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別れの前に

 その夜、強羅の他、十一名の送別会が開かれた。参加者は三十名ほどで、所属部隊の長や隊員たちに限られた。

 普段飲めない高い酒を開け、中佐が音頭をとる。皆はそれにならって酒を飲み、つとめて明るく振舞っていた。

 沖津はそんな雰囲気になじめなかった。

 仲間が死ぬのがそんなに嬉しいのか、と思っていた。彼にしては珍しく仏頂面でもくもくと食物を口に運んだ。

 酒を一口飲んだ後、外に出て、星空を見上げる。雨は夕方に上がったようだ。

 滑走路まで歩く。雲はところどころに残っている。

 格納庫に入る。そこには整備し終えた『鬼桜』があった。その隣には沖津と浅葱の愛機である『桜花』が羽を休めている。

 短いようで長い時間を共に過ごした者が、いなくなる。どんな戦闘でも先陣を切って飛び出し、敵の編隊を切り崩してきた歴戦の勇士が消える。

 国のためとはいえ、やるせない気持ちでいっぱいだ。

「何してるんですか、少尉殿?」

 浅葱が格納庫の入り口にいた。息を切らしている。

「こいつに別れをしていたところだよ」

 ぽん、と『鬼桜』の翼を叩く。

「そんなに気遣わなくてもいいんですぜ?」

 主も来たようだ。

「さっきはすんませんでした。ちょっと気が立っていまして。……もう、踏ん切りはつきましたから」

 申し訳なさそうに頭を下げた強羅を見ると、胸が痛む。声に力がないことから考えても、どう見ても心の整理など出来ていない。

「嘘だな」

「嘘です」

 いきなり、命を捨ててくれと言われて納得できる人間など、そういるはずがない。

「強羅、勝負をしようか」

 沖津は拳銃を抜いた。

「ちょっと基地の裏まで来てくれ」

「な、何するんですか? お二人とも」

「私なりの手向けさ」



 月は青白い光で暗い空を照らしている。空に浮かぶ星たちと共に、夜空が寂しくならないように、一生懸命輝いているようだ。その姿は無理やりにでも落ち着きを保っている強羅に重なって見えた。

「この辺りでいいだろう」

 沖津は大きな木の一番低い位置にある枝の下に空き缶を二つ吊るした。

「強羅、射撃で勝負だ。あの缶の真ん中を射抜いた方の勝ちだ。勝負は一度きり。私が勝ったら、『鬼桜』をもらおう。その代わり、負けたら……私の家宝の刀をあげよう」

「いいでしょう」

「言っておくが、手加減などするつもりはないぞ。私に勝ちたければ本気で来い」

 距離は二十メートルほど離れている。

 緩やかな風が吹いた。

「準備はいいか?」

「いつでも」

 二人は銃を構える。

 乾いた音が二つ轟いた。

こんばんは、Jokerです。

最近地震続きで万が一の場合に備えています。


富士山が爆発、なんてことにならなければいいんですが。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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