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隠密飛行

 昭和十九年十月。

 その日は重苦しい灰色の雲が空を覆っていた。

 雨こそ降らなかったが、秋にしては湿気が高く、じとっとした空気が体にまとわりつく。今回の戦闘は巡洋艦など艦隊が相手である。戦闘機の数、兵力が圧倒的に劣り、不利な状況は誰にでも分かった。それでも、沖津は動じず、ただただ沈黙を守っていた。

 沖津の率いる第二○一航空隊第七中隊は先陣を切ってレイテ沖にいるとされるアメリカ軍に攻撃をしかける役目を負っている。その中にはもちろん直属の部下である強羅俊三軍曹と浅葱忍一等兵も含まれていた。

 十数機の戦闘機が風を裂いて空母の滑走路から飛び立ち、目的地へと走る。

 十分、そのまま飛ぶ。皆、無言で。

 沈黙を破ったのは強羅だった。

「敵艦隊発見」

 その台詞を聞くと、沖津は総員に戦闘準備を命じた。

 前方数キロ先に敵艦隊の一団が見える。その驚異的な視力は強羅の武器のひとつだった。

 すぐに戦闘が始まる。雲間に隠れて、その様子を伺う戦闘機があった。その戦闘機は敵機に一切気付かれることなく、はるか上空から観察に徹していた。



 出撃前、源田大佐から三人は戦闘機を与えられた。

 沖津と浅葱には『桜花おうか』、強羅には『鬼桜きざくら』。いずれもゼロ戦の改造機体である。

 三人はこれらのテストも兼ねて戦闘を行う。

 『桜花』は灰色の機体とゼロ戦よりも厚い装甲を持ち、機動力に長ける。両翼に大日本帝国の日の丸がペイントされているのが特徴だ。これら以外はゼロ戦と同様のスペックである。

 『鬼桜』は黒色の機体で、攻撃力に特化した性能を持つ。

 初期型ゼロ戦を改良した戦闘機で、一発の威力が大きい二十ミリ機関銃を両翼に一機ずつ搭載し、当時にしては豊富な二百発という弾を装填することが出来た。また、爆弾も大型で強力なものを装備できる。半面、スピードはゼロ戦に劣る。『桜花』と同じく両翼には赤く日の丸がペイントされている。


 

 彼は眼下に広がる、自軍の空母が轟沈する様を見て、舌打ちした。

「だらしがないな」

 日本軍が去った後、たった一機だけ、空に戦闘機が浮かんでいる。

 黒と赤だけでドレスアップされた機体。全幅は十二メートル、全高は三メートル弱ある。

 右翼にはこれまで撃墜した戦闘機の数だけ、星の印が鮮血のような赤色でつけられていた。それは軽く三十を超える。

 この戦闘機は『グラトニーファング』と呼ばれる、アメリカ海軍航空隊の秘蔵である。

 グラマン社の『ヘルキャット』や『ワイルドキャット』の上位互換である。究極の戦闘機と名高く、乗りこなせるパイロットが一人しかいない。

 彼の名前はジェームズ=オルブライト少佐といった。

「しかしまあ、艦に体当たり、いや自爆して沈めようとは思い切ったことをしたもんだな」

 彼は初めて神風特攻隊を見たのである。日本にはもう資源が残されておらず、長期戦に耐えられないことは薄々感づいていた。それでも、彼はこの方法をとる日本軍が理解できないと思った。

「それに収穫はあった」

 ゼロ戦の集団の中に混ざっていた珍しい型の戦闘機に彼は興味を持ったのである。

「次の獲物はあいつらになるのか」

 こんなに血が滾るのは久しぶりだ。極東を攻める上で攻略の障害になりそうなものがあるとすれば、それは彼らになるだろうと考えた。

こんにちは、そしてあけましておめでとうございます。

大晦日と元旦も仕事のJokerです。家で、ですけどね。


二十代も後半になると正月という感じがしません。あっという間に過ぎていきます。ああ、あっという間に三十路になるんだろうな。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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