弱体化、負傷による消耗と疲弊。不利な状況に陥りながらレイヴン・シェイドは尚、リリウム・セラフィーの命を刈り取らんとする。


「まだだ! まだ終わらねぇ!! テメェの首切り落とすまでアタシぁまだ立ち上がるぜ! ヘヘ、ヘヘ、へへへ! 残念だな! どうだビビったか!? 震えて失禁するか! ションベン漏らしてみろよ!」

「レイヴン・シェイド・・・・・・貴女と会ったのも何かの縁かもしれない。でも叶うならばこんな形で会わなければよかった。アーヴェインが原因であるけど、今の貴女を私は許さない。決着をつけるわ!」

「ほざけぇ! オマエを必ずグチャグチャしてやっからな! 最後に立つのはアタシなんだよ!」


 ブスブスと肌が焼けて臭気を漂わせる中、レイヴンがナイフで円を描く。切り取られたかのように具現する円は次第に紫を帯びた暗闇へと変化し、そこから止め処のない怨嗟が漏れ始める。そこにレイヴン・シェイドの魔力が集中する。


「相手はあの構築魔法で悠華さんを攻撃するつもりなのです!! アレを喰らう前に悠華さん、黒の魔法少女を倒しましょう!」

「わかっているわ! レイヴン・・・・・・憎いでしょうけど、私は死ぬワケにはいかない・・・・・・私を待ってくれる人の為に!」


 悠華の両腕が一旦脇を固め、前に突き出して交差する。その瞬間、彼女の体内を流れる魔力回路が輝き、同時に乳白色の鉱石から一筋の光が照射される。魔力が供給された直後、両腕を開いて紋様が一瞬だけ描かれる。その間にもレイヴンの手中に負のエネルギーが蓄積される。

 

 ――これで勝負が決まる。


 お互いに勝利を確信した時、一気にエネルギーを放出した。


「〈鬱積スカーする深奥アンドペイン〉!!」

「リリウム・グリット光線!!」


 光と闇の魔力がぶつかり合い、相対する物質を破壊しようとせめぎ合う。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「はあああああああああああああああああああああああああ!!!」


 互いに相手のエネルギーを押し退けようと放出するエネルギーの量を倍増させる。時には圧倒し、時には押される。魔力が枯渇するまで放射をやめない気だ。

だが状況は既に悠華が有利となっていた。L字型の組手の状態で放つ光線が徐々に暗黒物質の光線を押し退ける。ついにはレイヴンの目前まで迫った。


「なぁ!? ぐわあああああああああああああああああ!!」


 黒の構築魔法が光によって浄化され、光線をまともに浴びるレイヴン。華奢な体躯が吹き飛ばされて鉱石群に叩きつけられる形となる。呻きながらもまだ戦おうとするレイヴンであったが、顔を伏せてそのまま意識を失った。

 レイヴン・シェイド、シュヴァルツェア・レオパルド、ポイズン・スワンプ。

 戦闘不能に陥った三人の肉体が徐々に消えたかと思うと、黒色の気体となって何処かへと霧散していった。


「レイヴンたちの体が・・・・・・!?」

「〈ブラック眷属サヴィター〉が闇となって逃亡したようなのです。魔力の反応も・・・・・・感じられないですね。恐らくマスターがいる本拠地へ戻ったのでしょう」


 〈黒の魔女〉エレクトラ・ヘクセ・リュドベック。それが黒の魔法少女を統括する魔女の名であるらしい。フィーが魔力の反応を感じないと言うということは、関門市から姿を消したのだろうか。

 いずれにせよ黒の勢力がこのまま黙っているはずがない。レイヴン達の目的であったセレネのジュエルハートは奪取されていないのだから。今度は確実な戦力を揃えて奪取を目論む可能性もある。


「フィー、あの子達は・・・・・・レイヴン達はまたやって来ると思う?」

「可能性大なのです。マスターの話によれば〈黒の魔女〉はネチネチしていてしつこい陰気女だと聞いていますから。きっとキーッ!とハンカチを噛んで悔しがっている事でしょうね」

「陰気なのはセレネも変わらないような・・・・・・」

「マスターは良い人なのですよ」

「・・・・・・・」


 似た者同士なのだろうか。フィーの言葉だけで人格や度量を確認する事をやめた。彼女らが再度戦うというのならば〈黒の魔女〉と出くわす機会もあるだろう。もっとも、それは事態が最悪になった時だろうが。

 〈虚空メタフィールドシャイン〉の光景を眺め、緊張で強張っていた筋力を緩める。そしてホッと息を吐いてから口元を綻ばせた。


「終わったのね・・・・・・」

「悠華さん、そろそろ戻りましょうか。奏美さんやテレジアちゃんがいる場所、お友達がいる場所、悠華さんがいるべき場所に帰りましょう」

「そうね、戻ろうか」


 魔法少女から思春期の少女へと戻った悠華は、フィーの魔法で本来あるべき「場所」へと帰ることにした。光となって〈虚空メタフィールド〉から出ていく直前、彼女はきらびやかに光る鉱石の数々を瞼の裏に焼き付けた。


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